フェリーで日本一周(陸地では鐡旅)

■はじめに
 コロナ禍のゴールデンウィークである(その気になれば10連休も可能)。ニュースによればハワイに行く人などもいるようであるが、まだ移動に関する制限は多いため、海外旅行は難しい。「小笠原諸島にでも行くか」と思ったが、同じようなことを考える人は多いようで、年明け早々に調べた時点でキャンセル待ち状態であった。あれこれと考えを巡らせ、フェリーを使って日本一周をすることにした。
 実は、似たようなことは今から20年以上前(2001年)にも実施したことがある。ただし、規模は今回とは大違いであった。当時はまだ日本海西部や東シナ海の航路があったため、本当に日本をぐるっと一周する感じであったのである。関西にある大学院に在学していたためそこが出発地となったが、以下のような内容であった。

・徳島−東京 オーシャン東九フェリー
・大洗−室蘭 東日本フェリー 2002年休止
・室蘭−直江津 東日本フェリー 2006年休止
・直江津−博多 九越フェリー 2006年休止
・博多−那覇 琉球海運 2006年休止
・那覇−志布志 マルエーフェリー 2014年休止
・宮崎−大阪 マリンエキスプレス(現「宮崎カーフェリー」) 2014年休止

 上記のような日本一周は、もう不可能である。大洗−室蘭や宮崎−大阪などは、ほぼほぼ近いルートが今でも残っているが、直江津−博多と博多−那覇航路がないため、日本の外周をぐるっと回ることはできないのである。
 今回は、2021年に22年ぶりに新規長距離航路として開業した東京九州フェリーなどを盛り込んで、以下のような「プチ日本一周」をすることにした。

・横須賀−新門司 東京九州フェリー
・新門司−神戸 阪九フェリー
・舞鶴−小樽 新日本海フェリー
・苫小牧−大洗 商船三井フェリー

 なお旅程の関係で、北九州と神戸、北海道では時間がたっぷりある。そこでは、鉄道関係を含めたネタ拾いをしてくることにしている。正直なところ、移動自体はフェリー主体であるが、長距離フェリーの船内というのは「やることがない」ため、到着地での鉄道ネタが主体の旅行記となるはずである。

@新門司港にて

■2022.4.30
 JRで品川まで向かい、チケットショップで買った株主優待券を使って京急で横須賀中央へ(21時30分頃に到着)。東京九州フェリーのターミナルは、ここから歩いて12分程度である。
 コンビニに寄ってアルコールを買ったりしてから、ターミナルに向かった。昨年度の開業に合わせて新しく普請されたターミナルであり、当然新しい。

@背後にフェリーも

 ターミナルと一緒に船体を撮影したが、よくよく考えると、今日の深夜23時45分に出港して明日の夜遅く(21時00分)に到着するため、明るい時間帯に船体を撮影することができない。ということで、フェンスの隙間から撮影である。
(この時点では、新門司出港時にこの船の撮影ができるとは思っていなかった。詳細後述)

@盗撮のように

 ターミナルに入るとすぐ左手にカウンターがあって数人並んでいたので、とりあえずそこに並んでみた。しかし、印刷して来たQRコードなどを見せると、「ご変更はございませんね」という確認をされただけであった。この後は、このQRコードを見せて乗船するだけであるという。フェリー乗船となれば、以前は乗船名簿などをあれこれ書いて面倒であったが、今や飛行機と同じでカウンターの手続きは不要である。楽ではあるが、アナログの乗船券がないので、寂しくもある。
 2階にある待合室に行き、持参してきた総菜や酒で軽く一献を開始。一献の途中(22時45分)に徒歩客の乗船案内があったので、早速船内に向かった。

@ロビーはこんな感じ

 フェリーの客室といえば、つい十数年くらい前までは「カーペットの大部屋」が主流であったが、今やそれは下火となり、プライベートが保たれる半個室が主流である。今回の私の部屋(ツーリストA:繁忙期料金で18,000円)も、そのようなタイプである。ネット予約時点で出入りが楽な下段を選び、また他人と向き合わないように一番端になるようにした。

@今日の寝床

 質素ではあるが、小物入れや電源やUSBもあるので、これで充分である。
 シーツなどでベッドメイクをして、一献の続きをして、就寝。もう夜も遅いため、船体探索などは明日である。

