惜別「185系」(おまけで1年前のE251系も)

■はじめに
 私事ではあるが、小さい頃から鉄道には興味を持っていたものの、本格的に熱を入れ始めた(写真などを撮るようになった)のは、小学校6年生の頃である。年度でいえば、昭和56年(1981年)である。まさにその1981年にデビューした国鉄型の特急である185系が、この3月をもって定期運用から引退となる(臨時としての運行は今後もあり得る)こととなった。ということで、路線の廃線や車両の引退の「乗り納め」をする「惜別シリーズ」を、久々にやることにした。
 しかし、185系について特に思い入れがあったわけではない。デビューしたての頃、この車両に関しては、正直なところ良い印象がなかった。特急なのに運転席が低く、ドアや窓も「らしく」なく、どうにも「特急用車両」として受け入れられなかったのである(そもそも各駅停車等でも運用することを想定してデザインされた車両なのであるが、子供にはそういう「大人の事情」を慮ることはできなかった)。数年後に、大宮まで開業した新幹線の「リレー号」として運用された際には、「まぁ、この程度の扱いで充分」と、不遜なことを思っていたこともある。
 しかし、現金なもので、国鉄型の特急車両が少なくなってくると、この車両にも愛着を持つようになってきた(というか、私ももうかなりの大人であるから、あれこれと理解することもできる)。ついにその時がやってきた、という感じである。
 特急「踊り子」自体の運転本数は多いため、指定席を取るまでもないであろう。さすがに引退直前は混雑することが予想されるため、2月のうちに乗りに行くことにした。ただ単に乗りに行くだけでは味気ないため、「南伊豆フリー乗車券」を利用して、南伊豆や西伊豆へのバス旅もしてくることにした(この切符は、伊豆急下田までの単純往復でも元が取れてしまい、さらにかなりの路線のバスが乗り放題という、お化け切符でもある)

 さらに「おまけ」として、約1年前に乗車した「E251系」についても記載しておくこととした。こちらの車両は特急「スーパービュー踊り子」号として運用されていたが、なんとオンボロの185系よりも先に引退してしまったのである。その車両の展望席などに乗って単純往復(日帰り)をしたのであるが、ネタ的にそれほど多くなかったため、「旅行記にするほどでもないだろう」と、放置していたのである。今回の185系引退に合わせて、そちらも簡単に紹介しておきたい。

@東京駅にて

■2021.3.20
 9時00分発の「踊り子」に乗るために、8時40分過ぎに東京駅にやってきた。弁当を買ったりして50分頃にホームに上がると、すでに車両は入線していた。引退までまだ日数は残されているが、撮影目的の人も結構いるようである。先頭車両の近くでは整列して少し待ってから撮影して(表紙写真。整列させるのは良い方法だと思う)、伊豆急下田行の最後尾の自由席に乗り込んだ。

@側面の特徴あるデザイン

 指定席は空いていたが、自由席はそこそこ埋まっており、左側(海が見える側)の窓側席は残り僅かであった。そこを確保して、後は伊豆急下田まで乗るだけである。定刻の9時00分、東京を出発した。あの懐かしいオルゴールが鳴り、車内アナウンスの開始である。
 さて、走り出してしまえば、見慣れた(見飽きた?)東海道本線の景色である。ということで、ネタ用に東京駅で駅弁を買っておいてある。

@駅弁登場

 いかにもな企画物であるが、せっかくなので「乗っかる」ことにした。中身については、ぱっと見は普通の幕の内のようであるが、実際はシラスや黒はんぺんなど沿線(神奈川県や静岡県)の地の物づくしで占められていた。デザイン全体も、185系モードである。

@中身

 先述した通り左窓側に陣取っているが、この時間帯は日差しが入り込んできてしまう。窓枠にはカーテンだけでなくブラインドも備え付けられているが、その古さときたら国宝級である。しかし、引退前となると、こんな部分でも愛おしく思えてしまうのは不思議である。

@これでも特急です

 冒頭の「はじめに」で「ドアや窓も“らしく”ない」と書いたが、この特急用車両の窓は開けることが可能なのである(この事実も、子供時分の私には受け入れ難いものであった)。現在の新車でも窓が開く車両はあるが、上からスライドさせる形式が主流である。今の若い子などは、これの開け方を知らない人もいるのではないかと思う。

@両方同時に摘まんで上げます

 品川や横浜に停まるごとに乗客が乗ってくるが、適当な席を見つけられずに他の車両に行く人もちらほらと見受けられた(横浜の時点で、私がいた車両は7割弱ほど埋まっていた)。
 すぐ後ろには修善寺行も連結しており、そちらと合わせると15両編成である。このくらいの数は昔は普通であったが、今は効率化で短い編成の特急が多くなってきたため、そういう意味でも貴重な存在であろう。

@平塚周辺

 なお駅弁だけでなく、ビール(実際は第三のビール)と酎ハイも買っていたため、それらと一緒に美味しく頂いた後は、しばらくウトウトとしていた。ふと目を覚ますと、もう熱海である。ここで後方の修善寺行が切り離されるため、ある意味一大イベントである。
 ホームに降りてみようとしたが、密も密、大密である。降りることはしないで、車内のドアから切り離しの様子を眺めた。

@ある意味特等席?

