カナディアンロッキーを越える旅

■はじめに

 今回の訪問地は、カナダである。カナダで一番有名な列車といえば、大陸を横断する「カナディアン号」(バンクーバー〜トロント)であり、今回はそれに乗ることにしている。ただし、すべての区間には乗車せず、バンクーバーからウィニペグまでである。全区間乗車は日程的にきついという理由もあるが、この列車のコーチ席(普通座席)の車両にはシャワーがないのである。座席で4泊(しかもシャワーなし)となると、修行に近いものになってしまうだろう。「だったら寝台にすればよい」と言われそうだが、値段がすごく高いのと、食事(寝台料金には食事代も含まれている)の際に必ず相席になるため、初対面の人とあれこれ話を盛り上げるのも、正直面倒くさい(しかも英語である)。
 貧乏旅行に慣れている私なら、座席で2泊までならなんとかなりそうである。そこで、以下のような旅程にした。

【旅程】
初日:仕事を終えてから羽田に移動し、ANA便でバンクーバーへ。時差の関係で、当日の夕方に到着(バンクーバー泊)。
2日目:バスで移動し、スコーミッシュにある鉄道博物館を見学。夜、カナディアン号に乗車(車中泊)。
3日目:ひたすら乗車(車中泊)。
4日目:夜遅くにウィニペグ着(ウィニペグ泊)。
5日目:ウィニペグ観光。市内にある鉄道博物館も当然見学(ウィニペグ泊)。
6日目:朝の便でシカゴへ移動。シカゴ市内にある科学産業博物館(鉄道車両の展示あり)を見学してから、夕方の便で成田へ(機内泊)。
7日目:夜に成田着。
(6・7日目は、別の旅行記で紹介)

@セントラル・パシフィック駅にて

■2016.5.2
 ラウンジですっかり酔ってから搭乗し、離陸も気付かず7時間ほど熟睡。無償アップグレードでプレミアムエコノミーだったためか、いつもよりよく寝られた気がした。
 本来なら早朝の時間であるが、時差の関係で前日の午後である(この感覚、未だに慣れない)。バンクーバーにはほぼ定刻(15時頃)に到着した。
 さて、市内への移動であるが、この空港は連絡鉄道(スカイトレイン)が繋がっている。よって、今回の初鐡はこれへの乗車となる。

@晴天なり

 空港から乗る際は少し「上積み」があって9カナダドル(約750円)となるが、各地の空港連絡バスの「ぼったくり」に比べれば、驚くような高さではない。
 3年前にバンクーバーに来たことがあり、その際に少しだけスカイトレインに乗ったことがある。その頃は改札がなかった(その気になればキセルもできたが、たまにあるチェックで発見されると多額の罰金となる)が、いつの間にか改札が設置されていた。個人的には、この方がすっきりしていて気持ちがいい(せっかく切符を買ったのに、改札なし+チェックもなしだと、気が抜けてしまうのである)。

@こんな切符(自動券売機には日本語の選択肢もあり)

 改札を通り、列車を待つ。待つといっても、6分に1本あるのですぐである。
 この列車の特徴は、東京の「ゆりかもめ」のようにすべて自動運転であるため、運転席がない=その部分から前が見通せる、のである。よって、最前列に居座った。
 市内まで、しばし運転手気分である。

@かぶりつき

 終着(ウォーターフロント)に到着してからは、目を付けておいた両替商へ行ってカナダドルを手にして、それから安ホテル(といってもカナダなので8,500円ほどするが)に投宿した。
 時刻はまだ17時過ぎであり、寝る時間ではない(そもそも、起きてからまだ4時間である)。明日の下見を兼ねてパシフィック・セントラル駅まで歩いて行き、その後はフォルス・クリークの近場を適当に散策し、スーパーで食材を買い、リカーストアでビールを買い(カナダではコンビニ等では酒が買えない)、ホテルに戻り20時過ぎから呑み始めた。

@部屋からの景色

■2016.5.3
 今日はカナディアン号の出発(20時30分)まで時間があるため、近郊のスコーミッシュという町にある鉄道博物館(正式名称は「ウェストコースト・レールウェイ・ヘリテージパーク)へ行くことにしている。
 6時半過ぎにホテルを出て、徒歩25分ほどでパシフィック・セントラル駅に到着した。今晩のカナディアン号もこの駅から出発するが、バスターミナルも同じ場所にあるのである。バスの切符は、事前にウェブサイトで予約・決済しており、チケットも印刷しているため、それを手にして乗り場に向かうだけである(最近は各国のバスで、このような予約等が可能であるため、非常に便利である)。

