上海と厦門で鐡ネタ拾い

■はじめに

 今回の訪問先は中国である。未乗車の路線は山ほどあり、特に奥地にはたくさん残っているが、週末+1日の有休だけで行ける範囲ではない。そこで今回は、「日系の航空会社が就航している都市で未訪問のところ」という理由だけで、厦門(アモイ)へ行くことにした。
 上海から厦門への移動となるが、5年前に厦門北を経由する高速鉄道が開通してからはそちらがメイン(幹線)となり、在来線で両都市を結ぶ寝台列車は今となっては1往復のみである。よって選択肢はそれしかないので、もう何度もお世話になっている上海の旅行社に切符を依頼しておいた。旅行社の努力(上段が出てしまった場合はキャンセルする等)のおかげで、今回も無事に下段を押さえることができた。
 列車は快速「K1209」であり、上海南を19時20分に出発して、厦門に到着するのは翌日夜の20時30分(乗車時間:25時間10分)である。高速鉄道なら約6時間半〜8時間半で移動できるのであるから、この列車に通しで乗る人は少ないと思われる(高速鉄道が通らない都市の人にとって、重宝されるであろう)。

@行先票

■2016.4.16
 9時50分成田発の便に搭乗し、約25分ほど遅れた12時20分に上海浦東空港に到着した。イミグレにも40分を要して外に出たのは13時過ぎであったが、急ぐ旅ではないので問題はない。
 市内への移動であるが、地下鉄で充分である。しかし、せっかくだからリニアに乗ることにしてみた(今回で2回目)。
 前回は現金で切符を購入したが、今回は交通カード(ICカード)を利用することにしている。これを使えば、各種割引などがあり、わざわざ切符を買う必要もなくなる(詳細は別途お調べください)。

@カードを逆さに持ってしまいました

 13時17分のリニアがちょうど出発したばかりであったため、しばらくコンコースの待合場所で待っていた。中央にはリニアの模型と説明版があったので、それを見て時間を潰してみる。交通手段毎の速度比較があったのだが、地下鉄(地鉄)の説明部分にある写真が「昔のJR中央線」なのはご愛敬である。

@地下鉄ではありません

 リニアに乗り込み、13時32分に出発した。終点までは「あっという間」である。車内に速度表示があるが、最高でも300キロ程度(430キロの宣伝文句は???)であり、揺れも結構ある。JR東海の社長が「中国のリニアはおもちゃ」と揶揄して大反響があったが、確かにそう言いたくなる気持ちはわからなくはない。

@おもちゃ?

 さて、まだまだ時間はある。いつものパターンで「鐡ネタ」を、ということで、今回は路面電車に乗ることにしている。
 地下鉄で空港方面へ1駅戻り、張江高科で下車した。ここから、路面電車が出ているのである。
 駅を出てふと気づいたのだが、地下鉄でも路面電車でもない「鉄道用の高架」が続いているのである。外に書いてある漢字を読んでみると、何やら訓練用路線のようである。偶然であるが、これも鐡ネタであろう(帰国後に調べてみると、以前はこの高架が地下鉄であったとのこと。延伸に伴い地下化され、残された高架部分が訓練路線になったという)。

@予想外の収穫

 訓練線の南側に回り、路面電車の駅を発見した。そそくさと近づいて乗ろうとしたが、あと30メートルというところで出発してしまった。次の出発は25分後ということで、しばし近所の商店街などを散策である。
 駅へ戻る際に気づいたのであるが、レールが1本しかないのである。1本だけで走れるわけではないので、普通の鉄道とは違う構造になっていることは間違いない。

@違和感

 しばらくすると、路面電車が近づいてきた。外からは見えないがタイヤが付いているようであり、レールは「行先を定めるだけのもの」のようである。鉄道というよりは、トロリーバスの方が近いのかもしれない。
 取り急ぎ、列車に乗り込んだ。

