韓国鉄道公社、さらに「落穂拾い」の旅

■はじめに
 韓国へはすでに3回訪問しており、鉄道に関してはほとんど乗車済みである(地下鉄などの都市鉄道は除く)が、まだ3路線ほど未乗のものがある。今回は、そのうち2つ(京春線と忠北線)に乗車してくる予定である。
 京春線については、私が初めて韓国を訪問した2010年春は、電鉄化工事で終着駅の春川から隣駅の南春川まで不通であったので、そもそも乗ることができなかったのである。その工事も2010年12月に終了し、やっと乗車ができるようになった。また2012年2月には、新型車両である「ITX-青春」の運行も始まっており、それも今回の鐡旅の目的の一つとなっている。

@龍?のデザイン(ITX-青春)

■2013.1.19
 私にとってお馴染みとなってきた「900円バス」で成田空港へ向かい、搭乗手続きをする。係員が「お連れ様は?」と確認してきたり、内線電話で私が来たことを余所に伝えたりしているので、「お、これはインボラ(無償アップグレード)だな」と直感した。その場では普通の搭乗券を渡されたが、ラウンジでカウンターに呼び出されてめでたくビジネスにアップグレードとなった。前回の英国からの帰りもプレミアム・エコノミーにしてもらっており、これで2回連続である。

@美味しく頂きました

 仁川空港到着は、予定より20分ほど早い12時10分頃であった。
 され、これからは当然ソウル市内に移動することとなる。空港連絡鉄道のA'REXについては、前々回の訪問記で記したようにその料金設定に無理があって直通列車の乗車率があまり良くない。当局もそれには気づいているようで、現在、直通列車の料金を通常の14,300ウォンから8,000ウォンに値引き中である。しかし、それでも各駅停車の倍近い値段であり、所要時刻は10分程度しか違わないのであるから、あまり食指は動かされない。
 私も各駅停車に乗るつもりであったが、入国手続きに時間を要してしまい(私の前方に中国人団体客がいたため)、時刻は12時55分になっている。直通列車が5分後に出るので、物は試しでこちらに乗ってみることにした。

@急いで切符を買って飛び乗る

 車内の乗車率はあまり良くなく、確実に10%以下(一1桁台)である。私の席が宛がわれた5号車には3人程度しかいなかった。席も回転せず、半分近くは進行方向と反対向きである。やはり、帰りは各駅で充分だと確信した。
 ソウル到着は、定刻より2分遅れの13時46分であった。東京駅と時期を同じくして改装していたソウル駅(日本統治時代の建物)を眺めてから、散歩代わりに明洞まで歩いて両替をし、乙支路入口から地下鉄に乗って龍山へと向かった。

@ソウル駅

 南大門市場や明洞でモタモタしていたため、龍山到着はITXが出発するわずか10分前であった。急いで乗り場を探して当該ホームへ向かったが、まだ入線はしていなかった。
 ITXは出発の7分前くらいに入線してきた。銀色と緑を主体にした色使いで、途中の2両は韓国初の2階建て車両である。

@龍山駅にて

 列車は8割ほどの乗車率で、定刻の15時00分に出発した。次の停車駅である清涼里までは、在来線のレールを走っているためかゆっくりとしたスピードである。清涼里で幾許かの乗客を乗せ、さて本腰を入れるかというとそうでもなく、その後もゆっくり(所々では徐行運転)であった。
 15時30分頃になり、やっと本気を出して走り始めた(遅れているわけではないから、この辺りまでは他の列車との兼ね合いでスピードを出せないのであろう)。ITXは「時速180キロ」というのが売りであるが、体感では何キロ出ているのかは不明である。
 終着駅の春川には、定刻の16時16分に到着した。歩いて20分ほどの市街地に向かい、市場をふらつき、興味もない(観たこともない)「冬のソナタ」の撮影地を見たりして、駅へと戻ってきた。

