イタリア幹線鐡紀行

■はじめに
 今回は、初めてのイタリア鐡旅である(そもそも、イタリアに行くこと自体が初めてである)。
 少し下調べをして、ローカル線や山岳鉄道に惹かれる部分もあったが、やはり初めてであるため「ファーストクラスのレイルパスを使って、主要幹線を押さえてくる」ことにした。しかしただ幹線だけでは面白くないため、クック時刻表の「景勝路線」を参考にして、オーストリアとの国境まで行く路線(幹線だが、山岳部分を走行する)や、フィレンツェ近郊のローカル線には乗ってくることにした。
 使用するレイルパスは、3日間+キャンペーンで1日追加の4日間である。到着日と出国日については、あえてパスは使わずに普通の観光をすることにした。

【旅程】
1日目:深夜便で羽田発。フランクフルトで乗り換え、10時頃にローマ着。空港連絡鉄道で移動し、ローマ市内観光(ローマ泊)。
2日目:ナポリへ移動し、さらにパレルモまで移動。夜行列車で折り返し(車中泊)。
3日目:ナポリ小観光後、列車を乗り継いでベネツィアへ移動(ベネツィア泊)。
4日目:ブレンネロ・ブレンナー(オーストリアとの国境)まで移動し、ボローニャ経由でフィレンツェへ移動(フィレンツェ泊)。
4日目:ローカル線経由でピサへ移動し、観光後ジェノヴァ経由でミラノへ移動(ミラノ泊)。
5日目:ミラノ市内観光後、空港連絡鉄道で移動。デュッセルドルフ乗り換えで成田へ(機内泊)。
6日目:成田着

【註:イタリアの列車区分(今回乗車したもののみ)】
FR:フレッチャロッサ(Frecciarossa)(高速鉄道)
FG:フレッチャルジェント(Frecciargento)(高速鉄道だが、FRより下位)
IC:インテルシティ(Intercity)(長距離特急)
ICN:インテルシティ・ノッテ(Intercity Notte)(夜行列車)
RV:レッジョナーレ・ヴェローチェ(Regionale Veloce)(快速列車)
R:レッジョナーレ(Regionale)(各駅停車)

@ナポリ中央駅にて

■2017.5.2
 事前にイタリアの治安の悪さについての情報をネットで調べたりして、それが原因であまり前向きな気持ちではなかったが、ローマに着いて晴れ間を見ると気分も盛り返してきた。
 空港内で空港連絡鉄道に乗るべく足を進めたが、ターミナル内で切符の自販機を発見した。英語の手順に従い、なんとか購入(なお、改札口の直前にもたくさん券売機があるため、混雑している場合はここで買う必要はない)。

@イタリア初切符

 切符をかざして改札を通り、刻印機で日時を押す(ここが重要。忘れると罰金の対象となる)。3本ほどあるホームのうち、中央にはすでに市内行の「レオナルド・エクスプレス」が停まっている。その写真を撮っているうちに、左右のホームには通常の特急列車や各駅停車が入線してきた。

@これに乗る

 9時55分に出発し、10時26分にローマ・テルミニ(中央)駅に到着した。まずやるべきことは、レイルパスのヴァリデーションと、ネットで指定済みの切符の発券である(ほとんどはメール添付の切符で乗ることができるが、国際列車であるユーロシティ(EC)についてはイタリア国内の券売機で発券する必要がある)。
 あれこれ格闘し、無事に1枚をゲット。

@メニューに英語あり

 今日は特に用事はなく、残りは自由時間である。ローマと言えばコロッセオやパンテオン、トレビの泉など世界的な観光名所が目白押しであるが、私がまず向かうのは、ガイドブックの片隅にも載っていない「ポルタ・サン・パオロ鉄道博物館」(ATAC交通博物館)である。
 そこに行くためには地下鉄を利用するが、1日切符がお得である。自販機でも購入可能であるが、ローマ名物の自販機おばさん(横に待ち構えていて無理やり手伝いをしてチップをせびる)が待機しているし、ガイドブックでも「お金を入れたが反応しない」という情報もあるので、ゆっくり時間をかけて窓口で購入した。

