祝・復活常磐線(その他の路線も)

■はじめに
 福島第一原子力発電所事故の影響で長らく普通区間があった常磐線であるが、最後まで残っていた富岡−浪江間がついに9年ぶりに再開することとなった。それに合わせて、特急「ひたち」が50%引きになる切符(トク50)も発売されるという。時期的に「青春18きっぷ」も使用できるが、せっかくなのでその切符も使って訪問することにした。
 さすがに東京から仙台までの通しで乗れるひたち号の切符は発売直後に売り切れてしまったため、途中のいわきから仙台までを購入。三連休でもあるため、その他の路線(東日本大震災や台風によって不通となり、その後再開した路線や、代行バスが未だに走っている路線)にも乗ってくることにした。
【訪問路線】※ただし、初日の旅程変更により仙石線と石巻線は除外することに
・磐越東線(2019年10月の台風で一時不通。2019年11月に再開)
・常磐線(2011年3月の震災で一時不通。2020年3月に再開)
・仙石線(2011年3月の震災で一時不通。2015年5月に再開)
・石巻線(2011年3月の震災で一時不通。2015年3月に再開)
・水郡線(2019年10月の台風で一時不通。常陸大子−西金間は未だ代行バス)

@浪江駅にて

■2020.3.20
 まずは磐越東線に乗るため、郡山へ向かう。新幹線ならあっという間であるが、吝嗇癖を出して青春18きっぷの利用である。車窓は平凡であり、しかもロングシートばかりなので、スマホやPCと「お友達」である。
 9時32分、やっと新白河に到着した(家を出たのは5時過ぎ)。ここで30分弱の時間があるためコンコースに出てみると、なんと強風の影響で新幹線が大幅に遅れているというではないか。在来線も影響があり、9時59分発の郡山行は10分ほど遅れるという。その程度ならどうでもいいが、嫌な予感がしてJR東日本の運行情報を見てみると、今日の午後に乗る予定であった「ひたち13号」が区間運休(まさに私が乗る予定のいわき−仙台間)になっているではないか。

@これの再現はできず(新白河駅にて)

 しかし、そこは臨機応変に対応するのが「旅慣れた者」の腕の見せ所である。まず、磐越東線と常磐線の乗車は明日にする(宿泊地の仙台から、いわきと郡山を経由して次の宿泊地である常陸大子に向かう)。今日はこのまま仙台まで行ってしまい、そのまま石巻まで往復する(時間の都合上、女川に行くのは諦める)。これで、ほぼほぼ計画は遂行できそうである。
 新白河を10時10分頃に出発し、徐行を繰り返して郡山に到着し、まずは切符の払い戻しである(結果論からすると、明日は青春18きっぷで常磐線に乗れるため、旅費は浮いたことになる)。

@さようなら

 さて、本来の旅程ならここから磐越東線に乗る予定であったが、北上することとなった。いずれにしても今日はここで駅弁を買うことになっていたので、それは予定通りに購入。車内でいただく予定であったが、待合室に変更である。
 ちなみに、買った駅弁は「のりべん」である。地味な名前(と内容)であるが、昨今やたらと有名になってきているものである。

@美味しく頂きました

 折り返しの列車が遅れたため、11時39分発の福島行は数分遅れて出発した。途中、強風のため徐行運転をしたりして、福島には12時45分頃到着。
 さて、ここから先が問題である。乗車中に運行情報を調べていたところ、東北本線の白石以北(一ノ関まで)は強風のため運休であるという。となると、奥の手は「奥羽本線と仙山線」を経由して今日の宿泊地である仙台へ向かう、という手法である。
 「奥の手」というほどでもなく、同じ考えの人も多くいたようで、2両編成の米沢行は立つ人もたくさんいるくらいであった。

@予定変更その1

 こちらは風に影響されず、定刻の12時51分に出発した。このルートを経由することにより、石巻へ行くことも諦めることとなったが、板谷越も走れるし、仙山線に乗るのも久々なので、これでいいとしよう。
 米沢に定刻に到着し、すぐの乗り換えで山形行へ。徐行運転もあり、山形には14時40分過ぎに到着した。スーパーや駅構内の店で山形っぽい食材を買いそろえ、15時59分の快速列車で仙台に向かった。

@予定変更その2

 強風の影響もあまりなく、仙台到着は定刻から2分遅れの17時15分であった。遅すぎもせず早すぎでもない、絶妙な時間である(本来の旅程では、17時26分に特急で仙台に到着する予定であった)。今回の旅の本来の目的(再開路線の訪問)は何一つ果たせていないが、それは明日に持ち越しである。
 駅から歩いて数分のところにあるホテルへ。コロナの影響でダンピングセール中であり、改装直後で朝食も付いているちゃんとしたホテルなのに、たったの3,700円である。
 山形食材で一献してから、就寝。

@東北の味

■2020.3.21
 さて、やっと本題である。7時頃にチェックアウトして仙台駅に向かい、7時19分発の原ノ町行に乗り込んだ。仙台始発ではない列車であったが、無事にボックス席を確保。
 のんびりと景色を見続け、8時38分に原ノ町に到着した。ここで40分弱の時間があるため、適当に駅前付近を歩いたりした。

@祝賀ムード(駅構内の待合室はひな祭りだらけ)

 続いて乗車するのは、9時17分発のいわき行である。折り返しの列車が入線してきたが、5両編成であり、そのうち3両がボックスシート有りの車両であった。いそいそと乗り込んだが、各ボックスに1〜2人、各ロングシートに2〜3人が乗っている程度の乗車率である。