@駅(この日は曇っていたので、前日夕方の写真を)

 バスはウィスラー方面に行くもので、1日に4往復ある。あまり多くない客(15人程度)を乗せて、定刻から5分遅れた7時35分に出発した。
 左手には、大きなクリーク(川のように見えてしまう)がありその奥には山々が続き、山頂付近は残雪もあり綺麗な景色である。時折線路も見えるが、現役なのか、廃線なのか、下調べをしていないのでまったくわらかない。

@路盤を見ると条件反射で撮影

 8時55分、スコーミッシュ・ディーポ(バスターミナル)に到着した。事前に用意した地図を片手に歩き続け、約40分で鉄道博物館に到着した。しかし開館時間(10時)まで少し時間があるため、近場を適当に散策して暇を潰した。
 10時の開館を待ち、いざ敷地内へ。10.5ドルを払うと(ウェブサイトの案内には18ドル+税とあった気もするが)、係員が地図を用いて英語であれこれ説明をしてくれた。その地図を片手に、敷地内の探索の開始である。
 まずは、旧い駅と車両群である。

@昔は駅だったよう

 一般の車両から寝台車、また機関車やラッセル車などがあり、また郵便列車などは車内にも入れるようになっており、仕分けの様子などがわかるようになっていた。その他、模型や備品なども展示があり、意外に充実した内容である。
 その他に転車台もあり、その付近にもあれこれ車両があった。また扇形車庫も綺麗に改装されており、その中には大きなSLと、綺麗に復元された旧い客車などが展示されていた。

@扇形車庫にあったSL

 バンクーバーから遠いのが玉に瑕であるが、鉄道に興味のある人ならば訪問する価値があるのではないだろうか。アクセス情報が必要な人もいるかもしれないので、簡単に記しておきたい。
 バスは前述した通り、バンクーバーから出発する(グレイハウンド社のウェブで購入可能)。スコーミッシュで下車となるが、ダウンタウンではなくディーポ(バスターミナル)で下車するので要注意。その後、ターミナルの西側にある「ガバメント・ロード」をひたすら40分ほど歩くと、博物館に到着する(道はまっすぐではないので、グーグルマップを打ち出していくと便利)。

@入口はこんな感じ

 1時間半ほど滞在してから、また40分歩いてバスターミナルへ戻った(さすがに復路は疲れた。歩き疲れたというよりは、時差ボケのためである)。
 近場のスーパーを覗いたりして時間を潰してから、14時05分発のバスでバンクーバーへと戻った。復路は意外に混んでおり、乗車率は7割くらいであった。
 さて、次の目的地は、バンクーバー市内にある「ラウンドハウス・コミュニティセンター」というところである。実は昨日の夕方に市内を歩いている際に道路脇にあった市内の案内図を見たら、なぜかSLのマークがあり、ホテルに戻ってからその施設の名称で調べてみると、どうやらそこにSLが展示されているらしいのである。
 歩いて行ってみると、確かにSLがあったが、なんと開館時間は16時までであった(タッチの差でアウト)。ただし、ガラス張りの建物であるため、外からでもなんとか見ることは可能であった。

@見るだけですが

 建物の目の前には転車台があり、そもそもレンガ造りのその建物自体が扇形車庫になっているのである。実は、「ラウンドハウス」というのは扇形車庫を意味するのであった。スコーミッシュの鉄道博物館に行った際に敷地案内用の地図をもらったのだが、扇形車庫のところに「Round house」と書いてあり、「なんだそうだったのか」と初めて知った次第である。

@丸い建物=扇形車庫

 その後はまだ時間があったので、前回も行ったことがあるグランヴィル・アイランドへ行ってみた。その時も述べたことであるが、この敷地内は各所に廃線のレールがあり、また旧い車両を使用した店舗があったり、また敷地付近にも廃駅があったりして、意外な鐡スポットでもある。

