優等列車で東日本一周の旅

■はじめに
 8月末に実施した「優等列車で九州一周の旅」の冒頭に記載したが、JR九州では「特急乗り放題」の切符があまりないため、各駅停車(青春18きっぷ)の思い出ばかりであった。そこで特急乗り放題の「みんなの九州きっぷ」が売り出されたため、実施した次第である。
 同様のこと(特急の思い出がなく、ひたすら青春18きっぷの思い出ばかり)が、他の地域にも言える。特に顕著なのが、東北地方(奥羽本線や羽越本線など)や山陰地方である。
 東北地方の特急列車に乗れるフリー切符について、誰でも買えるものはないが、「大人の休日倶楽部」の会員なら購入可能である「大人の休日倶楽部パス(東日本)」であれば、これまで実施できなかった「東北地方で特急乗り放題」が可能である。私も今年からこの切符が買えるようになったので、4日間(切符の有効期間)を使ってあれこれ乗ってくることとした。値段はたったの15,270円、つまり1日4千円以下で新幹線まで乗り放題という、かなりお得な切符である(なにせ、東京から青森までの片道新幹線よりも安いという、とんでもない値段設定である)。

【旅程】
1日目:近郊路線を乗り継いで新宿へ行き、新宿→松本(あずさ)、松本→長野(しなの)、長野→上越妙高(はくたか)、上越妙高→長岡(しらゆき)、長岡→新潟(とき)、新潟→羽後本荘(いなほ)。由利本荘泊。
2日目:別料金を払って矢島まで往復してから、羽後本荘→秋田(各駅停車)、秋田→盛岡(こまち)、盛岡→新花巻(やまびこ)、新花巻→釜石(はまゆり)、釜石→盛(各駅停車)、盛→気仙沼(各駅停車)。気仙沼泊。
3日目:気仙沼→一ノ関(各駅停車)、一ノ関→北上(各駅停車)、北上→横手(各駅停車)、横手→秋田(各駅停車)、秋田→男鹿(各駅停車)、男鹿→秋田(各駅停車)、秋田→青森(つがる)。青森泊。
4日目:青森→新青森(各駅停車)、新青森→古川(はやぶさ)、古川→新庄(各駅停車)、新庄→酒田(各駅停車)、酒田→新潟(いなほ)、新潟→大宮(とき)、近郊路線を乗り継いで自宅最寄り駅へ。

@羽後本荘駅にて

■2020.10.3
 新宿へ移動。まずは松本行の「あずさ1号」からである。中央線の特急は会社の行事で富士見辺りまでは乗ったことがあるが、松本まで乗り通すのはたぶん初めてである。

@面長

 定刻の7時00分に出発。全車指定であり、空席の場合は席の上に赤ランプが灯る仕様となっているが、赤は皆無である。そのうち車内アナウンスがあり、八王子以降は満席になることが案内されていた。そういえば、GoToキャンペーンに東京が対象となってから初めての週末であった。
 松本までの所要時間はたったの2時間38分。最近は「高尾発松本行」の各駅停車にロングシートという爆弾があったりするので、これからは特急の旅か、とも思う。
 続いて乗るのは、長野行の「しなの3号」である。車内は4割くらいの乗車率で、窓側を確保することができた。
 10時07分に出発。まだ昼前であるが、松本ということで「山賊焼き」の昼食である。

@この地域らしく

 過去の乗車記録は付けていないが、篠ノ井線を特急で走破するのは、たぶん初めてである。というか、「しなの」に乗ること自体が初めてのような気がする。
 姨捨の景色を眺めたりして、10時58分に長野に到着した。
 11時07分の新幹線「はくたか557号」に乗り、次の停車駅である上越妙高で下車。続いての乗り継ぎは特急「しらゆき」であるが、この何もない駅で1時間半も待つのは面白くないため、11時37分の各駅停車に乗り込み、高田で下車した。ここでしばし観光である。

@普通の観光写真も

 雁木のある街並みや城址公園を散策してから駅に戻り、さて特急「しらゆき5号」である。思わず「ひたち」と言いたくなってしまうのは、関東民の性である。

@なんとなく「ひたち」

 13時12分に出発。直江津以降は左手に海を見つつ、その後は内陸に入って、14時14分に長岡に到着した。
 このまま新潟まで乗りたいところであるが(私は新幹線より在来線が好き)、そうすると「いなほ」に乗り継げないため、時間稼ぎのためここからは新幹線である。
 14時27分の「Maxとき321号」で久々に横6列の座席に座り、14時49分に新潟到着。新潟駅は改装工事中で一部完成しており、到着した新幹線と次に乗る「いなほ」は隣接するホームで非常に便利であった。
 さて、次に乗る「いなほ7号」も、思わず「ひたち」と言いたくなる見てくれであるが、色がついている分「ひたち感」は薄い気がする。

@それとなく「ひたち」

 定刻の14時57分に出発。今日に関してはここまでは「前座」のようなものであり、ここからが本番である。というのも、この区間(新潟−秋田)を特急で走破するのは、おそらく約30年前の特急「白鳥」まで遡るからである。
 田園風景の中を走り、村上を過ぎると左手に日本海が見える部分が多くなっていった。