 10時23分に熱海を出発してJR伊東線に入る。この路線の終着である伊東の直前では、海が大きく広がってきた。今日は快晴であり、大島なども綺麗に見えている。
 10時45分に伊東に到着し、そこから先は伊豆急行である。同駅を10時51分に出発。こちらでも、所々で快晴の海と島々を拝むことができた。

@超快晴

 単線の路線をのんびりと走り続け、11時37分に到着した河津でかなりの乗客が下車して(河津桜が見頃のため)、寂しい車内になって11時50分に伊豆急下田に到着した。あっけないが、これで185系の旅は終了である。
 ということで、ここから先はバス旅である。まずは、12時10分発の石廊崎オーシャンパーク行に乗り込んだ。

@バス旅第一弾

 約45分で石廊崎オーシャンパークに到着。強風のため灯台には入れなかったが、岬の神社周辺などを散策し(手すりがないと吹き飛ばされそうな強風であった)、それでも時間があったため、15分ほど歩いて石廊崎の集落にも行ってみたが、商店や飲食店はすべて閉まっており、かなり寂しい集落であった。観光旅行の選択肢が少なかった頃(新婚旅行の定番が熱海だった頃)は、もっと賑わっていたに違いない。

@ゴーストタウンぽい

 オーシャンパークまで戻り、14時10分のバスで伊豆急下田駅へ。5分程度の乗り継ぎで堂ヶ島行に乗り込んだ。
 50分ほど乗車して、松崎小学校で下車。十数年ぶりに、なまこ壁のある街並みを散策した。
 スーパーであれこれ食材を揃えてから、再度バスに乗って5分くらいで下車し、海岸を歩いて今日の安宿へ向かっていった。時刻的に、夕日も綺麗である。

@グッドタイミング

 今日は素泊まりの宿であるが、選んだポイントは、地域最安であったことと、猫が数匹いる点である。地元の温泉施設に入りに行ってから、猫をゴロゴロして、スーパー食材で一献してから就寝。

■2021.2.21
 7時過ぎのバスに乗り、伊豆急下田駅へ。松崎付近で近距離の利用者が2人ほどいたが、それ以外はずっと私1人であった(平日なら通学客がいるのであろう)。
 8時過ぎに伊豆急下田駅に到着し、しばし待ってから8時23分発の列車に乗り込んだ。伊豆急下田にはよく来るが、いつもJR車両であるため、伊豆急行の車両に乗るのは久々である。

@東急っぽい(東急グループですから当然)

 定刻に出発し、8時36分に到着した河津で下車。ここからは、件の乗車券のフリー区間を大活用して、河津七滝(ななだる)の散策をすることにしている。
 8時40分発の修善寺行バスに乗り、河津七滝を過ぎて、水垂で下車。ここで降りると、ひたすら下って河津七滝を散策することができる。

@滝いろいろ

 さて、河津七滝散策自体は以前にやったことがあり、今日の本当の目的は滝ではない。本命は、わさび丼である。テレビ番組「孤独のグルメ」でも取り上げられて有名なものであるが、前回訪問時はかなり混んでいたため諦めた経緯がある。
 10時少し前、その店へ。すでに席は埋まっていたため少しだけ待ったが(コロナ対策で席数を減らして相席もしていなかったため)、無事に頂くことができた。

@そばとのセットにしてみました

 わさび丼などを頂いてからは、11時03分のバスで河津方面に移動し、役場前で下車した。ここからは、普通に河津桜鑑賞である。
 それにしても、すごい人出である。コロナ禍もあって日本国内各地での祭り関係は中止になるものが多いが、ここでは開催中である(出店も多くあり)。各所で検温コーナーがあり、検温した人は機械から出てきたシールを体に貼る、というような対策をしていた。

@菜の花まで見頃ですから

 1時間以上もぶらぶらして、河津駅付近にやってきたが、一部で超絶密な場所があった。確かに河津桜や菜の花が満開の場所であったが、彼らの目的はそれらだけではなく、鉄道である(花越しの鉄道写真を撮影するため)。三脚や脚立などで装備して、大きなカメラを構えている。なかなか、大変そうである。
 彼らを後にして駅に向かうと、ふと車輪の音が聞こえてきた。やってきたのは、まさに185系である。ということで、人のいない場所(=アングルの悪い場所)から、私も撮影である。

@撮り鉄失格

■2020.1.26
 さて、時は約1年戻り、去年の1月である。「スーパービュー踊り子」として運用されていたE251系が引退ということで、その乗車記である(極簡単に紹介)。
 今回の185系「踊り子」と比較して「スーパービュー踊り子」は運転本数が少なかったため、プチ祭り状態となっており、特に車両前後にある展望席は連日売り切れであった。ということで、それに参戦するつもりはなかったのであるが、とある日にふと日曜日の空席を確認すると、後方展望席の窓側席が1席だけ空いているではないか(誰かがキャンセルした模様)。ということで、うっかりそれを押さえてしまった。
 運行当日、東京駅へ行き、11時00分発の「スーパービュー踊り子」に乗り込んだ。

@こちらの方が新しいのに先に引退

 定刻に出発。今回の冒頭にも書いた通り、沿線風景は見慣れたものであるが、展望車ならではのアングルであったので、この時は結構楽しめた記憶がある。東京駅で駅弁+アルコールを買ったのも、今回と同じである。
 E251系には、キッズルームなど、他の車両にはない特異な部分もあった。ということで、あれこれと車内探索である。

@キッズルーム

 熱海から伊東線に入り、伊東からは伊豆急行線に。たくさん海などの写真も撮ったが、この時は曇りであったため、素晴らしい写真はなかった。しかし、先ほど記載した通り、展望車ならではのアングルはずっと楽しむことができた。

@すれ違う185系も

 13時29分に伊豆急下田に到着。しばし駅付近を徒歩観光して、後は15時台の踊り子(185系)に乗って帰るだけである。
 駅に戻ると、「伊豆クレイユ」が停車していた。当時は「大人鐡」(食事付き観光列車に乗る旅)を始めたばかりであり、「そのうち、これにも乗ろう」と思っていたのだが、この2か月後にまさかの引退となってしまった。

@これが見納め

 

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