思い付きで韓国を彷徨う

■はじめに

 韓国へは毎年のように訪れているため「そろそろ鐡ネタも切れる頃か」と思っているが、探すと意外にまだ残されているものである。今回の目的は、以下である(海外旅行にありがちなマイナートラブルにより、すべて実行はできなかったが。詳細は後述)。

・鉄道博物館再訪 *新たな展示物が増えたため
・韓国鉄道技術研究院(付近)訪問
・韓国鉄道大学校(付近)訪問
・Sトレイン乗車
・Gトレイン乗車
・オリニ大公園にある車両訪問
・果川科学館にある車両訪問
・鉄道車両を改造した店舗訪問
・仁川空港リニア乗車

 三連休であるが、半年以上前に航空券は押さえてあるため、3万円以下である。


@仁川空港にて

■2016.10.8
 羽田発8時50分の便は機体整備で30分以上出発が遅れたが、急ぐ旅ではないので問題はない。金浦空港到着後は、明日の切符を発券したり両替をしたりするために、まずソウル駅へと地下鉄で移動した(註:発券は出発駅以外でも可能です)。
 予約済みの紙を係員に見せると、なんと最初のSトレインが「ストライキ」により運休とのこと。仕方ないが、代替としてムグンファ号を買い直した。KTXにすれば、高速用の路盤完成後まだ乗車していない五松〜益山間に乗ることができるが、そうしたところで益山以降が尻切れトンボになってしまうため、KTX用の高速線は後日まとめて乗ることにした。

@代替を含む3枚

 それから地下鉄1号線(国鉄の路盤を走るため地下部分は少ない)に乗り、鉄道博物館の最寄駅である義王へと向かった(前回も思ったが、近郊列車で1時間以上も乗るのは精神的にも遠い)。 
 改札を出て外に出ようとしたが、駅舎内に義王の鉄道産業を紹介したブースのようなものがあった。前回は見た記憶がないから、まだ出来て数年であると思う。

@さっと見る

 駅を出て10分以上歩いて南下し、鉄道博物館へと向かった。前回は恐らく平日であったためかなり閑散としていた記憶があるが、今日は家族連れなどでかなり賑わっている。
 入場料を支払おうとすると、500ウォンから2,000ウォンに値上がりしていた。4倍と思うと高いと思ってしまうが、200円と思えばまだまだ安いと言える。

@久々に来ました

 わざわざここに再訪したのは、大統領専用車が展示されるようになったからである。お目当ての列車は、入ってすぐのところに展示されていた。案内文によれば、向かって左側が大統領専用車であり、1969年の「日本車輛」製とのこと。
(なお、前回訪問時はこの場所に本物とは程遠いハリボテ(よく言えばモックアップ)のKTXが展示されており、いろいろな意味で驚かされたのであった)

@まともな展示になりました(その分値上がり?)

 屋内および屋外にある展示物をあれこれ見てから、続いては博物館の南側にある韓国鉄道技術研究院(KRRI)へ行ってみた。敷地の北西部には引込線があり、その横には古い車両が係留されている。線路脇には車庫のような施設があるため、何か変わったものでも置いてないかと期待していたが、土曜ということもあってか空っぽであった。

@引込線付近

 なおKRRIの北側、鉄道博物館の東側は学校(韓国鉄道大学校義王キャンパス)になっているが、その南側に沿うようにして路盤がある。架線まであるしっかりしたものであり、これは試験運行か何かに使用されているのかもしれない(速く走ることはできないが)。

@本格的設備

 その後は1号線で少しだけ南下して水原をぶらぶらと歩き、ソウル市内に予約しているホテルに向かうため延々と近郊列車に乗り続けて戻った。
(ちなみに、KRRIの敷地のさらに南側にTTXという試作車両が係留されているが、道がわからなかったため先ほどは辿り着くことができなかった。仕方ないので、移動中の車内からその様子を写真に収めておいた)

@振り子式

 ソウルに泊まる際、いつもは1,500円程度の格安宿であったが、いい加減大人であるので、今回は6,000円もする普通のホテルである(1〜2万のホテルに泊まっている人からは「まだまだ子供」と言われてしまうだろうが)。
 さて、夕飯である。昨今の韓国ではチキン戦争が激しいらしいため、今回はそのうちの一つに行ってみることにしている。地下鉄で東大門まで移動し、目当ての店で持ち帰り用のチキンを注文した。「30分かかる」ということであるが、そんな時間は近場の屋台や露店、東大門などを見ながら散策すれば、すぐである。

@ビールと一緒に

■2016.10.9
 6時にホテルを出て地下鉄で龍山へと向かった。6時55分発の麗水エキスポ行のムグンファ号は、電気機関車を先頭に、客車は7両(うち1両は売店)であった。ムグンファ号の座席番号のパターンはいつになっても覚えられないが、与えられていた63番は幸運にも窓側であった。乗り込んでみると、なんと暖房が効いているではないか(確かに少し冷え込んではいるが…)。