@売店でも買えますが

 地下鉄で移動し、ピラミデ駅へ移動。地上にはローマ・オスティエンセ駅があり、この駅の敷地内に当該博物館がある。
 ということで長い通路を歩いて地上に出たが、どこにもそれらしき施設がない。打ち出してきたグーグルマップを見ると、この駅は東西に位置する駅舎とそれを斜めに横断する駅舎があり、博物館は後者の方にあるようであった。つまり、地下鉄を降りたら長い通路は通らずに、その場で上に出れば良かったのである。
 てくてくと歩いてもう一つの駅舎に向かうと、なんと入口に自動改札があるではないか。地下鉄と違って、地上の一般鉄道には改札がないはずである(この理由は後で知る)。しかし改札をよくよく見ると一日切符に書いてあるのと同じマークがあったので、地下鉄移動の際に利用したそれを入れてみると、すんなり通ることができた。とりあえず、めでたしめでたしである。
 展示コーナーへ移動し、あれこれ見学する。

@展示物の一例

 展示車両は7両くらいという、小ぢんまりした博物館であるが、何より無料であるのが良い。
 あれこれ見てから地下鉄で市内に戻ろうとしたが、地下鉄乗り場に行くための改札がないではないか。つまり、先ほどあった自動改札は「地下鉄用」なのである。地上の鉄道は本来は改札がないが、こちら側の駅舎は地下鉄との共用になっているため、改札を付けざるを得なかったのである。

@車内に入れる展示もあり

 その後は一日切符を大活用して、先ほど挙げたコロッセオ等(もちろんサン・ピエトロ寺院はスペイン広場など)を駆け足で観光していった。

@おのぼりさん的に、いろいろと

 定番を押さえた後にホテルに荷物を置いてからは、先ほどの一日切符を活用してさらに鐡ネタ探しである。というのも、この切符は地下鉄だけではなくて、トラムにも乗ることができるからである。
 トラムに乗るべく、テルミニ駅から東の方へ歩いていったが、明らかに治安の悪い地域であった。明るいうちならいいが、暗くなったら近づかない方がいいだろう。
 しばらくして、トラムの駅を発見。改札での切符の入れ方が最初は分からなかったが、なんとか入ることができた。

@これに乗る

 行く宛てはないが、行けるところまで行き、往路で気になるものがあれば復路で途中下車することにしている(乗り降り自由のため)。
 出発後ぼんやりと外を見ていると、途中のチェントチェッレ(Centocelle)というところで止まってしまった。どうやら、この列車はここで折り返しのようである。
 すぐ目の前に車庫があったので、それらを適当に見る。

@何の車両?

 駅に戻り、市内に戻るべく車両に乗り込む。路線図が貼ってあったので見てみると、チェントチェッレ以降は消されているではないか。どうやら、ここから先は運行休止のようである。
 さて、往路での気になった場所であるが、市内を出発後すぐのポルタ・マジョーレ(Porta Maggiore)である。遺跡の下をトラムが通るだけでなく、漢字の「井」状に線路が複雑に交差しているのである。ということで、そこで降りてみることにした。

@言葉や写真では説明しにくいのですが

 ホテルに戻り、スーパーで買った食材で酔いどれて、就寝。

■2017.5.3
 さて、今日から本格的なイタリア鐡旅である。7時35分発のFRでナポリに向かうのであるが、ホテルは駅から徒歩5分かからない場所にあるため、急ぐ必要はない。
 ということで、朝から街中を散歩である。近くにあった公園(遺跡あり)に行ってみると、なんと猫だらけではないか(適当に数えても15匹以上)。別テーマで猫を探す旅もしているので、これは一石二鳥である。

@猫発見

 7時過ぎに駅に向かい、電光掲示板でホームが表示されるのをしばし待ってから当該番線へと向かった。
 先述した通りにこれから乗るのはFRであり、イタリアを代表する特急列車である。編成は8両であり、1〜3号車がビジネス(1等)、4号車がプレミアム、5〜8号車が2等である。残念ながら、最新型の車両ではない。

@本格的に鐡旅始動

 窓との相性は良い席であったが、残念ながら進行方向とは逆である。それよりも謎なのが、予約時に座席図を見ながら1人席(テーブルを中心に向かい合う席ではない)を選んだにも関わらず、向かい合いの席になっているところである(イタリア的な大雑把さであろうか)。
 同駅を定刻に出発。最初は低速であるが、10分も走ると専用線のようになって速度が増し、トンネルも多くなっていった。防音壁も多くなり、景色は遮られてしまう。
 しばらくして、1等乗客用に飲み物とお菓子、水が配付された。

