兵どもが夢の跡

■はじめに
 今回の三連休の旅行先は、韓国である。いつもならば特に思うところもないが、つい5日前まで北朝鮮にいたことを思うと、少し不思議な感じがする。
 2週連続で朝鮮半島となったのは偶然であり、実際には今回の韓国旅行の方を先に決めていた。特典航空券の予約開始日となる昨年の秋に航空券を押さえていたものであり、その後今年の春になって北朝鮮旅行を決めたため、このような結果になってしまった次第である。
 三連休ではあるが、往路は昼の便、復路は朝の便ということで、到着日の夕方と2日目しか暇はない。韓国の鐡ネタも尽きた感じがするがまだまだ探せばあるため、あれこれ検討し、以下のような旅程とした。今回の初鐡ネタは、花郎台にある鉄道公園と、昨年暮れに開通したKTX京江線(KTX江陵線)である。

【旅程】
初日:12時05分の便で羽田から金浦へ。地下鉄で花郎台へ移動し、鉄道公園にある車両(広電の市電を含む)を見学(ソウル泊)。
2日目:在来線で半日かけて江陵へ移動。2時間ほど滞在してから、オリンピックに合わせて開通したKTX京江線でソウルへ戻る(ソウル泊)。
3日目:9時40分の便で仁川から成田へ。

@花郎台駅跡にて

■2018.9.22
 14時過ぎに金浦空港へ到着し、イミグレーションは1秒も待たずに通過した。空港鉄道と地下鉄を乗り継ぎ、1時間20分くらいかけて花郎台駅に到着した。当たり前だが、北朝鮮と比較すると、こちらのインフラはもう大先進国のようである。
 4番出口から外に出ると目の前に廃線跡があり、鉄道公園まで道案内をしてもらえる。

@これに沿って歩けばよい

 線路沿いにしばらく歩き続けて大きな交差点を過ぎると、鉄道公園である。まずはナローゲージのSLと客車であり、これは子供(オリニ)大公園にあったものを昨年春に移動させたものであるという。私は2年前にわざわざこれらを撮影するためにオリニ大公園に行っており(拙文「思い付きで韓国を彷徨う」参照)、久々の再会である。

@まさかここで会うとは(客車内にも入ることができる)

 そのまま歩き続けると、右手に見えてくるのはプラハ市電である。ゆかりも思い入れもないが、とにかく撮影である。

@洋風

 その先にホームがあり、右手には今年の1月に搬入されたばかりの広島市電、左手には日本製のSL(表紙写真)が展示されている。
 広電(元は大阪市電で、昭和44年に広電に移籍)については、今年中に動態保存化(花郎台駅までの運行)するという情報もある。しかし、先ほど通った交差点の工事もまだされていない(踏切がないため、再生する必要がある)ので、仮に実現するとしてもまだまだ先であろう。

@昔の出張時に乗っていた車両かも

 ホームの近くには、旧花郎台駅舎がある。何やら改装工事中であり、完成予想図からすると何か(鉄道関係?)の展示スペースになるようである。
 それにしても、意外な人出である(誰もいないだろうと思っていた)。普通に公園として家族連れが多く訪れているようであり、またカメラ片手に鉄道車両をあれこれ撮影している人もかなり多い。

@新スポットに?

 その後は地下鉄でソウル駅すぐ近くにある安宿に投宿し、ロッテマートで惣菜(チキンとサザエ)を買って部屋で一献した。

■2018.9.23
 さて、今日は在来線で6時間かけて江陵に行き、2時間かけてKTXで戻ってくるだけである。一般旅行者からすると謎だらけの旅程であるが、鉄道旅行(乗り鉄)にとっては、当たり前のパターンであろう。
 6時前にホテルを出て、地下鉄で清涼里へ移動した。特に迷わず順調に移動できたのでしばらく清涼里駅内を散策し、出発の15分くらい前にホームに降りて行った。

@本日のムグンファ号

 先頭の機関車を見ると、当たり前だが北朝鮮との文明の違いを感じる。
 編成は6両であり、4号車はロングシートのフリースペースで、最後尾の1号車は旧セマウル号の車両を利用した特室である(残りは一般室)。旧セマウル号の特室は、これはもう絶滅危惧種のようなものであるので、今日はこの席を押さえてある。

@最後尾が特室

 なお4号車であるが、以前は売店があり(お菓子やコーヒー、弁当も売っていた)、使われなくなったゲーム機などもあってごちゃっとした感じであったが、自販機1台だけの簡素な造りになってしまっている(この後に行き違った列車を確認すると、同様であった)。昨日の夜の余りのチキンを持ってきてよかった、と思う(当初は売店で何か買う予定であったが、チキンが余ってしまったので仕方なくそれを持ってきた。しかし、それが幸いした)。

@通勤列車みたい

 特室の座席は、前後に余裕があって多少豪華であるとはいえ、一般室と同じ横4列である。どれだけ需要があるのかと訝っていたが、空いている一般室とは違って特室から埋まり始めた。需要は充分にあるということだが、いつまでもこのボロ車両を使っているわけにもいかないので、そのうち新車が必要であろう。

@今日の座席(窓との相性ばっちりの席)

 特室はほぼ満席となり、定刻の7時05分に出発した。この路線は7年前に乗車済みであり(拙文「韓国レールパスの旅」参照)、当時の文章で「工事中の複線の高架があちこちで建設中」とあるが、今日はその高架を走り続けていく。

@曇り空

 トンネルと高架が多いため、景色が遮られることが多い。鉄道旅行という意味では、できれば前の路盤の方がよかったが、通勤通学に使う人にとってはこの方がいいのであろう。
 とある駅でKTXに追い抜かれ、左手から旧路盤が近づいてきて、8時13分に楊東に到着した。同駅出発後もまだ高架は続いていく。

