今のうちに「北斗星」と「はまなす」に乗っておく

■はじめに
 北海道新幹線が平成27年度末(「年度末」なので2016年3月)までに一部開業することとなり、それに伴う在来特急等の廃止が取り沙汰されている。そして一足先に、札幌-大阪間を走る寝台特急「トワイライトエクスプレス」の廃止が2014年5月末に発表された。廃止となるのは新幹線開業よりも前の2015年3月であり、発表から1年もないため寝台券の手配はほぼ不可能状態となり、ダフ屋まがいのネットオークションで高額で取引されるようにもなってしまった。
 こうなると、順番として次に廃止が発表されるのは、上野から札幌へ行く寝台特急「北斗星」と、JR最後の急行列車となってしまった青森から札幌へ行く「はまなす」であろう。まだ正式発表はされていないが、遅かれ早かれ廃止となるのは間違いないはずである(在来線の列車が廃止される可能性が高いことについては、「北海道新幹線」「青函トンネル」「機関車」「北斗星」「貨物」などでフリーワード検索をすると、様々な憶測や解説文書がヒットしますので、詳細はそちらでお願いします)。

 北斗星もはまなすも、私は乗車済みである。しかし、前者に関しては青森出張の際に復路で使用しただけであり(当時は夜中に青森に停車していたため、これが可能であった)、「北海道へ行き来するもの」という北斗星の大前提を満たしていない使用方法である。よって、せめて一度くらいは本来的意味を満たす乗り方をしてみたい。
 どうせなら豪華にロイヤル(1人用の寝台)で、と言いたいところであるが、トワイライトエクスプレスの飛び火(?)により、北斗星も個室寝台などは取り難くなってしまっている。また旅情としても「上野を出発して朝起きたら北海道に」との思いが強いが、下り列車自体指定券が取り辛くなってしまっている。
 結局、「なんでもいいから取れればいい」ということにしたが、それでもなかなか取れなかった(解放B寝台の上段ならあったが、それではあまりにも意味がない)。しかしとある日にJR北海道のネット予約で調べていたところ、前日までは皆無であった9月14日の札幌発の解放B寝台下段に空きが見つかったではないか。後先を考えず、その場で予約決済をした。
 さて、となると北海道へ渡る手段を考えなければならない。9月13日の午前中に大阪に移動してトワイライトで札幌へ、というのがベストであるが、先述したとおりにそれは不可能である。そこで、土曜日に青森まで移動して、はまなすに乗ることにした。
 この列車にはカーペットカーが連結されており、寝台に近い設備でありながら指定券だけで乗ることができる。以前乗車した際は、カーペットカーの二階席(ほぼ個室状態になるため人気が高い)を取ることができたのであるが、こちらにもトワイライトからの若干の飛び火があり、カーペットを取るのは難しくなっている。よって、普通の指定席を押さえておいた(実はここでの下調べ不足が、後に些細な悲劇をもたらすことになる)。
 最後の問題は、どうやって青森へ行くかである。安易な方法としては東北新幹線であるが、そもそも私は高速鉄道はあまり好きではないし、三連休の初日であるため安い切符もほとんどない。そこであれこれ検索してヒットしたのが、上野から青森までの昼行バスである「スカイ号」(弘南バス)である。最初に見つけた際には、「高速バスで11時間はなぁ…」と消極的であったが、さらに調べてみると、実は昼行バスとしては日本最長の路線であることを発見した(ちなみに、夜行バスの最長は首都圏から博多へ行くもの)。現金なもので、これを知って俄然乗る気が出てきたため、その場でネット予約と決済を行った。


@札幌駅にて

■2014.9.13
 今日は、ひたすら修行のように高速道路で北上するのみである。9時前に家を出て、京浜東北線で上野に向かい、駅から歩いて5分程度のところにあるバス乗り場へと向かった。乗務員がチェックしている座席表を覗き込むと、9割程度の座席は埋まっているようである。出発の3週間前に買った割には、私の席は5番(前から2列目の窓側)であり、車窓を見るには悪くないところである。

@修業の場

 バス停を定刻の10時00分に出発した。事前に調べた限りではこのバスには4回の休憩があり、最初の那須塩原SAではかなり長めの時間の昼食休憩を取るとのことである。しかし出発後のアナウンスによると、連休のため渋滞が発生しており、その影響で休憩は3回に減少、昼の休憩も佐野SAになるとのことであった。那須塩原SAの名物が何かを事前に調べておいたことが徒労になってしまったが、佐野SAでも何かしらあるであろう。
 晴れたり曇ったり雨が降ったりの目まぐるしい天気の中を走り続け、11時45分頃に佐野SAに到着した。ゆるキャラグランプリで有名になった「さのまる」のサイダーとポテトチップ、また佐野名物の「いもフライ」で簡単な昼食とする。

