木次線と芸備線の旅(おまけで2回目の「Saku美Saku楽」)

■はじめに
 今回の旅は、表題にある通り木次線と芸備線(の特に赤字が酷い区間)に乗るのがメインである。JR西日本では「自社単独では維持困難」な路線を明らかにしており、特に芸備線の備後落合から東城までは、その中でも赤字レベルがトップクラスである(100円の利益を出すのに2万5,000円くらい経費が掛かる)。これらはもう何度も乗ったことがある路線であるが、今回は途中で駅弁を買ったり途中下車をしたりして、少し観光をしようと思う。
 そう思って往路出雲、復路岡山の航空券を早めに手配したが、3月の後半に落石によって芸備線の備後落合から東城までが運休(代行バス運行)となってしまった(この時点での運行再開予定は5月下旬)。どうしようかと思ったが、代行バスに乗る機会というのも稀であるから、そのまま決行することにした(5月に入り、再開予定は7月に延期となった)。
 切符については「岡山ワイドパス」を使い、日曜日は適当に観光することにした。どこに行こうかあれこれ悩み、津山から岡山まで「Saku美Saku楽」に乗ることにした。この観光列車には去年の7月(デビュー直後)に乗ったことがあるが、その頃は「切符・指定券・弁当・その他お土産」込みで6,000円であった。その後方式が改訂され、今はバラ売りとなっている。ということで、指定券(530円)と弁当(3,200円)を手配しておいた。津山発の弁当の方が以前から気になっていたのが、再乗車の理由である。

@出雲横田駅にて

■2023.5.20
 往路は出雲行あるから、当然JALである。7時10分発の便であったが、出発準備に時間を要し、出雲空港到着は定刻から20分ほど遅れた8時55分であった。
 さて、今日はまず木次線に乗ることにしている。連絡バスで出雲市に行ってJRに乗ったのでは効率が悪いため、空港から直接宍道駅まで行くことにしている。タクシーという選択肢もあるが、急ぐ旅ではないし、木次線の運行本数も限られているため、歩いて宍道駅へと向かった。荘原駅からは何度か歩いたことがあるが、宍道駅は初めてである。

@乗って来た飛行機と、右は隠岐行

 山陰本線に向かって歩いていると、遠くに「West Express銀河」が出雲市方面に走って行くのが見えた。「飛行機が定刻だったらちょうど撮影できたのに」と残念なところであるが、私が山陰本線沿いに宍道方面に歩いて行く頃には、国鉄型車両の「やくも」が走って行ったり、サンライズ出雲がやってきたりと、なかなか楽しいひと時であった。

@また乗りたい

 10時15分頃に、宍道駅に到着。木次線の出発(11時11分)まで、まだまだ時間がある。旧いお屋敷がある町並み(規模はかなり小さい)を歩いたが、国道沿いの町外れにスーパーを発見。こうなると「どうせ乗っているだけだから、酒でも呑んでしまうか」という悪い考えが頭に浮かんでしまい、ついあれこれと買い揃えてしまった。
 駅に戻ると(11時前頃)、すでに木次線は入線していた。2両編成であり、備後落合まで行くのは1両目だけである。

@2両目は木次線カラー

 さて、ここで作戦違いが2つほど発生。まず1つ目は、2両編成であるが、どちらもロングシートなのである(ロングシートでは酒が呑み難い)。あと1点は、蕎麦の駅弁を売っている亀嵩駅に電話をしたのだが、何度掛けても繋がらないのである。リダイヤルしているうちに、列車は出発してしまった。
 仕方ないので、蕎麦は諦める可能性も出てきた(スーパーで半額パンがあり念のため買っていたので、最悪それが「締め」となる)。
 2両目は出雲横田までしか行かない=ガラガラなので、そこで一献を始めた。

@せめて「島根らしいもの」で

 酒を呑みつつ、のんびりと外を眺め続けた。所々で25キロ制限などもあり、全体的にゆっくりしたペースである。
 その後も時折蕎麦屋に電話をしたが、やはりどうしても繋がらない。12時22分頃(亀嵩到着の16分前)、「蕎麦の茹で時間を考えたらこれがラストチャンス」と思って電話をしたら、やっとここで繋がった。普通盛り(750円)を注文。
 亀嵩には、定刻の12時38分に到着した。出入口で、750円と蕎麦を無事に交換した。

