祝・北陸新幹線開業(というのは、ただの口実)

■はじめに
 2015年3月14日、誰もがご存じのとおり、北陸新幹線の開業日である。しかし正直なところ、私はお祭り事があまり好きではないし、そもそも高速鉄道もそれほど好きではないので(東北新幹線の八戸−新青森間など、開業後4年も乗らずに放置していたくらい)、乗りに行くつもりはなかった。
 しかし、部分開業を繰り返して延伸をしてきた東北新幹線や九州新幹線と違って、今回の北陸新幹線は久々の本格的な長距離での開業である。北陸地方は以前の部署での仕事や個人的旅行でで飽きるほど訪問しているが、鐡ネタもちらほらあるため、開業にかこつけて出かけてみることにした。
 しかし行くにしても、北陸新幹線の始発列車(1番列車)の切符などは争奪戦となるため、入手はまず不可能である。よって、旅程はあれこれ考えなければならない。

@糸魚川駅にて

■2015.3.14
 というわけで、やって来たのは羽田空港である。北陸新幹線でも2番列車以降なら切符を買うことができたが、そもそも長野まではこれまで何度も乗車した区間である。よって、裏ワザで(というほどでもないが)、富山空港まで飛ぶことにした。
 何より、北陸新幹線開業に合わせて航空会社が北陸方面への航路を割引販売しており、ほぼ1万円で買うことができるのである(さらに今回は、航空会社のポイントマネーを使用して4千円引きである)。そして一番のポイントは、時刻通りに飛んでくれれば、東京発の1番列車である「かがやき501号」が到着するよりも前に富山駅に着き、「お出迎え」をすることができるのである。

@ラッピングされた機体

 羽田から富山までの実質的な飛行時間は、47分であった。さすがに速いが、思い立ってすぐに自由席に飛び乗れるという新幹線の利便性を考えると、航空各社はこれから厳しい戦いを強いられるかもしれない。
 連絡バスで富山空港から富山駅に向かい、到着したのは8時15分頃であった。目論み通り、1番列車の到着時刻(8時27分)よりも前である。駅前では、すでに号外が配布されていた。

@号外

 駅構内は、イベントの準備をする人や報道陣、その他の関係者でごった返していた。8時27分を過ぎ、1番列車から下車してきた乗客がちらほら現れると、一部の人は捕まってテレビのインタビューを受けたりしている。やはりほとんどの乗客は金沢まで行くようで、降りてくる乗客の数はあまり多くはなかった。

@到着直前(準備中)

 あれこれ撮影をしたりしてから改札前を通り過ぎると、「ようこそ富山へ」と言われて歓迎品一式(ミネラルウォーターやお米、パンフレットなど)を渡されてしまった。私は飛行機組なのでもらう資格はないが、今日の午後の新幹線の切符は一応持っているので、これはこれでありがたく頂いておくことにした。
 さて、喧噪の富山駅を一時離れて、まずは鐡ネタ第一弾として「富山ライトレール」への乗車である。以前一度だけ乗車したことがあるが、その頃は「JR富山港線」の時代であり、ライトレールに変身してからは未乗車であった。

@経路が変更された途中までは初乗車となる

 8時45分発のライトレールに乗り、初乗車となる市街地区間を抜け、旧富山港線区間に入ってからは快速走行である。終着の岩瀬浜には約25分で到着した。
 以前来た時はすぐに折り返してしまったが、今日は時刻的に余裕もあるため、運河や旧い街並みをあれこれ適当に歩き回った。かなり南下したため岩瀬浜に戻るのも面倒であるため、東岩瀬駅へと向かったが、ライトレールの駅の横にJR時代の旧い駅舎が残っているではないか(旧富山港線のうち、駅舎が残っているのはここだけとのこと)。東岩瀬駅は、宮脇俊三氏の愛読者であれば「あの駅か」と頷くところである。

@国鉄の雰囲気

 ライトレールに乗って富山に戻ってきたが、だんだんと観光客も増えてきており、駅ビル内も大混雑であった。
 さて、富山と言えば「白えび」が有名である。富山駅には白えびを提供する店があり、かなり昔(確実に10年以上前)に利用したことがある。まだ10時過ぎであるが、昼近くになったら大混雑確実であるので、早めの昼食を頂くことにした。

