中欧周遊その1(ドイツ、チェコ前半、オーストリア編)

■はじめに
 今回の行先は中欧諸国(ドイツ、チェコ、スロバキア、オーストリア)であるが、旅行前に綿密な旅程を練ることが多い私にしては珍しく、出発の1か月くらいになってバタバタと決まったものである。
 今年は10連休となるため、航空券自体はかなり早めに押さえておいた(連休初日ではあまりにも高いため、成田出発は30日のフランクフルト行にし、復路はプラハ発ヘルシンキ経由で、火曜の朝9時に成田に到着して会社には遅刻することにした)。さらに、5日間有効のレイルパスも、割引期間のうちに早めに買っておいた。
 行先であるが、最初はポーランドなどを考えていた。しかしあれこれ検索すると、指定券が必要な特急ばかりである。レイルパスの一番の恩恵は「ふらっと乗車できる」「非常時には次の列車に変えたり、旅程自体を変えたりすることができる」点であり、事前予約は自身の首を絞めるだけである。
 調べて見ると、ハンガリーなどもそういう列車が多い。ということで、「ドイツ→ポーランド→スロバキア→ハンガリー→チェコ」という素案は却下し、当初は頭になかったオーストリアを足し、チェコやスロバキアなど「予約なしで乗れる優等列車が多い国」だけを回ってくることにした。ポーランドやハンガリーは、その国目的で「レイルパスなし」で訪問した方がよさそうである。

【旅程】
1日目:成田からフランクフルトへ移動(フランクフルト泊)。
2日目:ライプチヒへ移動。プチ観光後、ドレスデンに移動して交通博物館へ。プラハへ移動(プラハ泊)。
3日目:リンツへ移動。プチ観光後、ザルツブルク経由でクラーゲンフルトへ移動(クラーゲンフルト泊)。
4日目:ウィーンとブラチスラバ経由でコシツェへ移動(コシツェ泊)。
5日目:ブラチスラバへ移動(南回り)。プチ観光後、プラハへ移動(プラハ泊)。
6日目:ヘプへ日帰り観光。午後はプラハ市内観光(プラハ泊)。
7日目:ヘルシンキ便に搭乗し、成田便に乗り継ぎ(機内泊)。
8日目:朝、成田到着。

@プラハ駅にて

■2019.4.30
 成田に向かい、11時25分の便でフランクフルトへ。フランクフルト空港駅の券売機での切符購入も、もう慣れたものである。
 手順や景色はいつも通りであったが、地下駅の引込線に作業用の車両が係留されていたので、鐡旅第一日を記念して、ぱちり。

@何用でしょうか

 前回も利用した駅近くの安ホテルに投宿し、近場のスーパーとファストフード店で食材を買い漁って部屋で一献してから、就寝。

■2019.5.1
 ドイツで一番の心配事は「ストライキ」であるが、今日は無事に運行されそうである。
 中央駅に向かい、6時14分発のベルリン行ICEに乗り込んだ。食堂車を挟み、セカンドクラス7両、ファーストクラス4両である。今回はファースト用のレイルパスを買っているため、後者に乗り込んだ(物価が安いチェコやスロバキアを周るため、あまりお得感はないが、自由に座れる・空いているのがファーストの特権でもある)。

@今日はこれから

 定刻に出発。フルダやアイゼナハを経由し、高速の路盤では260キロも出たが、途中2回ほど急ブレーキもあったせいで、定刻より3分遅れの9時14分にライプチヒに到着した。
 気分転換も兼ね、ここで大聖堂などを適当に2時間ほど観光。メーデーのデモが闊歩する駅前に戻り、続いては11時30分発のドレスデン行ICである。

@清掃中

 2階建ての短編成(5両)であるが、ファーストの座席も少しだけある。
 定刻に出発し揺られること1時間強、ドレスデンに到着した。
 さて、ここに来たのは所謂「リベンジ」のためである。前回のドイツ訪問(「ストと戦い、菜の花に癒される」2015年5月実施)の際に、旅行途中でストに直撃され、訪問予定であったドレスデンの交通博物館を削除せざるを得なかったのである。
 ということで、駅から歩いて件の博物館に向かった。

@立派な建物

 「鉄道博物館」ではないため展示されている車両の数は限られているが(10両程度で、客車の類は1両だけ)、とにかく訪問することが出来たので御の字である。まずは鉄道関係を見てから、バイクや車などの展示も見て、さらに上層フロアにある他の展示(船や模型全般など)にも目を通した。