@無事に入手

 とろろと卵に蕎麦を絡めて、車内で美味しく頂いた。
 出雲横田で長時間停車し、ここで1両編成に。「備後落合から代行タクシーに乗る方は乗務員に」というアナウンスがあったので、乗車予定であることを運転手に伝えた。
 同駅を出発すると、だんだんと山深くなって行った。アルコール+満腹なので、椅子に座っていると確実に寝てしまう。ということで、最前列で立ち続けることにした。

@出雲坂根駅に接近

 13時32分、出雲坂根に到着。ここで18分の停車となるため、売店へ行くために降りて行った(宍道から備後落合への切符は途中下車ができない距離であるが、無人駅なので勝手に降りるのは実質可能である)。
 以前の訪問時はここで焼き鳥を買ったが、今日はまだ焼きあがっていないとのこと。ということで、夜用に総菜(タケノコの煮つけや鳥皮の唐揚げ)とおにぎりを購入した。
 さて、この駅では「奥出雲おろち号」と行き違うことになる。今年度で引退ということで、今は指定券が入手困難な観光列車である。

@やって来ました

 私もかなり昔に乗車したことがあるが、その頃はガラガラだった記憶がある。引退報道もあり、今日は超満員であった。
 おろち号と入れ違いに、備後落合行が出発した。ここからは、鉄道ファンには有名な「三段式スイッチバック」となる。スイッチバックを行ったり来たりして、だんだんと標高は高くなっていき、右手には赤い橋も見えてきた。

@木次線の名所

 名所も過ぎたので席に座ると、案の定すぐに寝入ってしまった。目を覚ますと、もう備後落合到着直前である。
 急いで下車し、駅前に停まっている代行バス(タクシー)へ、東城への直行バス以外に、各駅停車のタクシーも停まっていた(当然、私はバスへ)。備後落合に来るのはもう何度目か分からないくらいであるが(10回以上は来ているはず)、ここからバスに乗るのは初めてなので、なんだか新鮮な気分である。

@今日はバスで

 14時40分、代行バスは出発した。今日は東城への直行バスの乗客が7人、各駅停車が0人である。芸備線のこの区間(備後落合−東城)の存在意義が問われそうな現状である(特に各駅停車が0人というのが深刻である。つまり、地元利用がゼロ)。
 そもそも、落石事故の際のニュースで衝撃的であったのは、「落石で脱線した」ではなくて、「列車内は運転手だけで、乗客はいなかった」という報道内容である。1日に3往復しかないのに、乗客ゼロ。これが現実である。「お金をかけて落石対策をする意味があるのか」と、正直思ってしまう(廃線は望まないが、現実的には苦しいと思う)。
 バスは快走し、東城には15時05分に到着した(所用時間はたったの25分)。本来の時刻表(鉄道)であれば、14時36分発15時25分着であり所要時間は49分であるから、ルートが違うとはいえ、バスの方が圧倒的に早い(ほぼ倍速)という、本末転倒な状態である。ますます、鉄道の存在意義が問われるところである。

@バスが便利で早い

 さて、ここで接続する鉄道には乗らず、東城を散策する予定である。駅から離れて橋を渡り、旧い町並みを歩いた。私以外の観光客は皆無であるが、三楽荘という大きなお屋敷があり、しかも無料なので中に入ってみた。立派なお部屋があれこれあるあるだけでなく、三神線(芸備線の以前の呼び名)開通に関する資料などもあり、充実した内部展示であった。

@展示物の一例

 旧い町並みを抜け、道の駅まで足を延ばして割引になっていた「おこわ」を夜用に購入。スーパーもあったので夜用食材を追加購入してから、駅へと戻った。
 待合室には大阪方面のバスのポスターも貼ってある。東城自体は比較的大きな町であるが、芸備線の利用はあまり望めず、自家用車やバスが中心のようである。
 新見方面から1両のディーゼルカーがやって来て、4〜5人ほどの乗客が下車。これが折り返し17時09分発の新見行となるが、出発時点での乗客は、予想通り私1人だけであった。

@「東城−新見(備中神代)」も苦戦

 のんびりと景色を眺め続けて、新見には17時45分に到着した(到着時点でも、乗客はたったの3人だけ)。
 さて、明日の移動を考えると新見に泊まるのが便利であるが、安いホテルがないし、旅行支援も適用されていない。ということで、今日は倉敷泊まりである。黄色い電車に乗り換えて、倉敷には19時02分に到着した。この時刻でもまだ明るいのは、この季節(この地域)ならでは、であろう。安ホテルに投宿。
 元々4,400円であるが、じゃらんクーポン1,000円を適用させ、旅行支援で680円引かれて、たったの2,720円である(もちろん旅行支援クーポンが1,000円もらえる)。7月以降(通常に戻る)が、怖い感じである。