@美味

 続いての鐡ネタは、路面電車である。新幹線開業を記念した無料乗車券(2回分)を駅前で配布していたので、それを使ってアテもなく総曲輪(そうがわ)や城跡付近まで行ってみた。

@あえて古い車両に乗る

 三度富山駅へ戻ってきたが、それにしてもすごい人出である。新幹線が到着する度に観光客が増え、報道陣も相変わらずであり、よくわからないゆるキャラも多数駆り出されている。
 さて、次の鐡ネタは、新幹線開業によりJRから切り離されて第三セクターとして業務を開始することになった路線である。この手の第三セクターは、旧路線の形態に関係なく地元自治体(道府県)によって営業されるため、今回は「えちごトキめき鉄道」(新潟県)「あいの風とやま鉄道」(富山県)「IRいしかわ鉄道」(石川県)と三分割される(すでに存在している「しなの鉄道」も、路線の一部を引き継ぐ)。まずはそのうちの「あいの風とやま鉄道」に乗車して、高岡へ行く。
 高岡からはJR氷見線に乗り換えて伏木まで行くのであるが、料金体系を見ると「乗継割引」が適用されているようであり、これは親切なことである。

@比較的新しい車両

 11時44分に富山を出発。路線自体は、これまで何度も乗車してきた「北陸本線」であるため、珍しくはない。高岡到着後、すぐに氷見線に乗り換えた。
 伏木に行くのは、久々に万葉線に乗るためである。ただし、万葉線に往復乗車したのでは時間がかかり過ぎるため、途中まで乗ることにして、そして往路はJRにして若干の変化を付けてみた次第である。
 高岡から15分ほどで伏木に到着した。案内表示にロシア語が目立つが、これは2009年まで伏木港からロシア(ウラジオストク)への定期航路があったためである。

@ロシア語表記

 伏木駅を後にし、万葉線がある川の対岸へと渡った。20分ほどで中伏木駅付近までやってきたが、タッチの差で高岡方面行の列車が行ってしまったため、歩いてもう一駅先(六渡寺駅)まで行ってみることにした。
 伏木港付近の廃線跡の写真を撮ったりしながら歩いて行ったが、どうにも駅らしきものが見当たらない。グーグルマップを印刷したのを持っていたのでなんとか辿り着いたが、それがなければ見つけるのは至難の業である。

@やっと案内を発見(駅自体は見えない…)

 迷ったこともあり、駅到着後1分で列車がやって来た。意外にも、新型車両である。どうせならボロい方に乗りたかったが、旧い路面電車タイプはロングシートであるため、外を眺めるにはこちらの方が都合が良い。今日は土日ということもあり、車内放送は落語家の立川志の輔によるものである。

@新型車両

 終点までは行かず、少し手前の坂下町で下車。高岡大仏を瞥見しただけで、急いで高岡駅まで歩いて行った。
 13時35分の金沢行に乗り込んだが、車内はすでに立席客でいっぱいである。駅に停まるごとに乗客は増え、金沢到着時は超満員であった。
 もう午後であるため金沢駅もある程度落ち着いているかと思ったが、とてつもない喧噪であった(これに比べれば、富山の混雑などまだ可愛いレベルである)。

@おのぼりさん的に撮影

 駅近辺を適当に歩いたり、イベント(伝統舞踊や演奏など)をあれこれ見たりしてから、15時少し前に新幹線ホームへと向かった。ホームの端は、撮影目的の人で鈴生りである(1番列車ならともかく、もうこの時間帯ではどれを撮っても同じだろうとは思うが、色々と理由があるのであろう)。
 斯く言う私も、初めての新幹線金沢駅ということなので、ホームの端まで行ってこれから乗車する「はくたか570号」の写真を収めた。

@祝・開業

 朝に配られていた号外にも「2分遅れで出発」と書いてあったが、やはり開業に関連して少しバタバタしているようで、はくたか570号も定刻から2分遅れの15時14分に出発した。
 さて、このままこの列車に乗り続けたのでは夕刻に東京に着いてしまい、単なる日帰り旅行となってしまう。よって、糸魚川で下車して、日本海の幸を民宿で堪能することにしている。
 あっという間に新高岡に到着し、続いて富山である。さすがに新幹線である。
 各駅では、歓迎の幟などを掲げている関係者、また入場券で入って「新幹線を見に来た」だけの地元の人などが、こちらに向かって手を振っている。
 左手に海が見え始めると、もう糸魚川である。ここまで約50分。この区間を各駅停車で何度も往来したことがある身にしてみると、「糸魚川までたったの50分」というのは、もう信じられないレベルである。