@入れ物は大きいが中身は少ない(空の紙コップも入っているため)

 ナポリ到着予定は8時45分であるが、私の前に座っていた初老の男性は8時30分過ぎに立ち上がって別の車両に行ってしまった。ずいぶん気が早いなと思ったが、外の景色は家並みが多くて「いかにも着きそう」な感じである。結局、8時40分に到着してしまった。
 パレルモ行の出発まで1時間ほどあるので、駅付近を歩いてブランチ用のピザ(1枚たったの1ユーロ)を買ったりした。トラムの路盤も発見したが、どうやらもう廃線となっているようである。

@道路の一部になっている

 これから乗る9時50分発のパレルモ行(IC)は、実はローマを7時26分に出発してくる列車である。つまりあと少しローマ出発を早めれば1本の列車でパレルモまで行けたのであるが、当該列車には1等がないのと、同じ列車に12時間近くも乗り続けるのはほぼ修行状態になってしまうため、料金が高くなるのを覚悟で2本に分けたのである(レイルパスを持っていても、指定には3〜10ユーロのお金が必要)。
 9時30分頃、列車が入線してきた。

@鐡旅としては、高速列車よりこちらの方が良い

 編成を確認してみると、ネット検索ではヒットしなかった1等が連結されているではないか。考え得る理由としては、1.計画外に増結された、2.途中で切り離される、のいずれかである(結局、2であることが判明した)。7両の2等を含め、8両編成である。
 座席であるが、2人が並ぶ席を押さえていたはずであるが、4人ボックス席である(またしても違う)。しかし、進行方向・窓との相性は最高の席であるし、何より海側であるのが嬉しい。座席の位置は運任せであるが、今日のこの列車に関しては当たって欲しかった(時間の長さと景色の関係から)。
 定刻にドアが閉まり、1分後に出発。右手にはヴェスヴィオ火山が見えるはずだが、今日は雲を被ってしまっている。

@無念

 出発して1時間を過ぎた頃、やっと海が見え始めた。しかしすぐにまた見えなくなってしまう。けれども、それがアクセントになって丁度いいのかもしれない。

@天気も良くなってきた

 最初のうちは複線であったが、12時半頃にふと気が付くと単線になっていた(行き違いのために停車していたため気付く)。しかし1時間もすると、また複線になっていった。どうやら路盤が大規模に変更されたようで、高架状のこちらの路盤から、旧線と思わしき古い路盤が遠く下の方に見えている。
 海と陸が交互に見え、時折山深くなる。そういう地形で海に近づく際には、トンネルと橋が多用されるようになる。見ていて、飽きの来ない景色である。

@絶景

 シチリア島への連絡フェリーが見え始めて、14時15分にヴィラ・サン・ジョバンニに到着した。定刻からは10分遅れであるが、そもそもこの駅で20分の停車時間があるため、余裕はある。ということで、凝ってきた足をほぐすためにホームに降りてみた。

@自販機でジュースを買う

 さて、ここからどうやって船に入るかである(乗り換える必要はなく、今乗っているこの車両自体が船に乗り込む)。駅のホームとドックは鋭角になっているため、このまま前進してスイッチバックで入るような気がする。
 しばらくして出発すると、思った通りにスイッチバックをしながら船の中に移動していった。

@車内からの写真では分かりづらいですが

 しかし一旦入ったものの、すぐにバックをしてしまった。「入るべき所を間違えたのかな」と思ったが、実はそうではない。船長からして4両くらいしか収まらないため、「一旦入線」「半分のところで切り離してバック」「再度入線(違う場所に)」という手法なのである。
 貴重品を持ち、列車の外に出て甲板に上がった。

@船旅も経験できる

 大きな船であるが、元々乗客のそれほど多くない我々の列車だけを積み込んでいるため、船内は閑散としている。しばらくして出港。ナポリからパレルモまでは10時間の旅であるが、このように途中に船旅が挟まれるので、それほど長くは感じない。
 対岸に付き、構内用のミニ機関車に引かれて一旦船外に出て、再度バックをして残りと繋がり、それからメッシーナ駅へと移動していった。