@商店街

 復路は、春川発17時10分発である。ITX-青春の停車駅は、龍山と春川以外は、清涼里と南春川にすべて停車し、それ以外は数パターンの停車駅になっている。これから乗る列車は、1日に1往復しかない「ノンストップ便」(南春川と清涼里しか停まらない)である。
 ちなみに韓国では、長距離列車は改札がなく、近郊列車や地下鉄は改札がある。このITX-青春は前者の部類であるが、近郊列車と同じ区間を走るため、さてどうやって改札を済ませるのかと思っていたのだが、ITX-青春専用の改札(自動改札が並んでいる横に、1か所だけ開きっぱなしの改札がある)を設けて対処していた。時折、ITX利用者ではなさそうな人がそそくさと抜けていたのを見たが、たぶんキセルであろう。

@誰でも通れてしまう

 列車は定刻に出発した。往路と同じ風景の中を走り、清涼里の手前辺りで日が暮れ、龍山到着は定刻より2分遅れの18時20分であった。
 地下鉄に乗り換え、ソウル宿泊時に愛用している安宿(ご飯とキムチ無料で15,000ウォン)に投宿した。

■2013.1.20
 6時半頃に宿を出て、地下鉄を乗り継いて清涼里駅に辿り着いた。7時20分を過ぎているが、まだ辺りは暗いままである。

@清涼里駅

 駅構内で時間を潰してから、7時40分頃にホームへと降りて行った。今日はまず、セマウル号で堤川まで行くことになっている。セマウル号といえば、フランスのTGVを模したような顔の先頭車両である。しかし、ホームで待っていたのはムグンファ号や貨物列車を牽引する電気機関車であった。ホームと間違えたかと思ったが、車両のサボ(行先表示板)は、セマウル号の安東行になっている。要するに、セマウル号用の車両を通常の機関車で牽引している、ということなのである。

@セマウル号?

 いまいち腑に落ちないが、座席自体が劣るわけではないので、その「なんちゃって」セマウル号に乗り込んだ。編成は4両のみである(通常のセマウル号編成では、短すぎるのかもしない)。
 列車は、定刻から2分遅れの7時52分に出発した。しばらくの間は、高速化(複線化)が済んだ路盤を快走していった。

@旧路盤(廃線跡)は、サイクリングロード等になっている(写真のように、車両を展示しているところも)

 8時30分頃、新しい路盤が右手に離れて行って、列車は旧い路盤(単線)へと降りて行った。スピードも遅くなり、ガタゴトといった懐かしい揺れとなる。そして8時50分、原州に到着した。
 その後は旧い路盤をゆっくりと走り続け、堤川には定刻の9時31分に到着した。ここを訪れるのは、1年半ぶりである。
 まだ朝早く、駅周辺は店が開いている雰囲気もない。乗り換えに時間があるので、前回訪問時に見つけた市場(駅から歩いて15分程度)まで行き、熱々のチヂミを買ってそれをつまみながら駅へと戻った。

@赤いのと野菜入りを1枚ずつ買いました(包丁で切ってくれる)

 次に乗るべき列車は、10時45分発の大田行である。出発の10分前に車内に入ったが、すでに7割程度の乗客で埋まっていた。車両は4両のみで、すべて普通席である。指定された席に座り、出発を待った。
 列車は定刻に出発し、街とも田舎ともいえない中を走り続けた。忠北線は、正直なところあまり派手さのない地味な路線である。早起き+満腹+刺激なしという条件が加わり、しばらくうたた寝をしてしまった。

@途中にあった清州“国際”空港駅(地味!)

 12時26分に鳥致院に到着し、京釜線と合流した。ここで忠北線は終わりだが、このまま乗り続けて大田まで行くことにしている。
 大田到着後は駅で観光スタンプを押し、駅付近の市場を適当に散策してから、次の目的地であるエキスポ科学公園へ向かった。その目的は、世界でも数少ない商用リニアモーターカーに乗るためである。ただし商用といっても、その距離は1キロ未満、頻度も1日に7往復だけというもので、「遊園地の乗り物」程度のものではある。

@駅近くの市場

 このリニアに関しては、1回の定員が44名だけというのが懸念事項となっている。ネット上で訪問記を色々探してみたが、午後に訪問しても最終便の切符しか取れなかったという記述もあり、多少の不安がある。
 エキスポ科学公園へはバスで行くのが最良であるのだが、路線系統を探すのが面倒だったこともあり、最寄り(といっても2キロ程あるが)の地下鉄駅から歩くことにしている。一応「最寄駅」である政府庁舎駅から歩くこと30分、大きな橋を超えると公園が見えてきた。
 すると、目の前を件のリニアが走っていくのが見えるではないか。時刻は14時25分頃、リニアの走行時間とは合致していないが、急いで障害物のない場所へ行ってその姿を撮影した。

