惜別「青ガエル」(+JR完乗)
■はじめに
熊本電鉄で使用されている元東急の車両、通称「青ガエル」が、この冬をもって運行を終えることとなった。この車両はその独特な風貌から人気を集めており、東急で運行が終了した後も各地方の私鉄に払い下げられて活躍していたが、老朽化もあり、熊本電鉄の車両が最後であった。
私事ではあるが、父方の実家が目蒲線沿線にあり、幼少の頃に正月に帰省する際に、まれにこの青ガエルに乗ったことがある。たいていは四角い普通の車両なのであるが、たまにこれに当たると子どもながらに嬉しかったものである(ただし、ドア部分の窓の位置が高いため、そこから外を見ることができないという点では子ども泣かせであった)。
今回、運用終了のニュースを目にして、いつもならばこの手の「さよなら企画」には参画しないのであるが、思い出もあるので少しその姿を見ておくことにした。
九州を訪問するので、「ついで」ということで、JR完乗をすることにした。
私はもう15年以上前の時点で、新幹線の博多南線とガーラ湯沢支線を除いて、JR(国鉄)の路線は乗車済みであった。完乗を目指すのであればすぐにできたが、そこまで凝ってもいないため放置していた次第である。
また九州新幹線についても、新八代から鹿児島中央までは乗車していたが、博多から新八代の部分はまだ乗っていなかった。ガーラ湯沢支線も片づけたことであるし、この際区切りよい状態にしておくことにした。なお、来月末には北海道新幹線が開通するが、やはり道産子として、こちらは開通後すぐに片づける予定である。
実は今週末に開催の北海道新幹線一般試乗会(倍率10倍)から見事に漏れてしまったので、今回のこの旅行を決定したという経緯もある。
@記念表示板
■2016.2.13
今回もJALのツアーで、往復+ホテル1泊で29,800となかなかのリーズナブルな設定である。熊本は天気が悪いようで、「場合によっては福岡へ行くか羽田に戻る」という条件付運行であった。
無事に熊本に到着。バスで市内に向かったが、時折バケツをひっくり返したような雨になる。
私は普段は昼は食べないし、ラーメンも特に拘りはないが、熊本に来てラーメンを食べないという手はないであろう。目星を付けておいた店に行き、勢い余ってセットで注文した。
@食べ過ぎ
今日は、青ガエルに乗るだけである。ゆっくり昼食を頂いてから、市電で上熊本駅へと向かった。先ほどまでの大雨も、無事に治まっている。
上熊本駅は、夏目漱石が熊本に赴任した際に最初に降り立った駅として有名である。以前は瀟洒な駅舎であったが、新幹線開通に備えて新駅舎になることとなり、旧駅舎の一部はすぐ隣りに移築されて市電の駅となっている。この駅に来たのは久々であるが、新しい駅舎がほぼ完成している状態であった(あとは駅前ロータリーの完成を待つばかりである)。
@一変した風景に漱石先生も困惑顔?
熊本電鉄の上熊本駅は驚くほどの小ささで、こちらは「新幹線などどこ吹く風」という感じで、以前とまったく変わりがない。撮影目的の人がちらほらいるが、運行最終日は明日なのでそれほどの多さではない。
12時41分、青ガエルがやってきた。
@見納め
撮影を終えてから、早速乗り込む。車内にも同じ目的の人(家族連れもいる)が多いが、立つ人がちらほらいるくらいで、大混雑と言うほどではないが、おそらく通常はガラガラであろうから、それと比べると賑わっていると予想される。
@こちら側は「平面ガエル」と呼ばれる
12時50分、旧い電車らしいモーター音で走り出した。沿線では、やはり撮影目的の人があちらこちらでこちらに向けてカメラを構えている。
@車内
北熊本までは9分、あっという間である。青ガエル運行終了に合わせてイベントのようなものが行われており、車両地区の一部が解放されて車内で記念品が売られていたりする。
@旧車もお目見え
折り返しすぐに出発していく青ガエルを、テレビ局のカメラとともに見送った(最近、どうにもテレビカメラによく出くわす)。
見送った理由は、沿線からも撮影しようと思ったからである。駅を出て国道を南下し、地図を片手に川沿いを歩き続け、打越駅手前の鉄橋付近にやってきた。やはり撮影スポットだけあって、2〜30人のファンと、またしてもテレビカメラが待ち構えていた。