■2023.5.21
 早起きして美観地区をあれこれ散策してから、駅へ。せっかく倉敷に来ているのであるから、まずは水島臨海鉄道の乗車である。

@せっかくなので(岡山ワイドパスで乗車可能)

 7時20分に倉敷市を出発。すでに何回か乗っている路線であるため、終着駅まで行って単純往復するのは面白みがない。そこで今日は、常盤で下車をしてみることにした。
 目的は、中央公園にあるSLである。

@とりあえず撮影

 寂しい商店街などを経由して、復路は栄から乗車。倉敷市には7時33分に戻って来た。
 倉敷発7時42分の黄色い電車に乗り、新見へ。昨日も乗ったばかりの路線であるが、大きな川が沿う区間が多いので、景色は非常に良い。
 新見には、8時52分に到着した。ここで1時間ほど時間があるため、やはり旧い町並みの散策である。駅から15分ほど歩くとその町並みになるが、まるでゴーストタウンのように閉店した店ばかりであった。もちろん、観光客は皆無である。

@よって「川+やくも」を紹介

 駅に戻り、9時53分発の列車で津山へ向かう。車内には7〜8人の乗客がおり、芸備線よりはマシな状態のようであった。
 津山到着は、11時31分。Saku美Saku楽の出発まで1時間半近くあるため、スーパーへ行って酒を買ったり、支援クーポンを使ってお土産を買ったりして時間を潰した。
 12時45分頃に駅に戻ると、すでに観光列車は入線していた。

@再乗車です

 「入線していた」と書いたが、正しくは「岡山から到着して復路の準備をしていた」である。入線していたのは2番線で、本来なら林野方面に使用されているホームである。車両がいったん動き出して引込線へ移動したので、「岡山行に使用している4番線に行くのだな」と思ってそちらに移動して待っていると、なぜかまた2番線に入線してきた。謎である。
 とにかく、切符類を見せて早速車内へと入った。

@こんな車内

 指定券はJR西日本のサイトで手配できるが、残念ながら細かい指定(窓側など)はできない。私の席はロングシートとなってしまったが、長時間乗るわけではないし、そもそも弁当が目当てで乗車するため、問題はない。
 列車はまだ動いていないが、津山市内で買い揃えた品で一献の開始である。そしてもちろん、弁当も頂くことにする。

@お品書きと外装

 酒は安ストロングサワーにしてしまったが、よく考えたらローストビーフがメインなので、これは赤ワインにすべきであった(失敗)。
 すべてを紹介する紙幅はないが、手の込んだ品が多い(大人向けの味付けが多いので、子供には不評かもしれない)。ポテトサラダ+アンチョビは、自分でも作ってみようと思う。あくまで個人的感想だが、同じ値段であれば、下りの「ちらし寿司」より上りのこの列車の方が私の嗜好に合う(ツマミになる)ものであった。

@中身はこんな感じ

 定刻の12時58分に津山を出発。扇形車庫を過ぎて、岡山方面へと走って行った。
 車内では、あれこれと観光アナウンスが続けられている。前回も聞いた内容かもしれないが、1回で全部覚えられるわけもなく(しかも酔っているので)、初めて聞く内容もあった。
 最初の停車駅は、弓削(ゆげ)である。岡山で一番古い駅舎ということで、駅付近には河童の「カッピー」がたくさんいるとのこと。確かにたくさんいて、何匹いるかはわからないままであった。
 近くにはお寺や公園もあるらしいので、そのうち途中下車をしてみたいと思う。

@一例(これはホームにいた奴ら)

 係員が鳴らす鐘が鳴り、同駅を13時25分に出発。豪華弁当+酒の再開である。
 車内の乗車率は5割くらいで、ボックス席は2人ずつくらいで埋まり、ロングシートは1人だけ(所々2人)、もしくは空いているところもあった。私も乗車8日前に切符が取れたくらいなので、比較的乗車しやすい観光列車と言えよう。
 続いての停車駅は、福渡である。前回乗車時はとてつもない大人数による大歓迎であったが、今日は数人であった(大歓迎は変わらず)。ケーキやソフトクリームの売店も出ており、買っている乗客もちらほら。私は「甘い物モード」ではなかったので(まだ酒の途中)、撮影タイムである。

@天気も良いし

 同駅を13時47分に出発し、左手に大きな川を見遣りながら走り、岡山には14時30分に到着した。これで、2回目のSaku美Saku楽は終了である。
 さて後は、空港へ移動して羽田に戻るだけである。

 

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