【非鐡の旅C】ドルニエで行く伊豆諸島

■はじめに
 私はこれまでに数多くの航空路線に搭乗しており、大手の航空会社が就航している空港で未だ訪問していないのは、三宅島・北大東・南大東の各空港だけである。
 しかし、その他のコミューター路線等については、まだ利用していない航路がいくつかある。灯台下暗しで、東京にある調布空港発着路線がその一部分である。今回は、私にとって初体験の調布・新島・神津島の各空港を訪れることにした。
 旅行先と旅程に関しては特に風変りなものは含まれていないが、簡単に著しておきたい。

@新島空港にて(この雲の低さで着陸できたのは奇跡かもしれない)

2012.6.16
 雨が降り出してきた中、JRと京王線を乗り継いで西調布へと行く。調布空港へのアクセスは本数の少ない路線バスかタクシーが推奨されているが、この駅からなら歩ける距離でもある。結局、少し早歩き気味で、約25分で到着した。
 航空券は旅行代理店で入手済みであったが、この航路は「有視界飛行方式」が原則ということで、今日の雨模様のせいで「天候調査中」となっている。ほぼ同時刻に新島・大島・神津島行があるが、幸いに新島行だけが最初に運行決定となり、搭乗手続きが始められた。

@天候調査中でした

 手荷物はすべて預け、ポケットの中身等だけの簡単な検査を受け、ロープで区切られただけの待合室(?)へと移動する。今回搭乗するのはドルニエ228-212という機種で19人乗りであるが、待合室にいるのは私を含めても3人だけであった。
 しばらくすると搭乗案内があり、歩いて機体へと向かう。名前が呼ばれて、それぞれが指定された列に座ることとなる(座席は、重さのバランスを考慮して割り当てられる)。

@エンジン後部から、起動時に火を噴くことが判明

 ほぼ定刻の830分頃に乗り込み、その5分後くらいに離陸した。右手下には、味の素スタジアムなどが見える。今日は雲が多いので下界は見えたり見えなかったりではあるが、晴天ならば見応えのある眺めであろう。
 詳細な航路図がないのでどの辺りを飛んでいるのか最初はわからなかったが、そのうちに大船らしき上空を通り(駅ビルとモノレールから判断)、しばらくすると海上に出た。

@雲厚し

 30分ほどすると左手に大島が見え、大きく旋回し西側から新島空港に接近し、99分ころに到着した。空港のビルは意外にも立派であり、売店なども完備している。
 本来はレンタサイクルを借りて島内を一周する予定であったが、今日は雨が降っているためそれは諦め、とりあえず傘をさしながら歩き出し、町内の観光スポットなどを見て回った。その後はスーパーで地の刺身などを買い、それを強風の吹き荒れる海岸の東屋で頂いた。

@旅行中は、できる限り「地のもの」を頂くようにしている

 徒歩で行ける範囲も限られるため、当初の予定(夕方の連絡船で式根島へ行く予定)を変更し、11時30分の連絡船に乗ることにした。
 式根島へ渡り、雨の中を散策する。与謝野晶子の歌碑を見てから「松が下雅湯」へと行くが、あまりにも雨が酷く、下半身はほぼずぶ濡れになってしまった。どうしようかと思っていたところ、「憩の家」という温泉施設を見つけたため、そこで風呂に入ってしばらく休むことにした。

@散策中に見つけた穴(中は温泉の湯気で満ちている)

 雨の勢いは収まらないため、温泉施設を出て島を左回りで歩き、予約済みの宿に午後2時半くらいにチェックインしてしまった。宿の猫と遊び、その後はテレビを見ながらゆっくりし、海の幸いっぱいの夕食を頂いて、そのまま寝てしまった。

@海の幸

■2012.6.17
 神津島に行く船は昼までないため、朝食を済ませてから荷物を纏めて、今日は島の西側へ行くことにする。時折雨が降り、風がかなり強いためこのままでは飛行機は欠航になりそうな雲行きだが、天気予報によれば午後には回復する予定である。
 強風の中をひたすら歩き、大浦を眺めてからは遊歩道を歩き始める。巣作りでもして警戒しているのだろうか、狂暴なカラスに襲われながらの散策である。

@海は時化ているが、湾内は平穏

 しばらく歩くと藪の中から高台に出て、道なりに坂を上り続けると神引(カンビキ)展望台である。空は晴れてきたが、山頂の風は凄まじく、下手をすると吹き飛ばされて崖下に転がり落ちそうな勢いであった。