@リニア走行中

 そのまま歩き続け、リニアの駅がある敷地内へと入っていった(入場料を払おうとしたが、ゲートが解放されていたのでそのまま入ってしまった。「オープンデイ」か何かであったのだろうか)。
 駅舎へと入ったが、残念ながら切符は売り切れであった(私の韓国語レベルは「いくらですか」「これください」程度であり、切符の有無を確認するほどは高くないため、結局は英語で対応してもらった)。係員は申し訳なさそうにしていたが、わざわざパンフレットを取りに行ってそれを私にくれた。

@乗れなかったので、展示している車両を撮影

 仕方がないので、隣接する施設(化石や科学的な展示物)を見学し、屋外展示の戦車などを見てからエキスポのメイン会場の方へ向かった。そちらでもイベントを開催していて賑わっていたが、奥の方へ行けばいくほど閑散としてきて、メインタワーのある辺りはかなり寂しい雰囲気であった。
 タワーの近くにリニア駅のもう片方があったので、それに入ってみた。駅構内には、リニアの歴史に関する展示がある。韓国語だけなので私には理解できないが、愛知万博の際に日本でリニアが走行した旨の展示があり、その説明にある写真が、なんとセントレアからの名鉄特急「ミュースカイ」になっているではないか。これは大きな間違いであるので、韓国語が堪能な方がここに訪問された場合には、誰か係員に教えてあげてほしいものである。

@根本的に違う(右上)

 さて、今日は儒城温泉に泊まることになっている。ただし、地下鉄駅まで戻るのも面白くない。地図を見たところ3キロほどであったので、川に沿って歩くことにした(リニアに乗れなかったので、時間も余っているという事情もある)。
 川の氷上で遊んでいる多数の人を眺めたりしながら、45分ほど歩いて温泉へと向かった。この温泉にはモーテルが多数あるという情報は得ていたが、すでに安いホテルはネットで予約してある。現地で宿探しはしたくなかったのと、大浴場のある宿に泊まりたかったためである(ホテルといっても、日本円で5千円もしない金額である)。
 チェックイン後、温泉街を歩いてみた。日本の温泉地のような雰囲気はなく、ビルが並んでいるだけである。足湯もあったが、観光バスでやってきた団体客で超満員であった。私はそれを見ただけで、コンビニで夜用の食材をあれこれかったホテルへ戻った。

@人多過ぎ

 温泉の質は、日本にあるような滑りや濁りのないものであったが、なにより大きな湯船に浸かることができたのが良かった。安食材を平らげ、あとは寝るだけである。

■2013.1.21
 6時過ぎに宿を出て、地下鉄の儒城温泉駅から大田へと向かった。今日の旅程はソウルへ戻るだけであるが、初物としては「KTXの特室」に乗るというものがある。
 まだ暗いホームに降り立ち、7時18分発の列車を待つ。列車は、2分ほど遅れて入線してきた。ギーという大きなブレーキ音で停まり、ドカンという大きな音を立ててドアが開くのはKTXならではである。宛がわれている7Aに座ったが、窓との相性は良好である(すぐ前の6Aは、ほとんど壁である)。概して、奇数の方が相性が良さそうである。

@特室(ソウル到着後)

 今日は残念ながら、雨模様である。走行中のKTX車内にも、なぜか雨音が響き渡り続けていた。「トタン屋根に雨」ほどではないにしても、かなり気になる音である。日本の新幹線では、このようなことはないであろう。
 ソウルには、8時26分に到着した。復路の飛行機は仁川発13時40分であるため、多少の観光が可能である。これまで何回もソウルに来ていながらまともな観光はしていないため、宗廟へ行ってみた。ちょうど日本語ガイドが始まるタイミングであり、雪の混じる雨の中、説明を聞きながら50分ほど観光をした。

@普通の観光も

 その後は、宗廟の南側にある怪しい電気街を歩いたりして、ソウルへ戻って買い物をしてから空港へと向かった。
 復路も、ビジネスへアップグレードしてもらえた。インボラはこれまで何回かあるが、往復どちらも、は初めてである。

@ご馳走様でした

 

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