検証「JR北海道」

■はじめに

 最近、JR北海道では不祥事続きである。ただ単に「事故が多い」というだけではなく、安全関連文書の改竄(しかもかなり多数)があったりして、新聞紙上を賑わせている。
 次第に問題が深い部分にまで至ってしまい、ついに鉄道の時刻にまで影響するようになってしまった。特急両列車の最高速度を下げることとなり、それに伴って所要時間が長くなり列車同士の接続が悪くなってしまっている。さらにエンジンに問題のあった車両形式をすべて運休にしたため車両不足が顕著となり、その関係で特急サロベツはしばらく運休となり、代替として快速列車が走り始めたりしている。
 このような状況は一時的なものであるだろうから、その状況(少なくとも平成26年3月末までは続くらしい)を確認してこようと思う。ついでに、鉄道関係の小ネタ(鉄道ファンには有名であるが、一般の人にはあまり知られていないグルメなど)を絡めようと思っている。

 「検証」と書くと仰々しいが、旅の目的は、実は結果論的なものである。1月の成人の日を絡めた三連休であるが、どこもかしこも飛行機代は高い。JALのサイトでどこが最安であるかをあれこれ検索してみたところ、女満別空港であった。なんと往復飛行機+ホテル2泊を付けて、たったの2万4,900円である。ホテルに2泊することを考えれば、飛行機代はLCC並み(三連休であることを考慮すればそれ以下)であろう。同じようにパック旅行代が安いという理由で昨年11月にも女満別空港を利用したばかりであるが、前回よりもさらに安くなっている。それにしても、冬の道東がここまで人気がないとは知らなかった。
 飛行機を押さえた後は東京駅にあるJR北海道プラザへ行き、企画切符である「三連休おでかけパス」と指定券を手配しておいた。

@代替快速列車(稚内駅にて)

■2014.1.11
 羽田から女満別へ飛び、網走へ行くバスへ乗り換えた。あと20分くらい到着が早ければ女満別十字街で下車して女満別駅からパスを利用するのだが、ギリギリで列車に間に合わないので大人しく網走駅まで行くことにしている。

@7週間ぶり(前回は雪なし)

 初日の目的は、以下である。
・釧路から、最高速度を落とした「スーパーおおぞら」号に乗車
・池田駅の「ステーキ弁当」を頂く(事前に電話予約をすると車両まで届けてくれる。以前食べたことがあるが、1,050円にしては上々の内容であった)
・美唄で名物の焼き鳥を入手(これは鐡とは全く関係がない)
 飛行機代が安ければ釧路空港に降りたのであるが、上記の理由により女満別である。しかし、オホーツク海や釧路湿原を眺めながらの移動は、苦痛ではない。
 網走から、10時01分発の快速「しれとこ」号(たった1両で、しかも通過駅が片手くらいしかない「名ばかり」の快速)で移動した。

@道東的線路

 釧路には13時27分に到着し、乗り継ぎ時間が6分しかないので急いで1番線へと向かった。しかし、いるはずの特急列車の影も形もない。変だなと思って改札を出てみると、なんと札幌からやってくる特急列車が3時間半以上も遅れており、その影響で出発が遅れるとのことであった。特急用の車両が余っていれば下り列車なぞ関係なく運用できるが、これもまた車両不足が関係しているのだろうか。
 いずれんせよ、出発は早くても14時半頃とのことである。今朝予約したステーキ弁当の店にキャンセルの電話をし、適当な昼食を求めて市内に出た。
 そうはいっても、思いつくのは和商市場くらいである。ここは「勝手丼」が有名であるが、どうにも観光色が強い気がしてならない。結局、市場内にザンギ(北海道風鶏のから揚げ)の店を発見したので、そこで弁当を買うことにした。

@ギリギリ北海道的なもの

 遅延の理由は、信号機の不具合とのことである。天候なら仕方がないが、こういう理由であると「またか」と思ってしまう。
 札幌からのスーパーおおぞら1号は14時40分過ぎに到着し、その後車内清掃を行い、スーパーおおぞら3号となって出発したのは定刻より1時間22分遅れの14時55分であった。本来なら、池田駅を過ぎてステーキ弁当を頬張っているはずの時間帯である。

@ステーキは次回に…

 十勝地方の雄大な景色を眺めながら移動する予定であったが、1時間半近くも遅れてしまったため、帯広を過ぎてしばらくすると真っ暗になってしまった。
 札幌着は、19時13分であった。「あわよくば19時00分発のスーパーカムイに」と目論んでいたが、それはもう不可能である…と思っていたが、どうやらそちらも遅れているらしい。待つことしばし、遅れてやってきたそれに乗り込み、19時20分に出発した。
 車両のデッキから焼き鳥を予約注文し、美唄で途中下車して店舗まで歩いて受け取り、20分後にやってきた次のスーパーカムイ号で旭川へ向かい、パックに付いてくるホテルに投宿した。

@焼き鳥だけは予定通りに(歯応えがあって美味)