@作業しているのは変な機関車

 ホームに入線したが、このまま出発するわけではない。まず1等を含む後ろ2両が切り離され(これにより私のいた車両が最後尾となった)、前半部分は機関車に引かれて構内を進み、隣りのホームへと移動することとなる。
 最後尾の部分では2人の作業員がドアを開けっぱなしで仕事をしているが、特に注意もされないので近くでそれを見続けた(注意されるどころか、写真や動画を撮影していると気を利かせて避けてくれる有様である)。

@怒られません

 一連の作業が終わり、定刻より4分遅れの16時09分にメッシーナを出発した。対岸に到着してから約2時間を要しているが、作業手順の効率化を図れば1時間は削減できそうである。が、それをしないのが国民性なのかもしれない。
 路盤はかなり新しくトンネルも多く、高速走行が続く(だからこそ、船前後でのタイムロスがもったいないが)。海が見える区間も多く、高台を走る部分からは旧い路盤が下の方に見えたりしている。

@最後尾故このような絵も

 定刻から10分遅れの19時15分、終着のパレルモ中央に到着した。まだまだ明るい時間帯であるため、歩いて行ける範囲で観光をする。欧州で旧い歴史のある都市は、このような手法でも色々と見ることができるのが嬉しい(普通の観光写真は余所様にお任せ)。
 スーパーでワイン等を買い、駅へと戻った。20時55分発のICNは、すでに入線している。

@今日のねぐら

 車内に入って宛がわれた席に行ってみると、またしてもネットで指定した内容と違うではないか(下段を選択したにも関わらず、上段になっている)。腑に落ちないが、今日はほぼ寝るだけであるから納得するしかない。
 欧州にありがちな簡易寝台(クシェット)であるが、枕とシーツは完備されている(水とおしぼりもある)。これらについては、予想外に良かった点である(他国のクシェットでは、日本の「ゴロンとシート」のように何も提供されないものもある)。

@上段になってしまいました

■2017.5.4
 5時半頃に起き、トイレで顔を洗ってからは廊下やデッキから外を眺め続けた(下段故の行動)。6時25分にサレルノ到着。時刻表によれば40分着42分発予定であるから、なかなか快調である。
 時間もたっぷりあるため、ホームに降りて運動を兼ねた散策である。

@先頭の機関車まで行ってみる

 出発時は2両のクシェットと2両の寝台(合計4両)であったが、気付くと8両に増えていた。昨日と逆のパターン(メッシーナでの連結)であろう。
 同駅を出発後、左手にヴェスヴィオ火山を見ながらナポリ市内へと入っていった。定刻に着きそうであったが直前になってしばらく停止してしまい、結局は定刻から5分遅れの7時23分にナポリ中央に到着した。
 ここで3時間半ほどあるため、プチ観光である。まずは3.5ユーロの一日切符を買い、地下鉄に乗り込んだ。
 ナポリの地下鉄駅は、その美術的装飾で有名である(詳細は別途参照してください)。数駅訪問したが、写真は一番有名なトレド駅を掲載したい。

@有名スポット

 続いての鐡ネタは、市内の高台に行くケーブルカーである(一日切符で乗車可能)。そこでアウグストゥス駅まで行ってみると、まさかの改修運休中ではないか。
 仕方ないのでモンテサント駅まで行き、こちらで往復することにした(本来は上記の駅から高台に行き、別路線でモンテサントまで降りてくる予定であった)。
 1本しか乗ることができなかったが、これはこれで充分である。

@生活路線です

 地下鉄で駅に戻り、昨日とは違う店でピザ(やはり1ユーロ)などを買ったりして、ローマ行のFRに乗るべくホームへと向かった。すでに入線していたので席に向かったが、やっとリクエスト通りの席(1人席)である。11時01分、定刻より1分遅れで出発した。
 車両は最新式であり、エグゼクティブ(飛行機のファーストクラスのような席)も含めて11両の編成である。車内の速度計は最速で298キロを表示したが、速ければ速くなるほど「旅行記のネタ」は見つけにくくなる(あっという間に過ぎてしまうので)。

@あちらは在来線の路盤?