@2013年の優勝キャラ

 同SAを12時25分頃に出発し、その後は約3時間ごとに国見SA、紫波SAで15分程度の休憩を挟んで走り続けた(高速道路からの景色は、どうにも旅行記にし辛いため省略)。弘前バスターミナルには定刻から30分遅れの20時頃に到着したが、ここでほとんどの乗客が降りてしまい、青森に向かうのは私を含めて6人程度になってしまった。
 青森駅には21時07分に到着。駅西側にあるスーパーへ行き半額シールのある惣菜を買い漁り、駅西口の待合室で一杯やり始め、「はまなす」が入線し終わった21時50分頃にホームへと向かった。

@乗り納めでしょうか

 この列車にはB寝台も連結されているため最初はそれにすることも考えたが、8時間程度の乗車に寝台料金を払うのもばからしい。座席の夜行に乗るのは年齢的に厳しいが、この列車の指定席は「ドリームカー」というもので、席も大きくリクライニングの角度もあるため、朝まで過ごすのにも問題なさそうである。よって、指定席を押さえてある。
 そう思って宛がわれた車両へ行ってみると、なんと自由席と変わらないボロくて狭い席ではないか。しかも、リクライニングしても体重を掛けていないと元に戻ってしまうような年代物であり、私がこれに座るのは今から20年位前に急行「八甲田」に乗って以来である。

@まさかのボロ車両

 ドリームカーの指定席も連結されているが、今日はそれ以外の指定席が増やされているのである。実は出発前に、指定席にも「はずれ車両がある」という記事をネットで目にしていたのであるが、深追いせずに放置していたのが間違いであった。本来は3号車が自由席で、5・6号車がドリームカーなのであるが、私は指定席を買ったのにもかかわらず3号車だったのである。その時点で調べるか、もしくは5・6号車を指定して買うべきであったが、後の祭りである。
 嘆いても仕方ないので、テーブルすらない貧相な自席で夕飯と酒の残りを平らげ、幸い隣には人が来なかったので体を丸めて小さく横になって寝ることにした(かなり無理な体勢であるため、体の節々が痛くなってしまった)。

■2014.9.14
 アルコールの勢いで何とか寝入ったが、体の痛みで何度も目を覚ましつつ、5時過ぎに起床した。幸いにも天気は晴れである。札幌到着は定刻の6時07分であった。

@お疲れさま

 北斗星の出発は17時過ぎであるため、時間はあり余っている。北海道は数えきれないくらい旅行と仕事で訪問しているため、どこへ行くべきかあれこれ悩んだが、とりあえず余市方面へ行くことにしている。
 まずはいったん改札を出て、ネット予約済みである北斗星の切符を発券してもらった。その際に「ないとは思いますが、ロイヤルかソロのキャンセル出ていませんかね?」と言って確かめてもらったが、当然そんなものはあるはずもない。
 6時51分の列車に乗り、小樽方面へ向かった。このまま乗り続けても小樽で中途半端な時間が出来てしまうため、途中下車をして変化を付けることも可能である(いつもは短距離切符であったためそういうことは出来なかったが、今日は青森から余市行の長距離切符を持っている)。銭函にするか朝里にするか悩んだが、その場の勢いで朝里で降りてみることにした。

@朝里駅付近より(少し雲が出てきた)

 ほんの15分ほどの滞在で次にやって来た小樽行に乗り、小樽駅で1両だけの長万部行に乗り換えて、余市には8時31分に到着した。
 仕事の関係で何度も来たことがある街であるため、近場の観光要素(ニッカウヰスキーなど)はすでに訪問済みである。そこであれこれ調べて、駅から3キロほど離れた場所に評判の良い燻製の店があるとのことだったので、路線バスを使ってそこへ行って今晩のツマミ(カニ)と自分用のお土産(サンマ)などを買ったりした。天気も良く時間も有り余っているため、復路は散歩も兼ねて駅まで歩いて戻った。

@帰り道で見つけた鐡ネタ

 駅近くまで戻ってきたのが10時過ぎで、11時50分発の列車までまだまだ時間がある。そこで、駅近くにある人気の飲食店へ行ってみることにした。7〜8年前には、よくうに丼を食べるために来たことがある店である。そのころと比べれば少し高くなっており、昨今のネット上でのグルメサイトの発展などによって噂が広まって行列が絶えないらしいが、開店直後なら大丈夫であろう。
 と思って行ってみると、すでに行列であった(ただし、昼前に行ってみるとその3倍くらいの行列であったので、まだマシな方であった)。何にするか決めていなかったが、「9月13日より新物いくらになります」との掲示があったので、迷わずいくら丼にしてみた。粒は小さ目であったが、これで950円(+酢飯代50円)なら納得である。