■2022.5.1
 目が覚めると5時半過ぎであった。眠気眼で甲板へ。詳細な位置は分からないが、関東地方の雨を避けるように西へ移動しているはずである。

@曇り

 自室で再度ウトウトとしてから、中央ロビーでテレビ(大リーグ中継)を観る。それでも手持ち無沙汰なので、船内にあったクロスワードパズルに参加して時間を潰した。
 このフェリーでは、レストラン以外にバーベキュースペースがある。ただし、席数が限られるため抽選である。お1人様では分が悪いが(4人席であるため、4人組の方が儲けが出る)、とりあえず申し込んでみた。もちろん、撃沈である。
 10時過ぎに、対向のフェリー(横須賀行)と行き違うとのアナウンスがあった。見学用にバーベキュースペースも開放されるということで、そちらに行って見ることにした。

@食べたかった…

 朝方は曇りであったが、残念ながら大雨である。しかし、ただ単に雨が強いだけであって、風はそれほどないため揺れはあまりない。余所様のブログによると、この航路はかなり揺れるような感想が多かったが、今日は問題なさそうである。
 しばらくして、横須賀行のフェリーがやって来た。数少ないイベントでもある。

@行ってらっしゃい

 見送りが終わるともうやることもないので、ロビーに戻って野球中継である。しかし、手ぶらでは面白くないため、売店に行って酒を買ってしまった(自宅での怠惰な日曜日の再現である)。普通のツマミでは芸がないので、横浜のあられと宮崎の鶏肉である。

@昼前から

 結局これだけでは足りずに、めんべい(博多のお菓子)と日本酒まで追加で買ってしまった。
 酔ってくると、「締めにご飯もの」が欲しくなる。ということで、11時半に営業を開始したレストランに行ってみることにした。
 しばし待ってから、海が見えるカウンター席に案内された。メニューはタッチパネル式であり、これで注文すれば品物が運ばれてくる方式である。「はかた一番どり唐揚げ定食」にしようと決めたが、メニューを見ているうちになぜか黒豚餃子とビールも追加してしまった。

@食べ過ぎ

 さすがに呑み過ぎてしまい、自室に戻った時点で寝てしまった。起きると、もう15時過ぎである。船は足摺岬近辺にいるようであった。
 しばらくして、クロスワードパズルの景品当選者が掲示されたが、残念ながら当選しなかった。

@参加賞をもらう

 その後は適当にテレビを見て、17時からは船内イベントのプラネタリウムを見て、18時過ぎに大浴場へ行った。これまでたくさんの長距離フェリーの風呂に入ってきたが、露天風呂があったのは初めてである。
 風呂上がり、ちょうど夕日タイムとなった。天気予報通り、西へ行けば行くほど晴れて行き、もう雨は降っていない。

@すばらしい夕日

 日が落ちてしまえば、後はもうテレビを観るくらいである。歩き飽きた船内をうろうろとして、カウンター近くに置いてあるパンフレットをあれこれ見てみると、「日本一周」というものが目に入って来た。最後の北海道以降は私のルートとは違うが、似たようなコンセプトである。

@車のある人用プラン

 陸の灯火が近付き、20時48分に新門司フェリーターミナルに着岸した。乗用車やバイク利用の乗客が最初に車両甲板に移動し、それらが終わってから徒歩客の下船である。
 小倉までの送迎バスで前の方に座るため、いの一番に下船した。ターミナル内は閑散としているが、日曜日が唯一の休航日だからである。

@貸切

 無料バスに揺られて、21時44分頃に小倉駅に到着した。
 今日の宿は、安さ優先で西小倉駅付近である(訳ありプランで3,000円以下)。夕食の買い物しながら、ホテルへ歩いて向かった。チェックインして部屋に入ると、なんと他人の荷物があるではないか。フロントに戻って調べてもらい、代わりの部屋に変えてもらったが、代替の部屋は通常の部屋の3倍以上も広い部屋であった。応接セットや化粧台など、絶対に使わない設備まで付いている(これしか空いていなかったのかもしれない)。最初は「夜遅いのに勘弁してくれ」と思ったが、却って申し訳ないくらいである(支払い料金は訳ありプランだけなので)。
 安食材で一献して、就寝。