@桐華駅手前で旧路盤を撮影

 8時半を過ぎ、新しい複線の路盤は左手へ逸れていき、昔ながらの路盤を走行して8時34分に原州に到着した。
 同駅を37分に出発してからは、ガタンゴトンという感じの連続である。峠を越えてしばらくすると、何度か訪問している堤川に9時25分に到着した。駅舎は新築工事中であり、その向こう(駅前)には以前宿泊したことのあるモーテルが見える。

@晴れてきた

 同駅を28分に出発し、またしても峠越えになる。10時頃になると、完全に山の中の風景になった。
 10時17分、石項の手前でセマウルの車両が山積み(2階建て)になっているのが近づいてきた。横に「…STAY」とあったようなので、どうやら旧車両を活用した宿泊施設のようである。縁があれば来てみたいが(当旅行記でも「動かない列車に乗る旅」をシリーズ化しているくらいなので)、調べてみたらこの駅は2009年7月に旅客取扱を中止しているという。これでは、外国人にとってはアクセスしにくいであろう。

@耐震性に若干の不安

 その後も長閑な風景の中を走り続け、10時46分にはミンドゥン山に到着した。同駅で対向のムグンファ号と行き違い、出発するとアウラジ方面に行く路盤が左手に逸れていった(そのうち再訪したい)。
 続いて停車したのは舍北で、10時54分着である。ホーム上には小さな石炭運搬用貨車が展示されており、この辺りが炭鉱で栄えたことを示している。

@炭坑用

 同駅出発後すぐに停車したのは古汗であるが(11時02分着)、またしてもセマウル号の車体を再利用した施設が見えてきた(今度は駅構内)。車両の横には「アートギャラリー」と書いてあるので、そういう使われ方をしているようである。

@そろそろ再塗装を(野晒し)

 11時17分に太白に停車し、私の横にいた人も下車した。ほぼ満席だった車内も、1/5くらいまで乗客が減ってきている。11時30分には東栢山を過ぎ、長大なトンネルに入って行った(以前はスケールの大きいスイッチバック+ループ線であったが、トンネル開通によりそれらは廃止されている。詳細は拙文「韓国レールパスの旅」参照)。
 12時32分には東海に到着し、同駅を出発してしばらくすると、右手に日本海である。2週連続の日本海(北朝鮮から、韓国から)ということで、感慨深い。

@快晴

 12時58分に、海岸のすぐ横にあることで有名な正東津に到着したが、駅の周辺は旧路盤跡などを利用して再開発されているようであった。駅の手前には、形からしてこれはセマウルではないが、いくつかの車両を再利用した施設があった。

@詳細は帰国後に調べなければならない

 ここでも数人降りてしまい、1号車にいるのはもう7〜8人だけである(通しで乗っているのは、おそらく私だけであろう。そもそも、江陵に用事のある人はKTXを使うのが普通である)。
 旧い路盤は「レールバイク」として整備されているようであり、家族連れが保線車両のようなものを必死に漕いでいた。
 同駅を出発する際に、ホーム上でまたしてもセマウル号の車両を再利用した施設を発見した。スクラップにするよりはいいが、なんだか至る所に旧セマウル号の車両がある。

@現役(今乗っている)はあと何両?

 左手から新しい路盤(KTX京江線)が寄り添って来て、定刻から7分遅れの13時22分に終着の江陵に到着した。それにしても、あれだけの長距離の高架化とトンネル化、スイッチバックの廃止をしたのにも関わらず、定時での比較では7年前から11分しか短縮されていないのは意外である(1時間くらい短縮しているものと思っていた)。
 さて、ここで2時間ほど時間がある。まずは、徒歩でオリンピック関係の施設がある一帯へ向かった。

@人の気配なし

 それにしても、人っ子一人いない感じである(道路にはちらほら歩いている人がいるが)。定期的に行事があるのならいいが、これだけの施設を維持するのは自治体にとって大変なことであろう。
 施設群まで往復しても1時間弱であったので、残りの時間は適当に市内を散策した。
 駅に戻り、KTX山川に乗り込んだ。

@今日は一般室で

 到着するムグンファ号を待った関係で、定刻より2分遅れた15時32分に出発した。しばらくするとトンネルに入る。
 この列車にとっての最初の停車駅は、平昌である。オリンピックの代名詞的な地名であるが、周囲はごくごく普通の田舎である。

@駅の反対側はひたすら畑

 同駅を出発後は、トンネルと高架の連続である。高速鉄道というのはこのようにして直線で進むため、沿線の「変なもの」に出会わないので、旅行記泣かせである。
 屯内に16時04分、次の万鍾に16時18分に到着し、そこから先はKTX専用線が終わって今朝乗車した路盤である。ここでも、セマウル号を改造した施設を見かけた(撮影はできず)。
 17時過ぎに清涼里に戻り、その先も市内の地上路線をゆっくり走り、17時27分にソウルに到着した。

■2018.9.24
 朝の便で帰らなくてはならないため、6時半頃にホテルを出た。

@朝の旧ソウル駅舎

 実は密かな楽しみとして、「復路の機体が総二階建てのA380」というのがあった。まだ搭乗したことがなかったため、2階席の窓側を押さえて楽しみにしていたのだが、出発の1か月くらい前に機材変更があって普通の小さな機体になってしまった。日韓の関係が若干冷え込んでいるが、それも影響しているのかもしれない。

@旧花郎台駅全景(広電が動態保存化されたら再訪します)

 

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