@パッと見は鉄道ですが

 乗車料金は2元であるが、地下鉄と乗り継ぐと安くなるようである。
 14時25分、定刻に出発した。車掌が料金を回収に来るが、ICカードの人はカードを見せるだけで良い(乗車時にカードを機械にかざしているので)。しかし、車掌は乗客がカードをかざしている場面はチェックしていないので、なんだか不十分な検札である(細かいことは気にしないのであろう)。
 出発して気づいたのであるが、加速と減速が半端なく急なのである。やはりこれは、ゴムのタイヤだから出来る技であろう。鉄道は坂に弱いのであるが、この「電車バス」は、もろともせずに小山状の橋を乗り越えたりしている。

@車内からの風景も鉄道ですが(実はバス)

 終点まで乗っても仕様がないので、地下鉄2号線と交差する付近で下車した。
 その後は地下鉄を乗り継ぎ、上海南駅へ。この駅には来たことがあるため、予約票を切符に交換するのも慣れたものである。今回も、無事に手にすることができた。

@まぶしい

 南口に隣接している商業施設で持ち帰りのチャーハンと鶏肉を買い、駅の売店でビールや水を買って19時前に待合室に入ると、もうすでに改札が始まっていた。いそいそとホームへ降りていく。
 編成は、1号車が欠番で2〜8号車が硬臥(3段寝台)、9号車が私が乗る軟臥(2段寝台)、10号車が食堂車である。その先は硬座(普通席)なのだが、末尾が17号車という電光掲示を見て最後尾まで行くのは諦めてしまった。明日何回か長時間停車があるので、その際に確認すればいいだろう。

@中国の長距離列車は長編成が基本

 ホームの反対側には、こちらの14分後に出発する昆明行が停まっている。かなり興味を惹かれるところであるが、先述した通り、この手の列車に乗ろうとすると、夏休みか年末年始の長期休暇に予定を合わせなければならない。
 あちらの各車両の横には、何かしらの記念を意味するようなことが書かれている。私は中国史に詳しくないのでピンと来ないが、知る人ぞ知る内容なのかもしれない。

@昆明と関係あり?

 9号車の入口にいる車掌に切符を見せ、中に入っていった。たいていは先客がいて室内のリネン類などが荒らされていることが多いのだが、人気列車ではないため、綺麗なままであった。

@一番乗り

 出発を待たずに、早速始めることとする。別の旅行記に書いたが、波長がいまいち合わない中国に私が来るのは、これ(夜行列車で一献)をするためなのである。

@左の袋はチキン

 アルコール度数の低いビール(2.5〜3.2%程度)を呑んでいると、定刻の1分前である19時19分に列車は動き出した。
 後は、適当に酔っぱらって寝るだけである。出発しても私のコンパートメントは1人だけだったので、今日は気兼ねもいらない。

■2016.4.17
 5時過ぎに起床。寝入った後に時折目を覚ました際は「いかにも高速走行をしている」という音だったが、今は「いかにも山中」という感じである。上海から厦門への移動は海岸沿いが一番近いが、この列車は内陸部の都市(三明など)を経由していくのである。
 途中どこかでスイッチバックをしたようで、出発時とは進行方向が逆になっていた(向かい側に、赤ちゃん連れの母親も乗車している)。

@朝靄の中

 5時40分、定刻から4分の遅れで資渓に到着した。田舎町であるが、意外に下車する客もいるようである。停車時間を短縮し、定刻の5時45分に同駅を出発した。
 しかし次の駅である光沢では行き違いに時間を要して定刻から29分遅れとなり、その次の邵武では56分遅れとなってしまった。厦門着は夜の20時半であるので、あまり遅れてはほしくない。

@単線なので、待たなければならない

 朝靄は消え、晴れ模様になってきている。出発前に上海と厦門の天気を調べた際には曇りや雨であったのだが、内陸部は少し違うようである。
 名称は不明であるが、ずっと大きな川に沿って走り続けている。走り続けていくにつれ、その川幅が次第に大きくなっていった。