■2022.5.2
 今日は、北九州の鉄道ネタを巡る旅である。

@カーテンを開けたらキャッスルビューであった

 8時前にチェックアウトをして、西小倉駅へ。JRで黒崎まで移動した。ここからは、かなり久々に筑豊電気鉄道に乗ることにしている。
 筑豊電気鉄道の乗り場はJRの駅を出てすぐ、と思っていたが、いつの間にか駅自体が新しくなりバスターミナルなども整備され、少しく戸惑ってしまった。なんとか、乗り場を発見した。

@車両も新しくなっていた

 8時48分に黒崎駅前を出発。このまま筑豊直方まで行ったのでは面白くないので、木屋瀬で下車して長崎街道にある旧い家などを見ながら歩いた。ゴールデンウィークで各地が賑わっているというニュースがあったが、ここは観光客皆無である。
 街道の後はひたすら土手や普通の道を歩き、最後はシャッター商店街を経由して直方駅に到着した。ここからは、平成筑豊鉄道に乗ることになる。

@昨年も一昨年も乗ったばかり

 ホームに向かい、車内で運転手から「ちくまるキップ」(1,000円)を購入した。切符を複数回買うよりお得なだけでなく、600円相当の温泉にも入れるためである。
 10時20分に直方を出発。ぼた山などが続く景色を眺め続けた。金田から分岐して糸田線に入る。初めての乗車であれば終点の田川後藤寺まで行くが、そうではないため、今日は1つ手前にある大藪で下車した。というのも、この近くにチロルチョコの工場があり、アウトレットで通常とは違う品を買えるらしいからである。
 大藪で下車して10分ほど歩き、件の店で500円の徳用パックを購入した。

@こういう店

 大藪駅に戻り、11時23分の列車で金田へ。30分以上の乗り換え時間があったため駅周辺を散策すると、森鴎外の文学碑や山頭火の歌碑などを発見した。
 12時10分の列車で行橋方面へ。つい3か月前に駅舎ホテルに宿泊した田川伊田、大昔にトロッコに乗った赤などを過ぎて、源じいの森で下車した。ちくまるキップを使って無料で入れる温泉施設は3つあるが、「源じいの森温泉」が駅から歩ける範囲にあるため、そこに入るためである。
 温泉に浸かり、大広間で休憩してから駅に戻る。が、その前に近くにある貨車(車掌車)の見学である。

@こんなものがある

 これはキャンプ場入口付近にあるもので、「日本初の100km/hで走行できる車掌車」とのこと。唯一現存している車両であるという。
 すぐ近くには九州で一番古い「石坂トンネル」もあるので、鉄道好きは外せない見学スポットであろう。
 行橋方面の列車には乗らず、14時11分発の直方行きで1駅戻る。目的は、九州最古の駅舎である油須原駅である。この駅に訪問するのは、2年弱前に「ことこと列車」に乗車した時以来である。

@古い駅舎

 今日は30分くらい時間があったため、駅周辺も含めてあれこれと見学した。近くの店舗に「尚徳山口」の駅名標があったが、これはテレビ撮影で使用されてものとの由。
 14時45分の列車に乗り込み、行橋へ。2分の乗り継ぎでJRに乗り換え小倉に向かった。15時59分着。
 フェリーターミナルまでの無料送迎バスまで1時間以上時間があるため、スーパーなどに行って食材を買い揃えた(旦過市場は2週間前の大火事の影響で、かなり変わってしまっていた)。
 駅に戻りバス乗り場に向かうと、大行列であった。乗り切れるが不安であったが、係員によると今日はバス2台体制であるという。
 35分ほど無料バスに揺られて、フェリーターミナルへと向かった。到着してびっくりしたが、中国の怪しげな寺院のような建物である。

@何故?(左にあるのが無料送迎バス)

 ターミナルに入り、検温をしてから手続きをする。乗船名簿等の記入は今回も同様に不要であるが、今日は切符が発券された。半券は切られてしまうが大部分は手元に残り記念になるので、この方式の方が良い。
 切符を手にしてから、再度ターミナルの外に出た。今日はまだ明るいので、船体の撮影である。