@常磐線

 定刻に出発。各駅に停まって行き、9時37分に浪江を出発した。ここからが9年ぶりに開通した区間である。
 沿線は「帰還困難区域」である部分も多く、震災後廃れたままになっている家屋も多い。
 9時45分、大野に到着した。当初予定(「ひたち」利用)から変更となり「青春18きっぷ」利用となったため、ここで途中下車することを決めていたのである。その理由は、やはり福島第一原子力発電所から一番近い駅だから、というのもある。

@天気は良い

 鉄道が開通したからといって、住民が戻ってきたわけではない。立ち入りが許可されたのは駅周辺とアクセス道路だけであり、駅東口を出てみたが、新設されたロータリーのすぐ先はバリケード(進入禁止)である。
 駅西側も、ほぼ同様である(アクセス道路があり、そこだけは歩行可能)。駅前のホテルは、実は事故前に仕事で使ったことがあり、懐かしいが寂しい限りである。

@駅西口の繁華街跡

 さて、次のいわき行まで2時間以上もあるため、逆方向の列車で少し戻ることにしている。
 10時18分の下り列車に乗り込む。次の駅は双葉であるが、ここで降りても暇つぶしができないため、浪江まで戻ってきた。ここなら、自由に歩ける範囲も広い。
 と言っても、駅周辺は寂しい限りである。この辺りはもう帰還困難区域ではないが、元の住民たちはほぼ戻らない(戻れない)のである。
 駅から15分ほど歩いた役場近くに仮設商店街と大型スーパーを発見し、やっと人の活動を確認した。地物の物産をいくつか買う。

@がんばれ

 浪江駅に戻り、12時09分発のいわき行に乗り込んだ。
 大野までは午前中にも乗車した区間であるが、今回は車内に立つ人もいるくらい混んでいる。先ほどとは反対側(海側)を見るために、ドアの近くに立った。
 ふと気づいたのは、路盤近くにあるモルタルの法面(のりめん)である。普通、路盤の周囲にこういう加工はしない。もしやと思ってスマホで検索してみると、やはり放射線量を低減させるための法面であった(この手法は、福島第一原子力発電所構内でも使用されている)。常磐線訪問記は多々あれど、この点を指摘しているものは少ないであろう。これから乗車される方はここにも注目されてはどうであろうか。

@法面

 時折海を見たりしながら、いわきには13時09分に到着した。4分の乗り換え時間で磐越東線へ。座席もほどよく埋まっていたため、最前部に陣取った。

@お次はこれ

 定刻に出発。台風直後に運休となり、先に郡山から小野新町までが再開し、その後しばらくたってからいわきまで再開した。「路盤流出」ということであったが、確かに所々で「ここだな」と思われる新しい路盤があった。

@川前駅手前

 長閑な景色を見続け、郡山には14時48分に到着した。1時間強の待ち時間は、駅付近で適当に潰すしかない。
 今日最後の列車は、水郡線である。水戸から常陸大子までは数年前に乗車したが(坂東札所巡りで)、常陸大子以北(郡山まで)はかなり久々である。

@今日の締め

 水郡線には「奥久慈清流ライン」という別名が付けられているが、そうなるのは茨城県にかなり近づいてからである。それまでは、磐越東線後半と同様の長閑な田舎景色である。
 17時38分に常陸大子に到着。今日はここの温泉に宿泊である。2食付(朝夕いずれもバイキング)でアルコールも飲み放題付で8,000円台ということもあり、食材については「値段相応(というか期待以下)」というところであるが、個人的に嬉しいのは地酒が揃っていたことであった。有難く、端から順にいただく。

@コップ4杯は呑みすぎでした

■2020.3.22
 5時前に荷物を持たずにホテルを出て、駅前へ。目的は「代行バスで袋田へ行き、滝を見てくる」というものである。復路は適当なバスがないため歩いて旅館まで戻るが、1時間半はかからないはずである。
 薄暗い中、代行バスがやって来た。

@今日はこれから

 定刻の5時21分に出発。こんな時間に乗る人などいないと思っていたが、私以外に地元の人が1人乗っていた。
 川辺を走り、9分ほどで袋田バス停(袋田駅からは離れた国道沿い)に到着した。
 早朝のため閑散とした袋田の集落と土産物店などを横目に歩き、約30分で袋田の滝に到着した。なお9時から17時までは有料であるが、この時間帯は無料で入れるのがありがたい。もう何度目の訪問か忘れたが、相変わらず壮大である。

@写真に入り切らない

 その後は必死に歩いて旅館まで戻った。道すがら、台風によって流された中古車や崩された堤防がまだ残っているのを見かけたりして、件の台風の凄まじさを見せつけられた気がした。
 旅館に戻り、バイキングの朝食を頂いてから一風呂浴びて、8時半にチェックアウトして再び常陸大子駅に戻ってきた。次に乗るのは9時05分発の代行バスである。

@またバスの写真では味気ないので、駅前のSLで

 定刻に出発。対岸には水郡線の路盤が見え隠れしているが、新しいバラストで整備された区間も見受けられた。
 代行バスの終着である西金(さいがね)には、定刻より少し早い9時32分に到着した。
 さて、ここからは通常通りの水郡線である。

@いつも通り

 9時39分に出発。「奥久慈清流ライン」の名の通りであるのも最初のうちだけで、久慈川が沿わなくなって以降は、地味な沿線風景である。水戸には10時49分に到着した。
 さて、旅の目的はここで終了である。ただしこのまま戻るには早過ぎるので、意味もなく銚子経由で帰るだけである(青春18きっぷを最大限活用)。

@浪江駅その2

 

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