@かなり高くまで登ってきた

 展望台からは再び左回りで島内を適当に一周し、昨日は大雨のために瞥見しかできなかった地鉈温泉へ行き、それから再び島の中心地へと戻った。公衆電話があったので(私の携帯はPHSであるため島では使用できない)、航空会社に連絡してみたところ、朝の1便は悪天候のため欠航したということであった。
 フェリーターミナルへ行き、神津島への高速船の券を買ってしまう。ここから東京行の高速船に乗れば、確実に帰ることはできる。神津島へ行って夕方の飛行機が飛ばなければ、そこで手詰まりとなり月曜も休まなければならなくなるが、もう航空券は買ってしまっているし、せっかくだから天候の回復にかけるしかないだろう。
 25分ほど遅れてきた高速船に乗り込み、揺られること約25分、神津島に到着したのは12時50分であった。

@港の近く(青空も見えてきた)

 今日は海が荒れているため、島の西側(前浜)ではなくて島の東側(多幸湾)に着岸した。下船時に係員に尋ねると、「バスがあちらにあります」というので行ってみたが、何も見当たらない。村営バスの停留所ならあるが、そのバスは、我々をあざ笑うかのように1250分に出発してしまっている。
 待合室の建物内に入り係員に尋ねてみると、送迎の類はなく、村営バスを利用してくださいとのことであった。このシステムに異を唱えるつもりはないが、だったらバスも3分程度は待ってくれてもよさそうなものである。しかもバスは1日に5本しかなく、次の出発は1415分である。

@とりあえずモニュメントを写す

 悲惨な状況に置かれてしまったのは私を含めて4人、そのうち1人はすぐにどこかへ消え、旅行者らしきもう1人も「仕方ないので歩きます」と消えて行った。残されたのは、私ともう一人の年配の方である。
 しかしその人は、「なんとかなりますよ」と落ち着いている。港で作業していた関係者が一斉に車で消えていき、最後になって○○○ー(全国的には白黒が多い乗り物で、サイレンが付いている)がやって来ると、その人は「訊いてみましょう」と近づいていき、「すみません、バスがないんでお願いできますか」と依頼した。
 結果は、若い○○官が我々の悲惨な状況を考慮してくれたため、意外にも承諾してもらえた。もちろん、一般的に○○○ーはそのような使用をしてはならず、今回の場合はあくまでも特例である。我々に対する扱いも、「道に迷った」ということにしてもらえた。
 年配の方が落ち着いていたのには理由があり、住民票こそ移してはいないが、神津島の住人ということであった。島内事情を知っていればこそ、このような無謀(?)な依頼ができたのであろう。
 奇特な体験の送迎により、私は前浜で2時間ほどの空き時間を持つことができたため、神津島温泉方面に小一時間ほど散策をした。青空も次第に多くなり、これなら飛行機も確実に飛ぶ天気である。

@○○○ーの若い○○官のおかげで、神津島観光ができました

 その後は町中を適当に歩き、フェリーターミナルに近い「よっちゃーれセンター」で赤いかの塩辛などの土産を買い、件の村営バスで空港へと向かった(フェリーの件は、あえて運転手には言わなかった)。山道をくねくねと走り続け、1520分くらいに空港に到着した。
 本来の時刻表であれば、調布からの便が1535分に到着し、それが折り返し1610分発となって飛び立つはずである。しかし、すでに駐機場には1機のドルニエが停まっていた。

@神津島空港にて

 早々に荷物を預け、35分着の便を待っていたが、なかなか到着便は現れない。そうこうしているうちにアナウンスがあり、身体検査を受けて搭乗待合室へと案内されてしまった。時刻はまだ15時40分、出発までまだ30分もあり、こんな何もない空間で待つのはしんどいと思っていたら、その2分後には機体へと案内されてしまった。
 詳しい理由はわからないが、調布からの昼の便は来ず(欠航にはなっていないので、もしかして搭乗者がいなかった?)、また何かしらの理由で神津島に機体が余っており、そして搭乗予定の人間がすべて揃ったため、定刻よりも早く出発することになったようである。
 帰りの便も、乗客は私を含めて3人だけであった。

@前方に人なし

 定刻より25分早発となる15時45分、エンジンに火が入った。機器の確認が済み、48分に離陸、すぐに機体は神津島上空へと舞い上がった。幸い右側の座席になったため、式根島・新島・利島・大島と、大小さまざまな島が右下に順繰りに流れていった。

@形が一番かわいいのは利島(カブトガニ系)

 本州に近づいてからは、三浦半島の西側を通り、逗子市のほぼ上空を超えて行った。往路ではあまり下界が見えなかったが、おそらく往復ともほぼ同じ航路なのであろう。大型旅客機に比べて高度が低いため、家々が手に取るように間近に見えている。
 調布空港到着は、定刻より30分早着の16時25分であった。雨後の晴天による蒸し暑さの中、西調布駅へと歩き出した。

@トビウオ(お土産として、実はトビウオの干物も買いました)

 

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