@今日のフェリー

 今日の航路は明日朝に到着してしまう(距離が短い)ため、個室にしてもあまり高額にならない。よって、個室(の一番安い部屋)を押さえてある。ネット会員のポイント500円を差し引いて、7,970円也。
 もうすでに乗船を開始しているため船内に入り、フロントで鍵を受け取って部屋に向かった。完全個室であることはもちろん、浴衣やスリッパもあるし、何より部屋の中にテレビがあるのがうれしい。

@今日は個室で

 定刻の18時40分、新門司港を出港した。構内でぐるっと旋回して向きを変え港の外に向かうと、昨日まで乗船していた「はまゆう」が左手に見えてきた(表紙写真)。今日の夜遅くに、横須賀に向かって出港するものである。
 いつもなら風呂に向かうが、今日は昼過ぎに温泉に入っているため省略し、部屋に戻って早速一献することにした。売店で第三のビールを買い、小倉で買った安食材で一献である。
 海側の部屋であるが、部屋内に窓はない。しかし、ドアを開けっぱなしにすれば、壁にある窓から外を見ることができる。

@外を見ながら

 酔っぱらったら、ドアを閉めて鍵をして就寝。

■2022.5.3
 さすがに瀬戸内海航路であり、寝ている間も揺れはほとんど感じなかった。唯一気になったのは、意外に壁が薄くて隣の部屋のいびきがうるさかったくらいである。
 瀬戸内海航路の見所といえば、明石海峡大橋であろう。5時50分過ぎに通過するということであったので、デッキに出てその様子を眺め続けた。

@朝日も綺麗

 その後は、朝風呂へ。ちなみにこの航路の風呂にも、露天風呂があった。それ以外にも、ロビー付近の意匠(5〜7階へ移動するエレベータの位置やデザインなど)が、横須賀から乗ったフェリーとかなり似ている。調べてみると、どちらも三菱重工業による製造で就航日も1年違いであった。
 フロント付近で行列があったので何かと思って見てみると、焼き立てパンの販売であった。通常は朝食を取らないので「まぁいいか」と見過ごしたが、20分後には行列もなくなっていたため、1つだけソーセージパンを買ってみた。なかなかジューシーで美味であった。

@パンも買える

 定刻より少し早い7時02分、神戸港に接岸した。下船してから連絡バス(途中から有料)に乗ったが、今日は1台しかないため超満員である。
 JR住吉で下車し、神戸まで移動してそこから歩いて神戸電鉄の湊川まで移動した。今日のメインは2つあり、「北条鉄道」と「カワサキワールド」である。前者に乗るため、湊川駅で「神戸街めぐり1dayクーポン(神鉄拡大版1,750円)」を買うことにしている。湊川から粟生まで片道690円であり、往復しても元が取れないが、この切符には800円相当の施設利用券が付いており、カワサキワールドでも使用できるのである。
 窓口で、無事にそれを入手した。

@今日の足

 やってきた電車で鈴蘭台まで移動し、そこから粟生行に乗り換えた。
 なお、フェリーからの連絡バスなどの移動が順調であったため、この時点で予定より30分前倒しとなっている。急いで粟生に行ったところで北条鉄道は1時間に1本程度しかないため、急な予定変更ということで、三木で降りてみることにした。神鉄三木駅から徒歩10分程度のところに、廃線となった三木鉄道の三木駅跡が公園として整備されているからである。
 三木で下車し、歩いてその場所に向かった。駅舎は資料館として整備されており、ちょうど係員が鍵を開けているところであった。

@懐かしい

 内部にあった資料などを見てから、整備されている公園内にあるレールやトロッコなどを見学した。私が三木鉄道に乗ったのは2007年に1度限りであるが、まさか翌年に廃線になるとはその当時は知らなかった。
 歩いて神鉄三木駅まで戻り粟生行に乗り込み、粟生には10時01分に到着した。跨線橋を渡って北条鉄道の乗り場へ。待ち構えていたのは、JR東日本の五能線などで走っていたキハ40系である。