@鉄道関係(SLが多い)

 その後は近場にあった教会などの古い建物群を見学し、駅へと戻った。
 続いて乗るべきは、チェコのプラハへ行く15時10分発のECである。ホームで待っていると、ほどなくして入線してきた。機関車を先頭に、ファースト1両、食堂車、セカンド5両の編成である。

@チェコ国鉄の機関車

 定刻に出発。しばらくすると、左手に川が沿い始めたので、そちらの席に移動した。だんだんと山も多くなり、観光ガイドにある通り古城もちらほらと見えてきた。そのうち、車内サービス(ファーストのみ対象)として水のペットボトルが配られた。
 いつの間にか、チェコ国内に入っていた(駅の意匠が変わったので気付いた)。川は相変わらず左手に沿い続けているが、時折小さな列車が分岐している路線を走っていたりして、「次回はセカンドのレイルパスでああいうのを巡ってもいいな」と思わせるものであった。

@あれにも惹かれる

 プラハが近づくと、車掌が各座席の上に座席指定の紙を大量に挟み始めた。見てみると、プラハからブラチスラバ(スロバキア)までが多い(どうやら、プラハ到着後にこの列車はブラチスラバ行になるようである)。今後の旅程ではブラチスラバからプラハまで乗車する予定であるが、意外に混雑する区間であるのかもしれない。
 プラハには、17時26分に到着した。駅舎内のスーパーで食材やビールを揃え、駅前すぐの安ホテルに投宿。

■2019.5.2
 今日の第一弾は、6時01分発のリンツ行である。後ろからファーストが1両、セカンドが3両という短い編成であるが、1両だけで選択肢がないファーストはコンパートメント車両であった。

@編成は掲示もされている(実際はこれより1両少なかったが)

 コンパートメントは景色が遮られるため、個人的にはあまり好きではない。普通座席のセカンドの方が景色を見やすいが、ここは敢えてファーストの一室に陣取った(よく言えば「個室独り占め」であるし)。定刻に出発。
 昨日の列車は「快走する」感じであったが、今日は若干スピードも遅く、のんびりと走っていく感じである。菜の花畑を過ぎると、なんだか工事中のような雰囲気になってきた(実はこれは「伏線」であった)。最後尾であることを思い出し、その様子を撮影。

@工事中

 行き違う列車には普通サイズの車両も多いが、時折小さなサイズの車両も見かける(昨日も見たような奴)。なんとかそれを撮影したいと思っていたが、7時22分に到着した某駅でやっとその姿を捉えることができた(途中下車すればいくらでも撮影できますが、乗ってばかりの旅ですので)。

@こういう車両

 田舎風景・時折工場、のような景色の中を走り続け、8時07分にチェスケー・ブジェヨヴィツェに到着した。
 停車中に自室でゆっくりしていると、先ほど検札に来た車掌が「バスに乗り換え」と英語で言ってくるではないか。一瞬戸惑ったが、要するに不通区間の「代行バス」である(つまり、この先はより本格的な工事になるため、バス移動となるのである)。
 改札を出るときちんと案内板もあり、代行バス乗り場に無事辿り着くことができた。

@まさかのバス旅に(チェコ国鉄のマーク付)

 リンツ方面へのバスには、15人くらいが乗車した(4両もあったのに)。私は左の一番前に座ることができたが、出発前に運転手が右の一番前に座っていた乗客に「1列後ろに」みたいなことを頼んでいた。するとそこに車掌が乗ってきたので、これは一安心である(何か不明な点があれば彼に訪ねればいい)。
 さて、予想外のバス旅であるが、時差ボケで少し眠くなっていたので丁度いいネタである。まるで北海道のような景色の中を、バスは走り続けた。道路上で行き違う「チェコ国鉄マーク付のバス」の多いことときたら。

@意外性の旅

 1時間弱走ると、脇道に入り踏切を何回か通過したので、列車に乗り換える駅も近づいてきたようである(しかし、この時点でまだ行先は把握していない)。バス車内では、携帯で電話をしながら車掌に切符を見せてあれこれ尋ねている客もいる。恐らく、リンツでの乗り継ぎがあるのだろう。
 9時20分、係留されている車両が見えてきて、駅に到着した。駅名票には「Summerau」とある。いつの間にか、オーストリアに入っていたようである。