■2014.1.12
 本日の目的は、以下である。
・音威子府でそばを食べる(土産用のそばも買う)
・新しくなった稚内駅を確認
・特急サロベツの代替快速に乗車(お座敷列車らしい)
 早起きをして、6時05分発の稚内行各駅停車に乗り込んだ。しばらくは薄暗い中を走り、やがて夜明けとなる。所々で吹雪いているようで、見通しは良くない。
 名寄に到着し、しばらく停車時間があったのでホームに出てみた。列車の前では、保線要員が出発に備えて列車前の雪を避けている。

@作業中

 同駅を出発しようとしたが、どうにも前に進まない。結局、一旦バックして、勢いをつけて出発をした(私にとっては初めての経験である)。
 音威子府には、定刻より4分遅れの8時56分に到着した。雪はさらに酷くなり、なんだか手の施しようがないほどである。

@雪だらけ

 さて、ここの駅そばは有名であるが、開店時間は9時半である。それまで、駅舎内にある「天北線資料室」を見たりして時間を潰した。
 9時20分、先ほどまで乗車していた稚内行の各駅停車が長時間停車を終えて出発すると、籠に商売道具を入れたおじいさんがそば店へ入っていった。9時半頃に計ったように準備が出来たので、かけそばを注文し土産用のそばも2つ購入した。ここのそばを買うのは3回目くらいであるが、いかんせん列車の本数が少ないので、いつも計画に難儀を極める。

@今日は最初から予定通り

 そばであるから、当然あっという間に食べ終えてしまう。稚内行の特急が出るまであと1時間以上あるが、他にすることもないので、近くにある道の駅へ行って筍や蕗を加工したものを土産に買ったりした。
 駅舎内の絨毯でパソコンをつついていると、駅員から「稚内行は25分ほど遅れております」との案内があった。今日も遅延であるが、これは天候が理由であるから仕様がないだろう。
 ぼんやり待っていると、駅前に天北線(旧国鉄の廃止路線)の代替路線バスがやってきた。昔は天北線の路線通りに曲淵を経由していたが、いつの間にか宗谷岬経由になったようである。
 11時22分、特急「スーパー宗谷1号」は29分遅れで出発した。

@雪煙

 特急に乗車してからは、少し微睡みながら景色を眺め続けた。13時10分頃に南稚内に到着したが、目の前にはこれから乗る予定の代替快速の車両が係留してある。見てみると、やはり1両目はお座敷列車であった。
 13時15分、稚内に到着した。快速の出発まで25分以上あるので、外に出て新装開店となった駅舎を眺めたりした。稚内と言えば、ボロボロの駅舎にくたびれた蕎麦屋、という思い出しかないのであるが、駅前にあった広大な土地を含めて再開発されており、見違えるほどになっていた(帰宅後に調べてみたら、あの蕎麦屋は閉店してしまったらしい…)。
 さて、お座敷列車に「しらふ」で乗るのも忍びないので、駅で発泡酒と地の物らしき弁当(おおなごの棒寿司)を買い、車内へと向かった。

@これを宛がわなければならないほど、車両運用に困っているのでしょうか

 13時42分、列車は定刻に出発した。お座敷車両に乗車しているのは8人程度で、残りの20人ほどは2両目の普通の車両(リクライニングしないボックスシート)に座っている。意外と、お座敷の人気はないようである(それも当然、宴会するのならまだしも、普通に移動するのなら座席がいいであろう)。
 とにかく、お座敷であることを理由に一献の開始である。ツマミは、音威子府で買った蕗で充分である。

@一人宴会

 2両編成のディーゼル列車は、雪の中を快走し続けた。線路上にシカが現れたため徐行をして少し遅れたりもしたが、すぐに挽回した。
 音威子府や名寄で乗客が増え、お座敷の座椅子も8割以上が埋まり、終点の旭川到着は定刻の17時52分であった。

■2014.1.13
 6時半過ぎにホテルを出て、駅へと向かった。−15度と冷え込んでいるが、中頓別の−29度に比べればましである。
 今日の目的であるが、小ネタはいくつかあるものの、大きなものは「北浜の“停車場”でランチ」くらいである。
 6時58分発の上川行は、5分ほど遅れて出発した。
 私の母親が上川出身であったため、私は小学低学年の頃に旭川に帰省した際、列車で上川まで行ったことがある。はっきりとは覚えていないが、当時はまだ客車の鈍行(各駅停車)だった気がする。
 沿線に幼少のころを思い出させるものは何もないが、寒波のため各駅とも雪まみれであった。

@ひたすら雪

 2両編成の列車に元から乗客は少なかったが、伊香牛で最後の乗客が降りてしまうと、車内は私だけになってしまった。1両編成に私だけというのは過去何度か経験があるが、2両編成では初めてかもしれない(結局、上川まで私だけであった)。
 東雲を過ぎ、あと少しで終点の上川というところで、列車は警笛を鳴らし続けた。昨日と同様でシカが出たのであろうが、昨日と違う点は、その警笛がずっと続いていき、しかも急ブレーキがかかりゴンッという鈍い音がして停まった点である。外を見てみると、ぶつかったシカかどうかはわからないが、1匹の大きなシカが森の中へ走っていくのが見えた。