 ローマ中央でしばらく停車し、次のローマ・ティブルティーナで下車した(12時25分着)。
 この駅で乗り換えたのはただ単にイタリア国鉄のウェブサイトでの検索結果に従っただけであるが、駅周辺にも内部にもこれといった施設はなく、大型スーパー等のある中央駅で乗り換えればよかったと思うが、後の祭りである。
 しばらくして、これから乗るべきヴェネツィア・サンタルチア行のFGが中央駅からやってきた。

@初FG

 その後は、やはり快走である(速過ぎて風景は叙述できず)。進行方向側だったのでラッキーと思っていたが、途中のフィレンツェでスイッチバックをしてしまった。しかし車内は空いていたので、そこから先は反対側の席に移ることにした。しかし、せっかく移ったのにフィレンツェから先はトンネルばかりであった。
 通常の路盤と高速の路盤(トンネル多し)を交互に繰り返し、大きな橋を渡り始めると「水の都」はもうすぐである。

@水上を走るかのよう

 16時40分、定刻から5分遅れでヴェネツィア・サンタルチアに到着した。イタリア国鉄は、適度に遅れるし、座席の指定も全然リクエスト通りではないが、大幅な遅れ等はこれまで経験していない(ほぼ合格点である)。
 駅から徒歩3分程度のホテルに荷を置き、これからは街歩きである。当初は違う旅程を考えていたのであるが、「初めてのイタリアなのにヴェネツィアに行かないのはちょっと…」と思い直し、旅程を変更した次第である(安く泊まるのであれば、他の都市の方がホテル代はかなり安い)。
 ということで、2時間ほど待ち歩き+コープで買い物をした。

@おのぼりさん(残念ながら小雨がちらほら)

 コープの安ビールとハムやサラダで酔っ払ってから、就寝。

■2017.5.5
 6時12分の列車に乗るべく、5時45分にはホテルを出た。料金に含まれている朝食は頂けないが、チェックイン時に出発時刻を伝えると「簡易朝食」をチェックアウト時に持たせてくれた。
 さて、これから乗るのは初めての快速列車(RV)である。これまでは旅程に余裕を持たせていたが、今日の1本目だけは遅れてしまうとかなり困ってしまう(乗り継ぎ時間が11分しかなく、乗り遅れると目的地に辿り着かない)ため、祈るような気持ちである。

@5両編成(もちろん全部自由席)

 定刻に出発。快速ということもあるが、なかなかの快走である。乗車時は(朝早いということもあり)乗客はまばらであったが、通学する学生っぽい人たちで徐々に混み始めていった。
 途中駅で特急に追い抜かれたりして、列車は6分遅れとなった。さらに、乗換駅であるヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァの手前で列車が停止してしまった。本来ならば大焦りとなるはずだが、ここ数日のイタリアでの経験に基づけば、まだまだ大丈夫である。
 というのも、大きな駅(ターミナル等)に近づくと、入線するホームを選んだりするためにしばらく(場合によってはかなり)停止することが多く、到着時刻にはそれが織り込み済みなのである。よって、入線がスムーズな場合は、初日のFRのように5分も早着することがある。
 確信はないがそう思っていると、これだけ停車した割にヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ到着は定刻からたった1分遅れの7時40分であった。ということで、余裕をもって7時50分発のブレンネロ・ブレンナー行に乗車する。

@乗り継ぎ成功

 今度の列車もRVであるが、車両によっては以前ICなどで使用されていたもの(乗降口が前後2か所のみ)も含まれている。なお、この路線に乗ることにしたのは、クック時刻表で山岳の景勝路線として掲載されていたからである。
 定刻から1分遅れの7時51分に出発し、しばらくするともう山が見え始めた。川沿いに進み、左手にはブドウ畑と岩のような山肌が見え、所々その奥には雪を被った高い山(アルプス山脈?)が見えている。

@どんどん山に

 8時35分に到着したロヴェレートで、かなりの乗客が下車した。その後は次第に山深くなっていき、9時半を過ぎる頃にはトンネルも多くなっていった。徐々にアルプス的な景色になっていき、9時56分にChiusa/Klausenに到着した。
 その後も、どんどんと山深くなって行った。山の高台には古いお城があったりして、いかにも欧州である。

@あれはアルプス?