@貫禄あり

 北条鉄道に再訪しようとした理由は2つあり、まずは古い駅の訪問である。鉄印の旅で1年前に乗車した際に、この路線には登録有形文化財に指定されている駅舎がたくさんあることを知り「そのうち再訪したいな」と思ったことと、そして2つ目がこのキハ40系である。
 車内に入るとかなりの混雑で、立っている人もいた。ご時世柄(コロナ禍)交通機関は空いている方が好ましいが、第三セクターの場合は収支を考えると混雑は嬉しいことである。
 車掌から、一日切符の引換券を購入。10時06分に粟生を出発して、終点の北条町には10時29分に到着した。
 さて、この駅でやるべきことは「鉄印マイスター」の特典をもらうことである。窓口に行き、引換券と一日乗車券(飛び出すタイプ)を交換し、特典3点を頂いた。

@大漁

 鉄印マイスターの特典はいくついかの会社でもらうことができるが、ここ北条鉄道は一番豪華であるかもしれない(会津鉄道も豪華であるが)。硬券入場券セット(しかも全駅で、キハ40系の特別仕様)、チョロQ、執務鑑(運転士用時刻表)のレプリカである。
 すぐには折り返さず、1時間ほど旧街道沿いにある街並みを散策してから、11時39分発の列車(もちろんキハ40系)に乗り込んだ。先ほどまでは大混雑であったが、今度はボックス席を確保できる程度であった。
 さて続いては、古い駅巡りである。まずは、11時52分に到着した法華口で下車した。

@登録有形文化財の駅

 駅名標も古いまま残っており、駅舎の近くにはミニ三重塔などもあって、面白い駅であった。行き違いができる新しいホームが完成しており、これによってラッシュ時の増発が可能になったとのこと。
 なおこの駅はパン屋としても有名であり、何か買おうと思っていたが、もう売り切れであった。予想以上に乗客が多かったためであろうか。
 12時19分発の北条町行に乗り、続いては長(おさ)で下車した。この駅も登録有形文化財に指定されている。駅舎は、結婚相談所としても活用されているとのこと。
 しばし待ち、12時45分発の列車で粟生へと向かった。

@今日はキハ40系尽くし

 キハ40系であるが、車両導入費としては新車より格安であるし(長持ちはしないが)、それにマニアも集まるから収益になるのだろう。錦川鉄道のキハ40系は不調で動かなくなっているため、こちらのは長持ちしてほしいと思う。
 粟生で神戸電鉄に乗り換え、そのまま終点の新開地へ。神戸高速鉄道(1dayクーポンで乗れる)で花隈へ。そこからは歩いて、カワサキワールドがある神戸海洋博物館へと向かった。
 窓口で施設利用券と不足額の100円を支払い、館内へ。船舶関係の資料は後回しにして、まずはカワサキワールドである。一番のお目当ては、0系新幹線である。

@定番

 鉄道関係の展示物は少ないが、実は私は今でこそ手放しているものの昔は大型バイクに乗っていたこともあり、充実したバイク関係の展示物で十分満足であった。
 それが終わってからは、船舶関係の展示である。今回の旅のテーマ(フェリーで日本一周)からすると、趣深い展示内容であった。
 この時点でまだ16時半頃であったため、1dayクーポンを使って新長田まで行き鉄人28号を見たりスーパーで買い物をしたりしてから、三宮に戻ってきた。
 さて、今日のフェリーは舞鶴港から乗船するが、三宮から舞鶴までの高速バスもセットになったプランを申し込んである(フェリーだけの値段とほぼ変わらない11,500円)。なおこのバスは送迎専用ではなくて、通常の高速バス路線である(東舞鶴駅や西舞鶴駅を経由する)。20時00分、バスは無事に出発した。

@高速バスで移動

 舞鶴フェリーターミナルまでは2時間強の道のりであるが、もう真っ暗であるため車窓は期待できない。座席にあったUSBを利用して、スマホ三昧である。
 定刻より少し早い22時05分、フェリーターミナルに到着した。もうかなり昔であるが、1997年と1999年に、ここから小樽まで乗船したことがある。当時はフェリーの速度の違いもあったようで、船内で2泊して朝の4時半頃の到着であった。今回は23時50分発で、翌日の20時45分には到着してしまう(横須賀からのフェリーでも思ったことだが、できれば出発も到着も2時間くらい早い方が、個人的にはうれしい)。