@宝石箱や〜

 いくら丼を平らげた後は、近くの道の駅に併設されている「余市宇宙記念館」へ。というのも、今日は「毛利記念日特別開館」ということで、入場無料なのであった。
 その後は、道の駅で地物の野菜を買ったり、先ほどの飲食店の1階で夜用の惣菜を買ったりしてから、駅へ向かって件の列車に乗り、12時19分に小樽に戻ってきた。
 さて、それでもまだ時間がある。ということで、手宮線の廃線跡を歩き、小樽市総合博物館へ向かった。ここには以前来たことがあり、その頃は「小樽交通記念館」という名称であった。運営形態が変わったからといって展示物が大幅に変わるわけではないが、時間つぶしにはちょうど良い施設である。
 入場してみると、幸いにもSLが運転される日であった(夏季限定の模様)。子ども向けのイベントではあるが、大人気もなく乗車しておく。

@転車台で方向転換中

 展示物や乗車体験を堪能した後は、博物館から歩いて10分弱のところにある日帰り温泉施設へと向かった。温泉に来たのは、もちろん2日連続の夜行列車であるためでもあるが、実はこの温泉施設にはいくつかの送迎バスがあり、そして14時半出発は札幌市内まで連れて行ってくれるのである。入浴料は650円であり銭湯と思えば少し高いかもしれないが、札幌までの交通費を考えると逆に安いくらいである。
 温泉に浸かり、その送迎バスに1時間半ほど揺られて札幌市内の円山公園まで移動し、地下鉄で札幌駅へと戻ってきた。
 駅のコンビニで大量の発泡酒と弁当を買い、ホームへと向かった。

@やっと本題へ

 私の車両は最後尾の11号車であるため、先頭側で待って入線したら機関車の写真を撮って、それから最後尾に向かうつもりで待っていたが、なかなか入線してこない。結局、出発までほとんど時間がない17時05分になって、重連のディーゼル機関車に牽かれた北斗星が入線してきた。

@急いで撮影

 最後尾にも行って撮影をして、自分のベッドに荷物を置いた頃には定刻(17時12分)となり、列車はゆっくりと出発していった。
 さて、今回の旅行は北斗星に乗ること自体が最大の目的であったが、いざ発車してしまえば沿線風景自体は見慣れたものである。昨晩のボロ車両のおかげで寝不足でもあるため、出発草々に一杯やり始めることにした。まずは、余市で買ってきた燻製のカニを相手に一勝負である。

@30分一本勝負

 カニを徹底的に分解してからは、余市で買った惣菜で呑み続け、19時前にはカーテンを閉めて寝入ってしまった。

■2014.9.15
 早く寝入ったから早く目が覚めてしまうかと思っていたが、気付くともう5時過ぎであった。軽く顔を洗ってから、ロビーカーへ行ってみた。

@さすがにこの時間帯は平和である

 列車は福島県内を走っており、この辺りも見慣れた風景ではあるが、寝台列車のロビーカーから眺めるとなるとまた違った印象になってくる。幸い晴れており、素晴らしい朝日も山影から拝むことができた。

@ご来光

 次第に沿線の人家が多くなり、5時57分に福島に到着した。
 平和であったロビーカー内であるが、6時頃から次第に人が増えていった。しかし彼らの目的はロビーではなく、食堂車(グランシャリオ)での朝食の利用なのである。営業開始は6時30分であるため、30分も前から並んでいるのである。
 私は昨晩に食堂車を利用しなかったため(そもそも御一人様で夕食のフランス料理は空しい)、朝くらいは利用してみようかとも思っていたが、行列を見てその気も萎えてしまった。満席+相席してまで、記念に利用しようとも思わない。

@縁がなかったグランシャリオ(早朝に撮影)

 結局、9時過ぎまでロビーカーに居座り、上野到着の直前に自室に戻って荷物を纏め、定刻の9時38分に上野駅13番線ホームに降り立った。呆気ないと言えば、それまでである。
 今回は「念のため」の乗車であったが、もし年末辺りに廃止が正式に発表でもされたら、その後は解放B寝台ですら取れなくなる可能性が高いであろう。ただし、万が一もう少し生き長らえることがあれば、そして個室寝台でも取ることができれば、そして上野発で北海道に向かうことができるのであれば、あと1回くらいは乗ってみたい気がするのも正直なところである。

@お疲れさま

 

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