【petit-tetu】オランダ鐡入門

■はじめに

 今回は、1週間にわたるベルギーへの出張である。個人旅行でも未踏の地であるため、ついでに小さな鐡ネタを拾ってくることにした。
 帰国日に出発まで多少の時間があるのはいつものパターンだが、今回は火曜日にも多少の時間がある。あれこれ考え、オランダまでのプチ日帰り旅行をすることにした。オランダも未踏の地であり、普通の人間であればロッテルダムやアムステルダムを目指すのであろうが、私が向かうのは当然のようにユトレヒトである(なぜならそこには鉄道博物館があるから)。

@鉄道博物館にて

■2016.5.31
 6時頃にホテルを出て、ブリュッセル南駅まで約2キロ強の道のりを歩いて行った。残念な曇り空であるが、昨日の大雨に比べればマシである(フランスのセーヌ川は氾濫し、ドイツ南部では洪水が発生して死者も出たとのこと)。
 駅に着いたが、シャッターが閉まっている。時間が早くてまだ開いていないという感じではないので、駅舎に沿って北の方に歩いて行くと入口が見つかった。テロのこともあり、機関銃を抱えた軍人2人がお迎えである。

@鐡なイラスト(シャッターは閉まっている)

 電光掲示板を見る限り、私が乗るべき6時52分の列車に遅れはないようである。
 しばらく時間があるのでコンコース内を歩いてみたが、エルジェ(漫画「タンタンの冒険」の作者)による大きな絵があったりするので、暇つぶしには最適であった。

@ベルギーの漫画といえば

 店で1ユーロのコーヒーを買い、乗り場へと向かった。私が乗るのはタリスという列車であり、国鉄ではない一企業によって運行されている高速鉄道である(株主はフランス国鉄とベルギー国鉄であるが)。ブリュッセル南駅での乗り場も他の路線とは別の場所にあり、専用の切符売り場もある。

@私はネットで事前購入済

 6時40分頃にホームに上がってみると、アムステルダム行のタリスはすでに入線していた。TGVの車両(前後に機関車がある)であり、客車の編成は、前から「2等車×4両」「バー(カフェ)×1両」「1等車×3両」の合計8両である。

@ちょっと古いタイプ

 予約の段階で窓側を押さえてあるが、車内に入ってみると、私の席の横は「ほとんど壁(窓なし)」であった。これは韓国のKTXでも経験があるが、TGV設計の良くない側面でもある。
 6時53分、定刻より1分遅れで出発した。しばらくするとトンネルに入って中央駅を過ぎ、トンネルから出て北駅を過ぎると少しずつ速度も速くなっていく。
 残念ながら写真撮影は難しい席であるが(後ろを振り向いて撮影することは、なんとか可能)、どうせ曇天なので(=きれいな写真は期待できないので)諦めはつく。

@こんな感じで撮影

 高速走行になってから、車掌が検札にやってきた。私の前に座っていた東洋人(英語の感じからするとおそらく中国人)のところで引っ掛かっているが、どうやら彼は普通の切符で乗ってしまったようである(車内でアップグレードしようとした模様)。車掌に「この高速鉄道は違う会社が経営している」と説明され、定額の切符を買わされていた。
 7時20分過ぎくらいから低速走行になり、7時34分にアントウェルペン中央に到着した(定刻より7分遅れ)。同駅を7時37分に出発。
 左側の窓側の席が空いたので、そこに移動して外を眺め続けた。幸い、晴れ模様になってきている。

@仕事中は雨でもいいが、お出かけはやはり晴れが良い

 8時13分、定刻より10分遅れでロッテルダム中央に到着した。8時20分のIC(インターシティ)に乗り継ぐ予定であったのでホームを移動すると、なんと運休である。アナログで掲示してある時刻表を見てみると、ユトレヒト方面は15分に1本くらいあるようなので、次の列車(8時35分発)が来るまで待つことにした。
 することがないので、駅構内をぶらぶらして様々な車両の写真を撮ったりして時間を潰した。

@時間を持て余す

 欧州の鉄道はたいてい空いているが(ストライキ時を除く)、1本運休となり、また8時35分発予定の列車自体が電光掲示板によると5分遅れているため、ホーム上は結構な乗客数である。
 ほどなくして列車がやって来た。日本の昭和時代の特急列車のような形であり、運転席が高い位置にある。混雑を恐れていたが、10両ほど連なっており、大混雑までにはならなかった。