@歓迎を受ける(こういう写真は、モザイク不要であろう)

 糸魚川で降りたのはほんの数人であったが、それでもコンコースでは歓迎の踊りやゆるキャラが待ち構えていた。
 民宿へ行くためには、これまた第三セクターとなった「えちごトキめき鉄道」で戻る必要があるが、新幹線との接続が悪くて1時間近く待たなければならない。時間潰しで駅前に出てみると、なんだかイベントの最中である。どうやら乾杯の人数でギネス記録を狙うとかで、歌手の小林幸子さんが舞台上にいた。
 それを傍観してから駅の南側へ行ってみると、こちらも改装されており、なんと旧国鉄車両(キハ52)が綺麗に塗装し直されて展示されているではないか。この車両には、何度もお世話になったものである。

@懐かしい

 駅へと戻り、16時57分発の泊行に乗り込んだ。最新の車両であるが、ディーゼルカーである(電化区間なのに)。維持費用など、何かしら理由があるのだろうか。
 親不知で下車し、近くにある予約済みの民宿へ。土曜だというのに、宿泊客は私1人だけだという。新幹線効果も、この辺りまでには及んでいないようである。

@親不知到着時

 魚尽くしで酔いどれてから、就寝。

■2015.3.15
 宿を出てから親不知の荒々しい海岸を少しだけ散歩し、親不知駅へ向かった。8時05分の列車に乗り、糸魚川着は8時17分。今日も乗継が悪くて1時間弱の待ち時間があるが、海岸まで行ったり駅近くの旧い街並みを歩いたりしているうちに、あっという間に時間は過ぎていった。
 9時10分発の「はくたか556」号に乗り、長野へ。乗車時間はたったの37分だけであり、本当にあっけないくらいである。

@糸魚川出発前

 さて、今回の旅の本来の目的はここで終了である。ここから先は、坂東三十三箇所のお礼参りをすることにしている。
 一昨年と昨年にかけて坂東三十三箇所を「結願」したが、四国お遍路を結願した人が高野山にお礼参りに行くように、坂東を結願した人は長野の善光寺と別所の北向観音にお礼参りするようなのである(必須ではないが)。せっかく長野県に来たので、この両寺に参ることにしている。
 まずは、善光寺である。7年に1度の御開帳は残念ながらもう少し先であるが、そそくさとお参りして御朱印を頂戴した。

@天気よし

 長野駅へと戻り、続いては上田に向かうこととなる。
 長野というと蕎麦が有名であり、それ以外には「おやき」などもあるが、私がこの近辺(上田近辺)に来た際には「おしぼりうどん(そば)」を食べるのを楽しみにしている(詳細については、ネットで調べてください)。今朝は民宿の朝食をたくさん頂いたのでお腹は減っていないが、せっかくなので昼食としてそれを食べることにした。
 上田行の列車に乗り、「テクノさかき」で下車。以前も利用したことがある地場産野菜などの販売所(飲食店も兼ねている)へ行き、「おしぼりうどん」を注文した。

@汁まで飲み干すと、食後は汗が止まらない…

 土産用に「ねずみ大根」(上記うどんの汁の原材料)も買い求めてから、駅へと戻った。12時44分の列車で上田に向かい、13時21分の上田電鉄で別所温泉へと向かった。
 上田電鉄別所温泉駅――ここに来るのは3〜4回目くらいだが、相変わらず風格があって味わいのある駅舎である。

@壮観

 まずは北向観音へ行き、納経をしてもらう(これにて、旅のサブミッションも終了)。その後は温泉街を適当に散策して他の寺院に行ったり、また共同浴場(たったの150円)に行って湯に浸かったりした。
 後は、東京へ戻るだけである。上田まで戻って新幹線に乗れば早いが、経費節約のため、15時40分に別所温泉を出発する池袋行の高速バスをすでに予約・決済してある。旅の始まりは飛行機、そして締めがバスになってしまったが、やはり「安さ」も捨てがたい要素なのである。

@風呂上りといえば、これ

 

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