しばらくすると踏切の警報音が鳴り始め、右手から青ガエルがやって来た。曇天であるし逆光になってしまうが、なんとかその姿を収める。
@こんな感じで
撮影後は打越駅へ歩いていき、折り返しの列車が来るのを待ち、乗車。正真正銘、これで乗り納めである。
@さようなら
さて、時刻はまだ14時前である。しかし特にすることもないので、今日の宿がある大牟田に向かうことにした(熊本に泊まったのでは日曜の移動が大変であり、博多のホテルにするとパック料金が高くなってしまうため、途中の大牟田にしてみたのである)。
14時35分発の各駅停車で移動し、荒尾で乗り換え、大牟田着は15時19分。この近辺は炭鉱で知られているが、有名どころは駅から遠いため、歩ける範囲にある「宮浦石炭記念公園」という所に行ってプチ鐡ネタを拾うことにしている。
歩くこと20分弱、公園に到着した。炭鉱関連の展示物(ほぼ野晒しであるが)がいくつかある。
@鐡です
なお公園の目の前には鉄道の路盤があり、こちらは現役である。数多くの貨車と、それを牽引する小さな機関車があり、これはこれで、知る人ぞ知る少し珍しい光景である。
@プチ機関車
その後はスーパーで食材を買い、ツアーに組み込まれているホテルへと向かった。
今日の夕飯は、大牟田名物の「イカ弁当」である(何かないかネットで探したところこの情報に行き当たり、しかもこれを売っている店がホテルから徒歩3分くらいの場所にあったため)。揚げ物+タルタルという、カロリーは気にしてはいけない組み合わせである。
@美味でした
■2016.2.14
駅へと向かい、6時20分発の西鉄に乗る。JRでも良かったのだが、西鉄で行き100円バスに乗り継いだ方が、若干安いのである。
7時35分に天神に到着し、駅近くからバスに乗りJR博多駅へ。博多南線(新幹線)ホームは奥まったところにあるが、なんとか8時05分発に間に合うことができた。
@特急券が必要です
ホームにいた車両は、「レールスター」であった。もう15年くらい前であるが、私が関西にいた頃に、デビューしたてのこれに乗ってよく広島などに出張したものである。
博多南までの所要時間は9分であり、今日もまたあっという間である。車両基地だけあって、口を開けた先頭車両などもいたりして、少しだけ特異な空間である。
@点検中?
駅付近には、特に見るべきものはない。住宅街を散策しても仕様がないので、切符を買ってすぐに折り返す列車に乗り込んだ。8時20分に出発し、8時29分に博多到着。
新八代までの新幹線の切符は、JR九州のネットで購入済みである。しかし1枚ではなく、熊本までの指定席と、そこから先の自由席に分けて買ってある。というのも、熊本までは競合する高速バスに合わせて安価であるのに対して、新八代はそういう状況ではないため、1枚で買ってしまうと高くなってしまうのである。
券売機でそれらの切符を手に入れてから、とりあえず駅弁を購入。9時09分発の列車は、強風の影響で徐行したため約3分遅れて入線してきた。
@出発後は、さっそく駅弁に
九州新幹線の指定席は横4列であり、先ほどのレールスターど同様に「ゆとり」がある設計である。自由席は横5列であるし、ネットで早割を買えばかなり安価であるので、指定席がおすすめである。
弁当を食べ終え、いくつかの停車駅を過ぎるうちに、「まもなく熊本」というアナウンスがあった。またしても、あっという間である。
熊本到着前に自由席に移動し、新八代到着は(遅れを取り戻して)定刻の9時59分であった。
@到着
到着したホームの反対側には、今となっては柵があって使用されていない部分がある。九州新幹線が新八代までの部分開業だった際には、博多からの在来線が乗り入れてこのホーム上でダイレクトに乗り換えができていたのである(降り立ってから、昔のことを思い出した)。
@まだまだ新しい
さて、後は適当に市内を観光して、昼過ぎの空港連絡バスで移動し、東京に戻るだけである。青ガエル最終日の今日、熊本はプチお祭り騒ぎになっていることだろう。