@待ち構えていた車両

 赤いオーストリア国鉄の車両は、9時25分に出発した。残念ながらファーストは連結されておらず、最後尾のセカンドクラスに陣取った(なお、付き添ってきた車掌はここまでであり、恐らく折り返しの代行バスで勤務するようであった。こちらの車両には、オーストリア国鉄の車掌が乗車している)。
 臨時便扱いであろうが、小さな駅にいくつも停車していった。どれだけ遅れるのかと思っていたが、リンツ到着は定刻からたった21分遅れの10時28分であった。
 元々ここで2時間以上余裕を持たせていたので、何も問題はない。まずは市内散策である。

@豪華な聖堂の写真などたくさん撮ったが、敢えてこれを掲載

 あれこれ散策して、駅へ。30分弱の中途半端な時間があったが、国鉄のラウンジ(ファースト用レイルパス所持者は利用できる)があったので、そこで無料のコーラを飲んだりお菓子を食べたりして一休みした。
 さて、続いて乗るのはオーストリア国鉄を代表するレイルジェットである(ドイツ周遊時にザルツブルク行に乗ったことがあり、それ以来の乗車である)。
 12時32分、見覚えのある車両が入線してきた。

@これで快走

 出発後はぐんぐんとスピードを上げ、車内表示での最高速は200キロであった。高速走行を楽しんでいるうちに、あっという間にザルツブルクに着いてしまった。13時48分到着(定刻ぴったり)。
 さてここで、24分の乗り換え時間で次の列車に乗る予定である。今回の旅程では「乗り換え時に小観光をする」ことにして、2時間程度空けるようにしていたが、先述した通りザルツブルクは訪問済みであるので、今回はパスである。
 ということで、次に乗るべきは14時12分発のクラーゲンフルト行である。14時02分に入線してきた。

@次はこれ

 先頭の機関車は先ほどのレイルジェットと余り変わらないが、客車部分はかなりのボロ車両であった。ファーストに陣取ったが、ゴツイ形のシートであり、リクライニングが戻らない状態である。
 定刻に出発すると、路盤は山並みが連なっている方面へと近づいていった。その後はトンネルの連続になり、それを抜けると左手にはすばらしい景色が広がってきた。

@絶景

 路盤は登ったり降りたりを繰り返し、その度に蛇行したり、そして路盤がまっすぐになれば快走したりしている。長いトンネルを抜けると、今度は右手に景色が広がった(逆光で撮影できず)。
 じきに路盤も平坦となり、街も近づいて来た。もう見所は終わりかと思ったが、今度は湖のお出ましである。

@こんな感じ

 17時18分、クラーゲンフルトに到着した。まずはホテルに荷を置いて、市内散策である(明日も早朝出発のため、徒歩観光は今日中にしなければならない)。観光後はスーパーで食材やビールを買い込み、いつものパターンである。

■2019.5.3
 宿のWi-Fiがイマイチであったため5時過ぎには駅に行ってメールをベンチで読んだりして、それからホームへと向かった。5時47分に入線してきたレイルジェットに乗り込み、定刻の49分に出発した。

@ファーストの車内

 200キロ近くで快走したり、80キロ程度で蛇行したりを繰り返しているうちに、窓に雨粒がぽつぽつと当たり始めてしまった。
 8時10分、ミュルツツーシュラークを通過。ウィーンからここまでの区間は、今から3年半前に乗車済みである。駅近くの左手には、前回入ることができなかった鉄道博物館が通り過ぎていった。
 さて、この辺りは世界遺産でもあるため、当初はセメリンク駅で途中下車しようと思っていたが、スロバキア国内での鉄道が意外に時間を要するため、今日の午前はどこにも寄ることができないスケジュールになってしまった。

@今回も通過(セメリンク駅)

 セメリンク駅を過ぎると、右手に景色が広がっていった。残念な空模様であるが、そちらの席に移動して景色を見続けた。蛇行する路盤のせいで、時速は50キロまで落ちることもあった。
 じきに平地となり、定刻の9時35分にウィーンに到着した。ここで次の列車まで45分程度の時間があるが、観光名所まで行けるほどの余裕はないし、そもそも雨模様であるので、今日もラウンジで一休みすることにした。

@無料はありがたい

 飲み物+お菓子を頂きつつ30分ほどラウンジを利用してから、おもむろにホームへ。これから乗車するのは、ウィーンとブラチスラバの間を1時間に1本程度シャトルのように運行されている列車であり、セカンドのみの5両編成である。地味な存在であるが、一応「国境越え」もする。

@こんな車両

中欧周遊その2(スロバキア、チェコ後半編)に続く

 

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