@このような感じ

 順昌には9時58分に到着し、10時01分に出発した。遅れは38分まで縮まっている。
 11時過ぎに弁当売りのワゴンが来たので、早速購入した。特段に旨いわけではないが、車内で弁当を買うのも中国鐡旅の楽しみの一つである。
 肉が少なく(串焼き以外にも右側にあるウリの炒め物に肉が入っていたが、ほとんど「鶏ガラ」状態の肉)、見た目はどうかなという感じであったが、味付けは良い部類に入るものであった。

@美味しく頂きました(20元)

 12時を過ぎると、かなり大きな町に入っていった。高層ビルなども多いが、この列車の次の停車駅は三明であり、予定時刻は12時39分である。列車の遅れを考慮すると到着は13時は過ぎるはずであり、「こんな大都市を通過するなんて変な設定だな」と思っていると、12時13分に駅に到着した。駅名票を見ると、まさかの三明である(26分の早着)。
 車掌に出発時間を確認し、ホームへ降りてみた。まずは先頭に行って機関車の写真を撮ろうとしたが(ウェブサイト作成には必須の写真)なんと先頭がホームから外れているではないか。

@無念

 帰りながら、編成を確認する。16号車が欠番であり、11〜17号車はすべて硬座であった。
 ホームに売店でもあれば暇つぶしになるが、皆無である。仕方がないので車内に戻り、自室でしばらく昼寝をした。
 あれほど早着したのに、同駅出発は定刻から6分遅れの13時05分であった。次の停車駅は永安であり、定刻から12分遅れの14時00分着であった。こちらでも、意外に多くの客が降りて行った。
 同駅出発後、沿線風景はさらに山深いものになっていった。晴れていれば渓谷美が見られるのかもしれないが、生憎小雨模様になってきている。

@よく言えば山水画風

 15時過ぎ、停車予定のない峠の小駅で停車した。しばらくしてやって来た対向列車は、上海南行であった(1往復しかない、こちらの相棒)。
 この駅を過ぎると路盤は明らかに下りとなり、「峠の境が天気の境」ではないが、大雨になっていった。
 16時05分、ショウ(さんずい+章)平に到着した(定刻より8分の早着である)。今度こそ、と思ってホームに降りて先頭まで行ってみると、またしても先頭の機関車がはみ出しているではないか。

@無念その2

 硬座付近を見てみると、かなりの乗客が乗り込んでいる。やはりこの列車は、区間での需要が多いのであろう(通しで乗るためにあるわけではない)。同駅を定刻の16時38分に出発した。
 雨も強くなったため、もうこれから先は綺麗な写真は撮れそうにない。19時27分にショウ州東に到着し、長大な橋を渡って終点の厦門に到着したのは5分早着の20時25分であった。とにかく、時刻設定が曖昧な列車である。
 厦門駅は改装(というか全面的な新築)工事がつい最近終了したばかりであるため、ホームもピカピカであった。

@新品

 駅から歩いて3分程度のところにある世界チェーン系列のホテル(しかし値段は3,200円程度)に投宿。ビールを求めて近場をあれこれ歩き、コンビニで「アルコール度数が普通」のもの3本とツマミを手にした。なお今日のメインは、列車内で買った弁当である。冷たくなってしまうのはわかっていたが、昼とは違って魚が乗っていたので、つい買ってしまったのである。

@こんな内容

■2016.4.18
 今日は14時過ぎの飛行機で帰国するだけであり、時間はたっぷりある。厦門で観光となるとたいていは「コロンス島観光」となるが、鐡旅ではそうはならない。目指すべきは、鉄路文化公園という場所である。
 その前に、新装開店になったばかりの厦門駅に行ってみる(昨日は到着が夜だったので)。ここまで壮大にする必要があるのかどうかは疑問であるが、最近の中国の新しい駅はどこもこのような感じである。