@今日のフェリー

 ターミナルで乗船券を発券してもらい、しばし待合室で待ってから23時に乗船を開始した。もう夜も遅いため、自室へ直行である。
 なお今日のプランは、初日と同様のツーリストタイプ(カプセルホテルタイプ)であるが、運行会社のウェブサイトにあった船室案内の図を見ていた時、「下段しかない場所がある」ことに気付いたため、そこを事前予約してある。指定された場所に向かうと、やはり上段がないベッドであった。これならば立った状態で着替えらえるため、都合が良い。

@下段のみ

 しかも、写真では見えていないが、実は窓もあるのである。これも嬉しいポイントである。
 売店で買ったビールとスーパーで買っておいた安食材で一献し、就寝。

■2022.5.4
 目が覚めると6時半を過ぎており、船は佐渡島沖にいるようであった。日本海沖かなり遠い場所にいるため、携帯は完全に圏外である。
 私はタバコは吸わないが、テレビを見るために近くにあるスモーキングルームへと向かった。暇であるため、今日も船内イベントの1つであるクロスワードパズルを解きながらである。

@前方の景色

 最新型であったこれまでの2艘とは違い、船内の意匠も含めて若干の古めである(調べてみたら2004年就航とのこと)。ロビーも質素で大型テレビなどないし、風呂にも行ってみたが、もちろん露天風呂はなかった。
 最も「時代だなぁ」と思ったのは、ゲームコーナーであった。2世代前くらいのゲーム機が並んでいたが、いかんせん携帯圏外でやることがないため、これで遊んでいる乗船客もちらほらといた。

@昔の「ゲームセンター」的に

 船は秋田県沖にいるが、アナウンスによれば、これから揺れが予想されるという。であれば、酒を呑んで寝るだけである(揺れなくても呑むのだろうが)。しかも、本来なら10時台にある「姉妹船との行き違い」も、就航日の関係で今日はないという。
 カフェコーナーが10時で終了してフリースペースとなるためそこへ移動し(そこにもテレビもあるため)、売店で買ってきた「北海道らしいもの」と神戸で買っておいた乾き物系のツマミで一献である。テレビでは今日も良い具合に大リーグ中継をやっていたが、エンゼルス打線が淡泊過ぎて、一献を始めた時点でもう8回の表であった。

@昼前から呑む

 程よく酔っぱらってから、自室に戻って一眠り。起きると14時過ぎであった(この航路での数少ない心配事は北朝鮮からの「飛翔体」であるが、寝ている間に今日も発射されたようであった。ただし、日本のEEZには届かず)。天気は曇りに変わっている。
 船は奥尻沖にいて、やっと携帯電話もつながるようになった。

@奥尻島

 揺れは大きくなり、時折「ズドーン」という音がしている(船首が波にぶつかる音)。しばらくは携帯をいじっていたが、揺れがかなり大きくなってきてしまい「このまま起きていては酔ってしまう」と思ったため、眠くもないのに横になって時間を過ごした。
 積丹半島を越えて小樽に向かい始めると、揺れは穏やかになった。日も暮れて、定刻より6分遅れた20時51分に小樽港に着岸した。
 港から歩いて20分くらいの場所にある旅館に投宿し、コンビニ食材で一献してから就寝。

■2022.5.5
 今日は夕方に苫小牧港を出港する予定であり、それまでは鐡ネタの収集である。
 宿のすぐ近くにある南小樽駅で「一日散歩きっぷ」を購入した。

@今日はこれであちこち移動

 まず目指すのは、札沼線(学園都市線)のロイズタウン駅である。収支が厳しいJR北海道では、ここ数年は数多くの駅の廃止を実施してきたが、新たな駅の創設となると20年ぶりである。
 8時00分の列車で札幌に向かい、札沼線に乗り換えた。ロイズタウンには、9時28分に到着。今日はこの駅の近くにある道の駅とロイズの直売店に行く予定であり、そんなことをする人は多くないと思っていたが、意外に多い20人くらいが下車した。