 日陰の部分にはまだ解けていない雪がちらほらと残っているようになり、10時54分にブレンネロ・ブレンナーに到着した。ホームに降りると、とにかく寒い。念のため持ってきていた薄手の防寒着を羽織っていたが、それの前チャックを閉じた。

@国境付近

 駅の外に出て、路肩にある残雪を踏んだりしながら、とりあえずオーストリアとの国境まで行って少しだけ国境越えをした(検問も何もないので、実感は皆無だが)。その後は、到着前に何やら青空市が開催されていたのを発見していたので、駅の南側にあるその会場へ行ってみた。
 ほとんどは衣類が売られていたが、一部は食材(チーズやハム等)も扱われていた。あれこれ見ていると、超巨大なソーセージ(とパン)が売っている店があるではないか。ちょうど昼前であるし、文化的にはドイツ圏(ヴェローナを出発後は駅の表示などでもドイツ語が多くなっていた)であるので、さっそく買ってみることにする。お金を払った後のおばさんの言葉は、ドイツ語で「ダンケ」であった。

@美味しく頂きました

 12時14分発のユーロシティ(EC)に乗るべく駅に戻ると、すでに入線していた。この列車の始発はドイツのミュンヘンであり、先頭の機関車はオーストリア国鉄のものであった。とりあえず先頭に行って写真を撮るが、同じようなことをしている人がいて、明らかに日本人である。

@日本人が好きな角度?

 宛がわれたシートに行ってみると、リクエスト通り窓側であったが、なんとコンパートメントであった。それはそれで構わないが、旧い設計の車両であるためにとにかく座りにくい。
 同室の客はあと1人いたが、その人はすぐに降りてしまい、その後は1人占めとなった。しばらくして車掌が来たのでレイルパスを指定券を提示したが、車掌の最後の言葉は「ダンケ」であった(もうイタリアなのに)。

@コンパートメント(座席の設計は旧い)

 ブドウ畑の景色などをぼんやりと眺め続け、定刻から5分遅れの16時25分にボローニャ中央に到着した。ここでは1時間半ほど時間があるため、これまでと同様に徒歩観光である。
 駅に戻り、フィレンツェ行の列車を待っていると、向かいのホームに回送列車が入線してきた。その列車自体は普通なのだが、それらを牽引しているディーゼル機関車の特異なことときたら。車体自体は普通なのだが、車輪の部分にSLのような連結棒が付いているのである。

@足回りが変な動きをする

 17時53分発のFRに乗り、超高速で40分ほど快走してフィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラに到着した。駅近くのホテルにチェックインし、まずは徒歩観光である。EUの要人が来ているようで所々で警官が警備していたが、構わずあれこれ歩き回り、いつもと同様にスーパーで安食材を買ったりしてホテルに戻った。

@そろそろ普通の観光写真も

■2017.5.6
 今日は、4日間有効のレイルパスの有効期限最終日である。まずは7時10分発のルッカ行に乗るが、今回の旅程で初の各駅停車(R)である。目的地はピサであるが、幹線でまっすぐ行ったのではあっけないので、クック時刻表で景勝路線に入っていたこの路線経由で行くことにしたのである(結果論からすると、大した風景ではなかったが)。

@左側の落書きだらけの列車に乗る

 定刻に出発した際にはちらほらという感じの乗客数であったが、駅に停まるごとに増えていった。7時28分に到着した駅でかなり下車したがそれ以上の大勢が乗ってきて、乗車率は80%以上になった。学生が多いようであり、そのうち通路に立つ人もちらほらと見られるようになった。

@沿線でSL(放置状態)発見

 実は初日から気になっていたことがあり、それは「踏切がない」ということである。高速鉄道が走る路盤はもちろん、それ以外の市街地でも踏切が皆無なのである(安全対策上は、良いことであろう)。
 今日のこの路線に乗って、初めて1つの踏切を経験した(駅のすぐ隣りであったので、地下道などが作れなかったのかもしれない)。しかしそれにしても、その1つだけである。
 ルッカに到着し、短い乗り換え時間だったが駅前すぐに城壁があったのでそれを観光し、8時50分発の列車に乗り、20分ほどでピサ・サン・ロッローレに到着した。