@見覚えがあるような顔

 それなりには混雑していたが、一番端の車両まで急ぎ足で移動して乗り込んで、そこで窓側の席を見付けることができた。定刻から4分遅れの8時39分に出発。
 座席を見付けた時は「よし、進行方向側の席だ」と思ったが、列車はロッテルダム中央駅でスイッチバックをして、後ろ向きに走り出した。しかし、窓は大きいので、タリスに乗っていた時のようなストレスはない。

@外も良く見える。

 順調に快走し続けたが、ユトレヒトのすぐ手前で停まってしまい5分ほど動かなくなった。しばらくして動き出し、9時20分にユトレヒトに到着した。
 鉄道博物館の開館時間は10時であり、それまでは普通の観光である。到着が予定より20分ほど遅れてしまったが、有名な観光どころは駅から歩いてすぐであるため、とりあえずは「お上りさん」的な散策である。

@ドム教会

 日差しが暑いくらいであるが、背広なのでどうしょうもない(夕方以降に仕事があるため、背広で移動している)。観光を終えてからは歩いて鉄道博物館に向かい、10時ぴったりに入館した。お値段は16ユーロであり、意外に高い(その理由は入ってからわかる)。

@本館は以前の駅を改装したもの

 展示物に関しては、鉄道博物館としては定番の資料関係・車両等々がある。旧いSLから機関車、客車は当然のこと、ちょっと変わった目途に利用されていた特殊車など、様々である。

@その一例(かなり旧いコンパートメント車)

 屋外には転車台があり、その近くには開催時刻が掲示されている。おそらくこれを動かすデモンストレーションがあるのだろうが、残念ながら午後の開催であった(それまでここに残っている時間の余裕はない)。

@今日は止まっているのを見るだけ

 屋内では、車両を普通に展示しているだけではなく、旧い時代のテーマに沿った世界を再現して展示したものなど、かなり凝ったものもあった。
 展示をあれこれ見ているとアトラクション入口のような場所があり、職員のお姉さんが「こちらにどうぞ」と手招きしている。追加料金なしで入れるようなので、英語の音声ガイドを渡されてエレベータ(と称する部分)に入っていった。
 音声ガイドによれば「地下深くに行ってタイムスリップする」ということでガタガタ揺れて下から風が出ているが、実際はその場で留まっているだけである(日本でも、炭鉱関連の博物館でよくあるパターン)。降りてからは、ガイドに従ってあれこれ歴史に沿った展示物を見ていくのであるが、どれも結構凝っている(お金がかかっている)ようである。入場料が高いのは、これも一因であろう。

@再現された世界(手前は音声機)この先に車両等もあり

 ちょっと変わった世界を体験し、屋外に展示されている車両を見ていると、外にもまたアトラクションのようなものがあったので入ってみた。
 今度は英語ガイドがないため(オランダ語のみ)、テレビ画面の説明もまったく意味不明である。入ったのはちょっと失敗したかなと思ったが、最後の場面は架空の列車と映像を組み合わせたものであり、あたかも本当に走行しているかのように座席のシートが動いたり振動したりするもので、かなり完成度が高いものであった。この設備も、製作するのにかなり高額であったに違いない。平日の割には家族連れなどで賑わっていたが、納得である。

@写真では伝わりませんが

 1時間ほどの滞在で博物館を後にして、再度市内を観光をしながら駅へと戻った。11時47分発の列車に乗り込み、12時25分にロッテルダム中央に戻ってきた。
 運休のリスクを避けて予定より1本早い列車に乗ってきたため、30分ほど時間がある。駅舎の外に出てみると、巨大な即席の階段が作られており、それで隣接するビルの最上階まで行けるようになっていたので、とりあえずその階段を上ってみることにした。

@階段途中からの眺め(左下が中央駅)

 駅構内で昼用のパンを買い、アムステルダムからやって来た12時58分発のタリスに乗り込んだが、指定されていた席はまたしても「ほとんど壁」という窓との相性が最悪の席であった。しかも、進行方向とは逆向きの席である。
 仕方がないので我慢したが、13時31分に到着したアントウェルペンである程度の乗客が降り、明らかに空いている席もちらほら出始めた。同駅を出発後、そのうちの1つに移動した。

@やっと景色が普通に見える

 ブリュッセルに近づくにつれて雲が多くなり、朝と同じ曇天になっていった。ぴったり定刻の14時08分、ブリュッセル南に到着した。これにて、オランダの鐡旅は終了である。
 ベルギー国内での鐡旅は、土曜日まで「おあずけ」である。今日はまだ2時間ほど自由時間があるため、定番のお上りさん観光をすることにしている。

@定番の一部(王宮)

 

■ 鐡旅のメニューへ戻る

 「仮営業中」の表紙へ戻る

inserted by FC2 system