@新しい駅

 道の駅まで歩き始めたが、私以外にも4人くらい同じことをしていた。距離としては徒歩20分くらいであり遠くなく、天気も良いが、いかんせん風がかなり強い。
 道の駅に到着し、あれこれと見て回る。地元のフランクフルトが美味しそうであったので、つい焼き立てを買ってしまった。
 なおゴールデンウィーク限定で、道の駅とロイズタウン駅とロイズ直売店をつなぐシャトルバスが運行されているという。風が強いこともあり、10時20分発のそのバスに乗ることにした。ほどなくして、ロイズの工場に到着した。

@でかい

 今年の1月に新たに出来た大きな直売所が併設されており、秋からは見学コースも設定されるという。それにしても、かなりの人で大混雑であった。
 ロイズ専用のシャトルバスに乗り、ロイズタウン駅へ。11時01分発の列車に乗り込んだ。
 さてこの次であるが、本来は追分駅の近くにある道の駅「あびらD51ステーション」に行こうと思っていた。目的は鉄道資料館である。しかし、旅行出発前にネットで検索すると、この日は「D51の屋外展示日」であった。「だったらラッキーじゃないか」と思われるかもしれないが、実は屋外展示日は安全のため資料館が閉鎖になってしまうのである。以前、キハ183系の屋外展示日に行ったことがあるため、私の目的は資料館だけなのである。
 仕方ないので予定を変更し、今日は美唄に行って夜用のツマミを買うことにしている。

@札幌で乗り換え(まだストーブあり)

 強風のため架線に物がからまったようで、一部の列車は遅れていた。札幌発12時08分の岩見沢行も13分ほど遅れて13時02分に到着したが、13時03分発の列車は連絡を取ってくれた。
 美唄で下車し、有名な焼き鳥(もつ串)の店へ。ゴールデンウィークということもあり大混雑(店舗前は大行列)であったが、もつ串については昨日のうちに(奥尻沖にいた時点で)電話予約をしているため、安心である。
 無事に入手して駅に戻ったが、出来立てでありまだ温かい。ということで、2本だけ食べてしまうことにした(残り8本は夜用に)。この串には「キンカン」を含む各部位が含まれているが、個人的に一番好きなのは一番手元にあるコリコリした部位である。

@美味い

 14時05分の列車に乗り、岩見沢へ。つい20日前に岩見沢で乗り換えたばかりなので、なんだか不思議な感じである。
 ここで30分以上の時間があったため、スーパーへ行って夜用のご飯ものを入手して駅へと戻ってきた。
 さて、ここからの移動は、敢えて室蘭本線である。特別に良い景色があるわけではないが、超ローカル線であるのに豪華な複線区間を走行するこの路線に乗るのは、大昔に石炭で賑わっていた時分を思い出させるようで、いつも面白い。
 車両であるが、先ほどの美唄から岩見沢まで乗った列車と同様にキハ40系かと思っていたが、待ち構えていたのはキハ150系という車両であった。

@1両のみ

 15時05分、岩見沢を出発した。苫小牧までの所要時間は1時間半弱である。1両だけの列車が走る複線の路盤が、特急が頻繁に走る単線の石勝線と合流する区間は、趣があった。
 鹿のため一部で徐行し、苫小牧には16時33分に到着した。急いでバス乗り場へ行き、無事に16時35分発の路線バスに乗り込んだ(なおこれに乗り遅れたとしても、札幌からのバスが苫小牧駅を経由して16時40分に出発するので、問題はない)。
 十数分バスに乗り、フェリーターミナルへ。乗船手続きをしたが、カードキーのようなものが渡された。

@ビジネスホテルのよう

 乗船開始までまだ時間があるため、ターミナル内にあるミュージアムに行ったり、展望デッキに行って見たりした。大洗行だけでなく、仙台(名古屋)行と八戸行も係留されているため、非常に豪華である。
 17時45分、乗船開始となったため船内に入った。自室へ向かうが、もちろん今日もカプセルホテル形式(コンフォート14,920円)である。ここのネット予約の場合は事前に場所を指定できないため、今日は残念ながら上段であった。