@まずはこれから

 あれこれ観光用設備があるSトレインに乗れなかったのは仕方ないが、ムグンファ号でのんびり移動するのも悪くないであろう。
 定刻に出発し、8分後の永登浦で乗客が増え、その後に停車した水原でほぼ満員となった。
 8時57分に西太田に停車したが、降りた分だけ乗ってくるので満員であることには変わりがない。同駅を出発するとKTXの路盤が見えるところがあるが、あれに乗るのは後日である。

@おあずけ

 前回訪問時は駅近くのモーテルに宿泊した益山には、10時00分に到着した。同駅出発後は、高速走行が可能な高架をしばらく走り続けて行った。
 「汽車村」がある谷城を過ぎると、旧路盤がちらほらと残っているのが見えたりした。

@このように

 さて、本来はこのまま終点の麗水エキスポまで行くことになっているが、それはSトレインの終点だからである。その駅自体は「麗水駅」時代に訪問済みであり、付近はエキスポ関連の施設が残っている以外は、特にこれといって何もないはずである。そこであれこれ考えて、手前の順天で降りてしまうことにした。
 「ぶらり途中下車」の実践版であり、国内ではたまにすることがあるが、今回は韓国でやってみることにした。資料は何もないが、なんとかなるであろう。
 11時41分、順天で下車した。大きな町であるため、昼食なども困らなさそうである。

@晴れてもいますし

 まずは駅を出て左手に行ってみると市場を発見したので、お得意の「市場散策」をした。さて、続いては昼食探しである。韓国風の店はちらほらあるが、これといった決め手はない。そこで駅近くまで戻っていくと、いかにも韓国ローカル風のファストフードのチェーン店があったので、それに入ってみることにした。
 しかしハードルは、「外に掲示してあるメニューに英語がない」ということである。ハングルを一文字ずつ読み、「スパイシ」「プルコギ」「セトゥ(セット)」が読めた(理解できた)のでそれにすることにした。

@「何が食べたいか」ではなく「何が読めるか」優先

 美味しく頂いてから駅に戻り掲示板を見てみると、12時49分発の麗水エキスポ行のITXセマウル号は運休であった(ストによる間引き運転であろうか)。ということで、さらにあと1時間半ほどこの町にいる必要がある。
 駅にある地図を見て、先ほどの市場とは反対側へ適当に歩き、大きな川を渡って別の市場を見つけて覗いたりした。それから北上して発見したのは川にかかる鉄道橋であり、一瞬「廃線か?」と思ったがそんなことはなく、これは現役の慶全線である。非電化であり橋脚自体も古いため上記のように思ってしまったが、すぐ脇にある踏切は現役そのものである。

@1日に数本しか走りませんが

 川に沿ってある公園を歩き、駅へと戻った。
 次に乗るべきは、14時22分発のKTX山川である。麗水エキスポ行がなかった時点で、これより1本前のKTXに変更することも考えたが、13時台のKTXは旧型の車両である。そうなると半分は後ろ向きに座ることとなり、また座席と窓の相性も良くない(ほとんど壁の席がある)ため、せっかく窓側を押さえているこの列車まで散策をして時間を潰していたのである。

@KTX山川

 指定された席は往路と同じ側であったが、反対側だと西日が当たりブラインドを閉められてしまうため、これでよかったとすべきである(KTXは新旧を問わずブラインドが2列分繋がっているため、外を見たくても前後の窓側の客がブラインドを降ろしてしまうと見えなくなってしまうのである)。
 同じ車窓の逆回しであるのと、歩き疲れたこともあってしばしウトウトとした。途中からは通路まで立席の客で埋まったが、もしかしたらストによる間引きが影響しているのかもしれない。
 15時36分、益山に到着した。前回訪問時は駅舎工事中であったが、それが立派に完成している。

@新駅舎

 40分ほど時間があるため、駅の北東側にある商店街や市場をぶらぶらしてから戻ってきた。16時過ぎにホームへ降りてみると、Gトレイン(西海金光列車)はすでに入線していた(これすら運休だと、今回何しに来たのかが不明になってしまう)。
 専用塗装のディーゼル機関車を先頭に、普通車2両、売店+足湯1両、普通車1両、個室(オンドル)1両という編成である。

@黄金色

 Gトレインの紹介は各所で詳しいものがあるため割愛するが、まだ出発まで時間があり乗客がほとんどいなかったため写真を撮っておいたので、それを紹介したい。
 オンドル:団体用の個室である。宴会したら面白そう。
 足湯:別料金であるが、夕日を眺めながら入ることもできる。

@簡単に紹介

 定刻の16時20分、列車は出発した。乗客はかなり少なく、乗車率は15%程度と思えるくらいである。
 出発してから8分くらいした頃、右側に旧セマウル号の車両が見え、その先に旧い駅舎と人のブロンズ像のようなものが見え始めた(当然のように通過)。何やら旧駅舎を観光用に整えたようであり、これが何なのかは帰国後に調べなければならない。
(調べて見ると、イムピという駅であり、駅舎は文化遺産に指定されているとのこと。解説にある英文が本当かどうかは不明であるが http://yonamja.tistory.com/183 )