@シカ逃走中

 ワンマンだった運転手が「シカとぶつかったので、少し時間がかかるかもしれません」と言い、2両目の後ろから外へ出て行った。先ほど見たシカがぶつかったのか、それとも別のがぶつかってあの世に行ってしまったのかは不明であるが、いずれにせよ15分後くらいに運転を再開した(動き出そうとしたが車輪が空回りしてしまい、出発までしばらく時間がかかったが)。
 急ぐ旅ならば焦ってしまうが、上川では特に用事もなく、待ち合わせ時間も1時間以上ある。それに、旅行記を書くようになってから、この手の事故は「一ネタできた」と思えるようになってきている。
 上川には、8時30分に到着した。駅周辺は、スキージャンプの梨沙羅選手(上川出身)の幟やポスターでいっぱいである。
 街中を散策したが、−15度ではどうにもならない。朝も早いためコンビニくらいしか開いていないため、15分くらいで駅へと戻ってしまった。
 9時45分、特急「オホーツク1号」が3分遅れで入線してきた。

@いつも通りに

 先に示した通り車両運用の関係で多くの特急が運休したりしているが、この「オホーツク」だけは蚊帳の外である。というのも、元からかなり旧い車両を利用しており(幸い、運転自粛の車両にも該当していない)、スピードも元から速くなかったため、特に変更点がないためである。
 指定席は押さえてあったが、念のため自由席へ行ってみた。この編成の網走側(註:遠軽から網走までは逆編成)は、最前列から前が見通せるようになっているのである。
 たいていは鉄分多目の人に占められているのであるが、今日は空いていたので(そもそも乗車率は3割程度)、ありがたくそこに座ることにした。

@峠を越える

 北見峠を越えていくと、だんだん空は晴れていった。鐡旅にとって天候は最重要事項ではないが、今日の午後だけは吹雪いてもらっては困るので安心した(帰りの便が飛ばなくては、仕事に支障をきたすため)。
 遠軽で進行方向が変わる頃には完全な快晴になり、その後はつい7週間前に訪問したばかりの常紋トンネルを抜け、北見で多くの乗客が降り、網走には12時46分に到着した。
 待ち合わせの時間は特にすることもないので、売店で“網走ビールを”買って呑み始めた。改札口の前には行列が出来ているが、これは13時29分発の札幌行特急の乗客であるはずである。13時10分頃に改札が始まったが、案の定ほとんどの乗客は特急へと流れていき、釧網本線の車両に乗り込んだのは、私以外は高校生2人だけであった。
 列車は、定刻の13時25分に出発した。桂台で中高生が8人くらい乗ってきたが、やはり観光客は私だけである。雄大なオホーツクを眺めて一喜一憂しているのは、当然私だけである。

@他の乗客は興味なし

 北浜に到着したので、下車して写真を収めてから、駅舎内にある喫茶店「停車場」に入った。
 室内には旧い鉄道グッズがいくつかあり、何よりも旧い客車の座席をそのまま利用しているのが良い。前回一度来たことがあるが、その時は昼時で混んでいたのでカウンターになってしまった。今日は入店時に誰もいなかったので、念願の窓際である。上を見上げると、国鉄マーク入りの扇風機がぶら下がっているのも良い塩梅である。
 前回は定食にしたので、今回はオムライスにしてみた。ライスには大きなシーフードが混ぜ込んであり、美味であった。

@満足

 食べきった後は店を出て、南へ5分ほど歩いたところにある踏切から海岸線へ行ってみた。綺麗な写真は何枚も撮れたが、いかんせん寒すぎて顔の皮膚が痛いくらいなのですぐに駅舎へと戻った。
 駅舎横にある展望台から近づいてくる列車の撮影をし、転ばない程度に急いで階段を駆け下り、その列車に乗り込んだ(網走方面の列車はあと1時間ほどないため、この列車で知床斜里まで行き、とんぼ返りするためである)。

@無事撮影

 知床斜里まで車窓を堪能し、7分の滞在で網走方面の列車に乗り(この列車も出発時に車輪が空回りして動き出せなかった。今回の旅で3回目である)、そして網走へ戻ってきた。
 さて、実は最後の鐡ネタとして「意外と知られていない空港連絡駅“西女満別”から空港へ歩いて行く」を考えていた(実際にやったこともあり、それほど遠くないのでおすすめである)。
 しかし、道東の日は短く、5時前には真っ暗になってしまう。西女満別など外灯も何もない暗闇であろうし、この寒さであるから、諦めることにしてしまった。
 結局、女満別で下車して駅近くのホテルで日帰り温泉入浴をし、役場前バス停から空港へと向かった。

@オホーツクの浜辺からのベストショット

 

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