@ピサの斜塔最寄駅

 この駅で降りたのは、当然斜塔に行くためである。地図は打ち出してきているが、社会科見学らしき高校生くらいの集団も下車したので、それに付いていくことにした。路地を曲がると、もうすぐそこに斜塔が見えているので簡単である。 
 ということで、おのぼりさん的観光をして、その足でピサ中央駅へと向かった。

@定番観光

 昼時であったので、つまらないおやじギャグのようで恐縮だがピサ駅でピザを食べていると、先ほどからパラついていた雨が本降りになってきてしまった。
 さて、これから乗るのは11時42分発のICである。電光掲示板では「5分遅れ」となっていたが、その表示が次第に10、15、20と増えていき、列車が入線してきて出発したのは結局25分遅れの12時07分であった。
 今回初めての本格的な遅れであるが、「2時間遅れた」「来なかった」みたいな記述が余所の旅行記ではあったりするので、それに比べればマシである。それに、車内の座席も今までで一番良く、私の席は窓との相性もばっちりで、しかも海側であった。初日のパレルモ行とこの列車だけは海側に座りたかったので、一安心である。

@こんな席

 すぐに海は見えないが、1時間少し走ったところで海が見え始めた。トンネル部分が多いが、旧路盤は今よりももっと崖よりに敷設されていた部分も多いようで、所々でそういう形跡(小さい旧いトンネルや廃線)が見えるところもあった。

@絶景(天気は残念)

 その後も海は見え続けていたのであるが、残念ながらいったん上がっていた雨が再度降り始めてしまった(時折雷の音も)。そうなると現代のデジカメの悲しいところで、オートフォーカスが窓にある雨粒に当たってしまい、外の撮影はもう不可能である。
 ということで、カメラはポケットに閉まったまま外を眺め続け、14時35分にジェノヴァ・ピアッツァ・プリンチペに到着した。トンネルとトンネルの合間にあるような駅である。
 1時間ほど徒歩観光をして駅に戻り、レイルパス4日目の最後の列車は、ミラノ行の地味なRVである。

@いつもと違った角度で

 15時46分に出発。ほとんど停車しない快速列車であったが、相変わらず雨が降っていたため、写真は撮ることができなかった。ミラノが近づくと低速になり、定刻から送れることたったの5分、横に30本くらいも線路がありそうなくらい巨大なミラノ中央に17時40に到着した。
 それにしても、駅舎自体も巨大な駅である。その荘厳さは写真1枚ではなかなか伝わらないと思うが、1葉だけ載せておく。

@実際に見てください

 駅から徒歩5分程度にある安宿に荷を置き、相変わらずのスーパー三昧で酔いどれて、就寝。

■2017.5.7
 さて、今日はミラノ観光をして空港に移動するだけであるが、鐡ネタもいくつか拾っているので紹介したい。
 1.ミラノ地下鉄
 1日切符は4.5ユーロであり、券売機でも買える。イタリアの地下鉄は治安が悪い(スリが多い)ことで有名だが、私もミラノ地下鉄で初めて出会った。貴重品は鞄の一番奥、ポケット(カメラ等の貴重品あり)には常時手を入れておく、という対策を取っていたが、地下鉄に乗る際、私の足元のズボン裏にレッグポーチ(貴重品入れ)が付いていると目を付けた犯人は、屈み込んで足元に手を入れて弄ってきた。そこで手を出して対応したら犯人の相棒にポケットを弄られる可能性があるため、必死にじっと抵抗したところ、ドアが閉まる直前にその男は観念して逃げて行った。

@やはり危険

 2.トラム
 上記の1日切符で、トラムも乗車可能である。ということで、大聖堂などを観光した後などに適当に乗ってみた。

@路線は非常に複雑

 3.ダ・ヴィンチ国立科学技術博物館
 ミラノに鉄道博物館というものはないが、この博物館一部は本格的な鉄道博物館と言えるくらいの代物である。SLや電気機関車や客車など、多くの展示物がある。

@鉄道以外の展示も多数あり

 4.マルペンサ・エクスプレス
 上記の観光を終え、空港へはマルペンサ・エクスプレスで向かった。事前にネットで予約決済しており、後は乗るだけだから簡単である。

@イタリア最後の鐡

 

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