@こんな部屋

 狭くて圧迫感はあるが、テレビが付いているので良しとしよう。なお、今回はゴールデンウィークであるため値段が高いが、通常期であればフェリー前後の長距離バスも付いた格安プランがあるので、おすすめである。
 風呂へ行き、この時点でまだ18時過ぎである。出航前であるが、もつ串で一献を始めてしまうことにした。
 18時40分過ぎ、エンジン音が大きくなったので自室からデッキまで移動してみると、フライングでもう出港していた。フェリーによる日本一周の旅、4回目の(最後の)出港である。

@さようなら北海道

 ちなみに、美唄のもつ串を買おうと思った理由の一つとして、この船にはレンジが置いてあるというのもあった(今回の旅でこれまで乗った船にはない)。2本ずつくらい温めて、自室内で美味しく頂いた。

■2022.5.6
 5時前に起床。残念ながら靄っていて、朝日は拝めなかった。
 これまでの船には「シアタールーム」のようなものがあり、そこで上映会などのイベントが開催されていたが、この船にはそういうスペース自体がない。各部屋に必ずテレビが付いているので、そこで鑑賞するというスタイルのようである。
 8時頃になると靄も取れて、やっと晴れ間も見えてきた。

@快晴へ

 風呂に行ってサウナにも入り、この時点でまだ9時前である。しかし、イベントもないし(クロスワードもない)、テレビは途切れ途切れであるから、また今日も呑んでしまうことにした。やることがない日曜日に昼前から呑んでいると「不健康だな」と思うだけであるが、流れていく海を見ながら呑む酒は一味違う感じである。
 ただ単に呑むのでは面白くないので、売店で「せめて北海道らしいもの」を買い揃えた。

@もう北海道ではないですが

 その後は自室で少し寝て、12時以降はロビーで時間を潰した。波は穏やかである。
 福島沖以降はずっと陸地が見えていたが、13時を過ぎるとだんだんそれが近づいてきて、定刻よりかなり早い13時38分に大洗港に着岸した。

@船の旅はここで終わり

 さてこの後の移動であるが、鹿島臨海鉄道で水戸に行ってJRで移動したのでは、芸がなくて「鉄分不足」である。そこであれこれ考えて、まずは鹿島臨海鉄道で新鉾田へ行き、そこから鹿島鉄道の代替バスに乗ることにした。
 時間に余裕があるため、まずはフェリーターミナル近くにある「めんたいパーク」へ寄り、歩いて大洗駅へと向かった。
 その途中、なんだか駅舎っぽい新しい建物を発見した。説明書きを見てみると、茨城交通水浜線の駅跡であるという(建物はもちろん新しいもの)。意外な鐡ネタとの遭遇であった。

@偶然

 大洗駅に到着し、15時05分の列車で新鉾田へと向かった。15時27分到着。
 代替バスである「かしてつバス」(関鉄グリーンバス)であるが、新鉾田駅から乗ることもできるが、ここはやはり鹿島鉄道の終着駅であった鉾田駅から乗るべきであろう。駅から20分ほど歩いて、現在はバスターミナルとなっている鉾田駅へ向かった。
 駅舎はなくなっていたが、ホームは残されていた。しかし、「人の手が入らないとこうも朽ち果てるのか」というくらい、ボロボロであった。

@廃墟

 新鉾田からバスがやってきて、16時15分に鉾田駅を出発した。出発してしばらくすると左手に鉄道用の橋が見えたりしたが、それ以外はほとんど廃線跡を感じることができない(玉造駅や小川駅付近くらいである)。ではなぜこの路線に乗ろうとしたのかというと、石岡駅付近が鉄道の路盤後を道路にしたBRTになっているからである。
 鉾田から55分近く乗車し、四箇村からやっとBRT区間となった。

@専用道路

 ここのBRTであるが、三陸にあるBRTのように時刻や退避場所が詳細に決められている訳ではなく、至る所に退避場所があり、運転手同士で阿吽の呼吸で行き違っているようであった。鉄道関係の施設はほとんどなかったが、一部ではホームが残っている駅もあった。
 17時25分、石岡駅に到着した。ここから先は、JRで普通に帰るだけである。

 6泊7日のフェリーによる日本一周であったが、各地で時間があったこともあり、実質は福岡・兵庫・北海道・茨城の鐡旅を行って、それらを船で繋いだたような感じであった。それでも、面白い体験であったと思う。

@大洗駅はこんな状態

 

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