@慌てて撮ったので中途半端な写真

 駅に止まるごとに、乗客も少しずつ増えてくる。観光列車というよりは通常の足として利用している人も多いようであり、左側(西側)に座っている多くの乗客はカーテンを完全に閉めてしまっている。
 長項線は以前に1回だけ乗ったことがあるが、その頃には記憶にないような高速で走り続けている。KTXでも走ることができそうな高架やトンネルを、かなりのスピードで走り続けて行った。

@黄金列車が黄金の稲穂の上を走る

 しかし17時を過ぎた頃になると、路盤は左右に曲がるようになり車輪の音も「ガタンゴトン」と言うようになってきた。韓国の在来線はかなりの割合で高速化が進んでいるため、ガタンゴトンが聞ける路線もかなり少なくなったと思う。
 高速走行とガタンゴトンを交互に続け、そのうちに左手に夕日が落ちて行った。18時過ぎから暗くなり、京釜線に合流してからは灯火の中を快走し続けて、定刻より11分遅れの20時04分に龍山に到着した。

@夕日が落ちた後

 地下鉄で移動してホテルに戻り、さて、「今晩は別のチキンで」と言いたいところであるが、実は昨日のチキンが半分弱くらい残っている(1羽単位でしか買えないため。なお、残りは冷蔵庫に置いてある)。というわけで、今日のツマミはそれをレンジでチンしたものであり、そして最後の締めは昼に続いてプルコギバーガーである。前回のインド(マハラジャマック)と続いて、マクドナルドシリーズでもある。

@ダブルプルコギバーガーのセット(当然ビールも)

■2016.10.10
 昨晩の列車内で、日が暮れてからぼんやりと「明日は三連休最後だけど、韓国は普通に月曜だから朝はラッシュで混むだろうな。…月曜!」と思い付き、ホテルに戻ってからネットで調べてみると、果川科学館はやはり月曜休館日であった(月曜が休みの施設は多い)。うっかりミスだが、仮に土曜に果川科学館を訪問したのでは鉄道博物館に行っている時間がないため、いずれにせよどちらかは不可能だったのである。まぁ、また次回韓国に来る口実が出来たとすればよい。
 7時過ぎにホテルを出て、地下鉄5号線に乗り峨嵯山で下車した。目指すはオリニ大公園で展示されているSLと客車である。
 地下鉄出口から5分ほどあるいてゲートをくぐると、すぐ右手にお目当てのものは展示されていた。

@今日の収穫

 説明版はハングルオンリーでありすべての解読はできないが、「この機関車は」「日本」などいくつかの言葉は読み取ることができた。
 本来ならすぐに次に移動するはずであったが、上位のように旅程に余裕ができてしまったため、この広大な公園を散策することにした。
 無料の動物園もあるが、まだ朝8時前ということで「スタンバイ中」であった。塒に帰る必要がない鳥類だけは出っ放しであったので、その付近を見学したりする。

@鳥を狙っている?

 広い敷地を通り抜け、地下鉄のオリニ大公園駅から乗車、途中で乗り換えて、4号線に乗り込んだ。
 1時間ほど経過し、うんざりし始めた頃やっと地上に出た(衿井駅の手前)。そこから先は、地上に出たこともあってなかなかの速度で快走していった。

@KTXとも交差する

 10時50分頃、蘇莱浦口に到着した。乗り換え時間を含めて2時間くらい経過したが、料金はたったの2,150ウォン(約210円)という驚き価格である。
 さて、お目当ての店舗(旧い鉄道車両を再利用した店舗)は残念ながら撤収されており、跡形もなかった。気晴らし(?)に、近くのスーパーで自分用のお土産(袋入りのインスタント麺)を大量に買った。
 地下鉄と空港連絡鉄道を乗り継ぎ、仁川空港に到着したのは12時45分頃であった。リニアは15分おきに出発しているので、次は13時00分発である。乗り場は空港連絡鉄道のすぐ上であるので、迷うことはない。

@入線してきた

 今は無料開放中であり、2両編成の小さな車体に10人くらいの乗客で定刻に出発した。
 リニアといっても、その能力が必要ないくらいの低速走行である。レール(?)部分の凹凸がないためコロッと落ちてしまいそうであるが、その辺りの最低限の技術は信用するしかない。
 約12分で、終点の龍遊に到着した。すぐに折り返してもつまらないので、一応下車して付近を歩いてみる。空港連絡鉄道の車庫があるが、こういう時に限って空っぽであった。
 することもなく、出発するリニアを撮影してみる。

@音は静か

 ということで、今回のミッションはすべて終了である。積み残しがいくつか出たが、それは次回のお楽しみである。

 

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