@天気は残念ですが

 景色を眺めつつ、今日の宿泊地である羽後本荘を目指した。日も落ちて暗くなり、18時07分に到着したが、それにしても3時間越えはなかなかの乗りごたえである(しかし、以前の各駅停車の思い出に比べれば、かなり短い)。
 駅から15分ほど歩いて、予約済みのホテルへ。意外であったのが、市の補助で宿泊費に3,000円が出ているという。しかし私はネットで決済してしまっているため、代わりにレストランで使える同額の食事券が付くという。私は格安の部屋をGoToで決済しているため、机上の数字であるが、2,210円(決済額)−3,000円(食事券)−1,000円(共通クーポン)ということで、まさかのマイナス1,790円である(いいのか?)。
 3,000円もあるとはいえ、レストランだけでがっつり呑むのは難しいかと思い、近くにあったスーパーの安食材で部屋で軽く一杯やってからレストランに行き、刺身や比内地鶏、ビールや日本酒を注文した。

@地鶏で一杯

■2020.10.4
 6時半頃にホテルを出て、羽後本荘駅に向かった。今日は件の切符の乗車範囲ではないが、せっかくここまで来たのであるから由利高原鉄道に乗車することにしている。
 6時55分発の矢島行は、すでに入線していた。

@車体側面

 「高原鉄道」と銘打っているが、山の麓に行くだけで高原を走る路線ではない。定刻に出発し、田んぼなどが中心の田園風景の中を走り続けた。「かかし」のコンテストをしているということで、それが何体もホーム上に立っている駅舎もあった。
 7時34分に矢島到着。出発時は駅窓口が開いていなかったのでここでやっと「一日乗車券」を買ったが、値段は破格の550円である(羽後本荘→矢島の片道切符より安い)。県と市からの補助が出ているということで、その補助が始まったのが今年の7月。これもコロナの影響であろうか(皆さんも由利本荘市に来てあげてください)。

@疫病退散(ヘッドマーク)

 駅前はさみしい限りであり、少し散歩しただけで7時46分の列車で羽後本荘に戻った。昔懐かしい「タブレット交換」が現役であったのが印象的であった。
 羽後本荘到着後は少し時間があったので城跡の公園まで歩き、9時01分の各駅停車で秋田へ移動した。続いての乗車は、10時07分発の新幹線「こまち18号」である。

@鼻高

 この列車は途中の大曲から田沢湖線に入るが、田沢湖線は区間によっては「かなり久々」である。角館までは何度も行った記憶があるが、その先は各駅停車の運行数がめっきり少なくなるため、かなりご無沙汰である。
 定刻に出発。今日も「地元の駅弁で早めの昼食」である。秋田駅であれこれ悩んだが、鶏系も牛肉系も買ったことがあるものばかりであり、初めて+小腹を満たせればいい、ということでこれに決定。

@鶏系ではある

 大曲から田沢湖線に入り、角館以降は久々の乗車である。田沢湖以降の峠の景色も楽しんで、11時47分盛岡に到着した。
 12時07分の新幹線「やまびこ56号」に乗り、1駅だけの新花巻で下車して、隣接する在来線(釜石線)のホームへと向かった。ここから乗るのは快速「はまゆり3号」であるが、この列車は私が盛岡に到着する5分前の11時42分に同駅を出発してしまっている。つまり、間に新幹線を入れることで、先回りした状態になっている(この列車に乗れるかどうかが、今日の旅程の鍵でもあった)。

@やって来ました

 見た目は東北地方の非電化区間によくある車両であるが、車内は特急などでも使用されている回転式のクロスシートとなっており、乗り心地は良い(註:指定席だけが回転式になっている「はまゆり」編成もあり)。
 少し混んでいた車内も遠野を過ぎると空いてきて、久々に「オメガループ」を通り過ぎて、13時57分に釜石に到着した。
 次に乗るのは14時13分発の三陸鉄道であるが、件の切符で乗車可能である。定刻に出発。トンネルが多いが、海が広がる区間もあった。

@こんな感じ

 定刻通りの15時05分に終着の盛(さかり)に到着した。
 次に乗るのはBRTでるが、その出発まで1時間弱もある。BRTと鉄道の乗り継ぎはいつも悪く、過去何回も盛駅付近を散策しているため、今さら特に発見するものもないが、仕方ないのであれこれ歩いて、スーパーで夜用の食材を買ったりして時間を潰した(支払い時には「地域共通クーポン」を利用)。

@知る人ぞ知る3つ目の「盛駅」

 16時02分のBRTに乗車。最初はバス専用区間(廃線跡)であり、途中から一般道に入っていった(おぼろげな記憶であるが、昔の方が専用区間が多かった気がする)。気仙沼の市街地に入ると再度専用区間に入り、トンネルをいくつか抜けて、終着の気仙沼には17時16分に到着した。駅前にあるホテルに投宿。
 チェックイン時に今日も1,000円の共通クーポンをもらい、それを使ってスーパーで気仙沼港直送のカツオやメカジキの刺身を入手して、自室で酔いどれてから就寝。