@手前の工事は地下鉄建設

 降り出した雨の中、鉄路文化公園を目指して歩く。この公園は、港まで続く廃線となった路盤を再利用したものであるが、軍港時代の厦門を思えば「時代も変わったものだな」と思わせる代物である。
 駅前の大通りをしばらく進み、大きな十字路を左手に曲がり、左手の公園が終わる頃に高架橋が見えて来るが、これが件の公園の始まり部分である。
 階段を上がってみると、遊歩道の始まりとなっている。まだ背後には現役中の路盤も寄り添っている。

@ここから始まる

 生憎の雨の中、遊歩道を歩き続ける。所々にシケインのような柵があって自転車やバイクが侵入できないため、生活道路として利用している歩行者も意外に多い。
 基本的に「廃線跡を綺麗に整理した」だけであるが、時々オブジェのような芸術作品も置いてあり、散策向きの場所でもある。

@ひたすら歩く

 1時間弱ほどして歩き疲れた頃、やっと現れたのがトンネルである。鉄路文化公園に関しては訪問記もちらほらあり、よくこのトンネルが取り上げられている。

@入口

 トンネル内は電灯もあり、また様々な展示品もある。最初は壁画風の作り物であり、「中国にありがちな歴史的人物のものか」と思ったが、よくよく彫刻の内容を見てみたら「鉄道建設の歴史」のようなものであった。
 続いて現れてきたのが、多数の写真展示である。中国の鉄道の歴史や廃線前のこの路線についてなど、ちょっとした鉄道博物館のような内容であった。

@盛り沢山

 この路盤は海際まで続いているが、トンネルを抜けてしばらくした思明南路で左折した。さすがに「普通の観光ゼロ」というわけにはいかないので、有名スポットである南普陀寺に行くためである。
 一般道路を20分ほど歩いて寺へ。それにしても、すごい数の観光客(ほとんど中国人)である。
 奥に行けば行くほど様々なものがあり、見学していて飽きが来ない。何より、寺院は「無料である」というのが素晴らしい。

@せっかくなので、観光写真も

 その後は路線バスで中山路へ移動し、旧い街並みを散策して、その後は偶然発見した市場を適当に歩き回ったりした。
 さて、空港への移動である。10元のエアポートバスもあるが、路線バスが1元という物価を考えると少し馬鹿らしい感じもする(タクシーの50元は論外)。それに頭上には鉄道と間違えそうなくらい立派なBRTの高架があるので、それを利用することにしている。
 BRTの起点である「第一碼島」まで歩いて移動し、1階にある窓口で行先を告げてトークンを購入した(たったの1.5元)。

@立派な駅舎です

 いくつかの系統があるが、1番に乗ればよいことは予習済みである。3階まで上がり、そのバスに乗り込んだ。
 専用高架上を走るため、渋滞知らずである。駅も当然のように専用施設であるため、モノレールや新都市交通にでも乗っている感じがする。

@撮影のためいったん降りてみる

 もしかしたら参考にされる人がいるかもしれないため、空港へたどり着くまで書いておきたい。
 BRTの「快1」に乗って「県后」で降りるのであるが、各駅の案内板や県后の駅名票でも「机場(飛行場)」の案内がきちんとある。しかし、大きな荷物を持った旅行客は少なく、あまり「空港連絡」としては使用されていないのかもしれない。

@このように

 ここから「L19」系統に乗り継ぐのであるが、駅の東側にあるバス停にはこの系統の案内がなく、そのバス停から10メートルほど北側に独立して存在しているため、少しわかりにくい。
 なお、第三ターミナルのバス停が二つあるが、後者(遠い方)で降りれば、ターミナルは目の前にあり歩いても5分程度である。料金は、たったの5角(1元の半分)である。
 厦門市内からならこのようにアクセスできるが、逆のパターン(厦門到着時)は、よほど慣れていないと利用できない手段と思われよう。

@こんなバス停

 空港に到着後は、ラウンジのヌードルバーでよくわからない麺を頼んだりして時間を潰し、成田への帰路へと就いた。

 

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