■2020.10.5
 今日の一番手は5時14分発とかなり早いが、駅前ホテルなので安心である。

@夜明け前

 2両編成で大船渡線のイメージキャラである龍のイラスト付きの列車は、定刻に気仙沼を出発した。
 「我田引鉄」による迂回ルートを走り抜けて6時35分に一ノ関に到着し、東北本線の各駅停車で北上して7時24分に北上に到着した。ここから乗るのは、7時38分発の北上線である(先ほどと全く同じ見てくれの車両)。
 定刻に北上を出発。今日も曇り模様(そして雨)であるが、だんだんと山深い趣深い景色になっていった。

@どんより

 横手には8時54分に到着。接続する9時21分発の列車に乗ってもその後の接続が悪いため、ここでしばし横手市内を徒歩観光である。
 10時54分の各駅停車で北上し、秋田には12時01分に到着。ここで12時09分発の男鹿線の列車に乗り換えた。

@これに乗り換え

 この車両は蓄電池を備えていて、電化区間は電車として走り、非電化区間は電池を利用して走るものである(烏山線などでも活躍中)。私は前回これに乗ったことがあるので、できればボロ車両(キハ40系)の方がよかった気もする。なぜなら、新車はロングシートなのである。
 定刻に秋田を出発。今日は午前中に大雨があったせいで列車が遅れているため追分で接続を取り、その関係で男鹿到着は少しだけ遅れた。
 駅付近には見慣れない建物(道の駅)が出来ていたのでそちらに向かうと、港への引込線が復元されているのがあった。

@鐡ネタ発見

 13時45分の男鹿線で秋田に戻り、1時間弱の空き時間で夜用食材をスーパーで探したりしてから駅に戻った。今日はここまでは各駅停車の連続であり「青春18きっぷ」でも可能な旅程であったが、ここからがメインである。
 ホームに入り、15時52分発予定の特急「つがる5号」に乗り込んだ。件の切符では指定券が6回発券できるため念のため押さえているが、予想通りにガラガラであった。
 思わず「はつかり」と言ってしまいたくなるような、見覚えのある車両である(当たり前)。

@なんとなく「はつかり」

 秋田から青森までの奥羽本線については、部分的には特急に乗ったことはあるが、乗り通すのは前述した「約30年前の特急白鳥」まで遡らなければならない。
 定刻に出発。途中の東能代までは快速「リゾートしらかみ」で何度も乗っているが、そこから先は各駅停車の思い出ばかりである。
 この区間の特急に乗らないもう一つの理由が、「せっかくここまで来たのだから」と五能線に乗ってしまうからである。確かに、景色ではあちらがかなり上である。

@こちらは地味

 弘前の手前で日が落ち、18時38分に青森に到着した。コロナダンピングで超激安になっている駅近くのホテルに投宿。

■2020.10.6
 さて、今日は帰るだけであるが、もちろん東京には直行せず、途中の古川からローカル線を乗り継いで日本海側の酒田に抜けて、新潟経由で戻ってくる旅程である(それだけ遠回りをしても、1日4千円未満である)。
 6時36分の奥羽本線に乗って新青森で下車。今日はまず新幹線「はやぶさ8号」からである。

@鼻高その2

 6時49分に出発し、古川には8時41分に到着した。しばし待ち時間を経て、続いて乗車したのは9時19分発の陸羽東線である。途中駅からの乗車であったが、無事に窓側の席に座ることができた(平日ですから)。
 途中の鳴子を過ぎてからは、鳴子峡でのスロー走行もあった。

@今日も曇り+雨

 新庄には11時10分に到着。いつもは接続が悪くて待たされる新庄駅であるが、今日は5分の乗り継ぎで陸羽西線に乗ることができる。
 11時15分発の列車に乗り、ひたすら西へ。12時02分には余目に到着した。ここですぐに接続する特急「いなほ」に乗れば17時過ぎに家に帰れるが、さすがの私も少しは観光をしたいため、このまま酒田まで乗り通して2時間ほど観光してから帰ることにしている。
 12時18分、その酒田に到着した。

@無事旅程通り

 米蔵などを観光してから、フェリーターミナルに向かった(飛島に行ったとき以来である)。ここのターミナルにある食堂で海鮮ものでも食べようと思っていたが、特別なセットは軒並み売り切れであった。他の料理はあるが(他の店舗もあるが)、代替でこれといったものもなかったため、そのまま徒歩観光を継続してから駅に戻った。

@普通の観光も(やっと晴れた)

 さて、後は14時30分の「いなほ」に乗って新潟から先は新幹線「とき」の自由席で帰るだけであるが、旅行記にするまでもないであろう。ということで、ここで終了。

 

■ 鐡旅のメニューへ戻る

 「仮営業中」の表紙へ戻る

inserted by FC2 system