@今回は廃駅の写真を

 カナディアン号のコーチ席の良くない点として、シャワーがない以外に「アルコール禁止」というのがある。ネットでの案内にも、アルコールの持ち込みは可能だが個室寝台で飲むように書かれている(そもそも、カナダでは公園などの公共の場ではアルコール禁止なのである)。いつもなら「乗車後に一杯」となるのだが、それができないので、仕方なく夕食を先に済ませることにしている。
 前回のバンクーバー訪問時に道端で屋台を見付けて「なんだこりゃ」と思ったジャパドッグ(日本風ホットドック。しかし日本には絶対ないメニュー)であるが、なんと店舗もあるとのこと(昨日の散策時に発見した)。せっかくなのでそこに行き、前回はあまり冒険をしなかったので、今回はOkonomi(お好み焼き)にしてみた。そしてポテトは、Umekatsuo(梅カツオ)フレーバーに。

@手前が汚れているのは、無料の「わさびマヨ」をかけたため

 美味しく頂いた後は再度市内をてくてく歩き、19時過ぎにパシフィック・セントラル駅にやって来た。切符はネット上で予約・決済してあるが、念のために窓口で聞くと、交換したりする必要はなくそのまま乗車できるとのこと。
 正面左側にはラウンジ(サロン・パノラマラウンジ)があるが、当然これは寝台利用者用であり、貧乏人の私は利用できない。

@懐かしい(アムトラック乗車時は、右手に進んで入国審査をした)

 小さな掲示板があって今日の編成が掲載されていたが、機関車を除いても21両編成という長大なものであった。そのため、1つのホームに収まり切れず、4番線と5番線に分かれているとのこと。
 4番線:機関車×2、荷物車×1、コーチ席×2、スカイライン(展望車)×1
 5番線:ツーリング寝台車×3、スカイライン×1、ダイニング車×1、パノラマ車×1、ツーリング寝台車×6、スカイライン×1、ダイニング車×1、プレステージ寝台車×2、パーク寝台車(車両後半はラウンジ)×1

@私には縁のないラウンジ車

 19時30分過ぎに、コーチ車両のみの改札が始まり、車両に乗り込んだ。
 20時02分、出発時刻までまだ30分弱あるが、列車は動き出した。これは、4番線にいる車両(コーチ車両中心)を5番線にいる車両の先っぽに付けるためである。
 幸いにも車内はあまり混んでおらず、乗車率は3割弱という感じである。私の隣りもだれもいないので、これなら多少は寝られそうである(座席は指定ではないため勝手に座っていいが、検札時にその席が確定してしまう(座席の上に行先を書かれた札を置かれてしまう))。足置きを伸ばせば、フルフラットにはならないがそれなりに体も伸ばすことができる。

@こんな風に

 20時35分、定刻から5分遅れで出発した。すぐにアイマスク等で寝る準備をしたが、時差ボケのせいでまったく寝付くことができない(昼にバスに乗っていた際には、気を失いそうなくらいの睡魔があったのに)。1時間以上寝付けず、寝ても1時間以内に起きてしまう、ということを繰り返し続けた。

■2016.5.4
 朝5時過ぎに目が覚めたが、湖畔のようなところで列車は止まっている。タオルと洗面用具を手にしてトイレに行き、朝の準備を済ませてから席に戻ったが、まだ止まったままであった。

@どこ?

 スカイラインに行って外を眺めていると、5時45分過ぎになって貨物とすれ違った(これとの行き違いのために長時間停車していたのである)。それにしても、いつまでたっても終わらない長大な貨物列車である。
 5時50分、やっと動き出した。

@長大編成の貨物

 単線であるが、10分置きぐらいに行き違い可能な信号所や駅(駅舎やホームはない)がある。時折集落があるが、寒村という言葉がぴったりな感じである。頻繁に貨物列車とすれ違うが、100両以上はあるのではないかという長さである。
 列車が低速になって辺りに操車場が現れてきて、6時43分に駅に到着した。時刻からするとカムループス・ノースであり、定刻から43分遅れである。遅れてはいるが、機関車に給油したりする作業がありそれに時間を要するため、私もホームに降りてみた。

@給油中

 田舎ではあるが、コーチ車両には数人の乗客が乗ってきた。駅周辺には、ロッキーマウンテイナーという車両もあり、調べてみるとどうやらカルガリー方面に行く列車であるという。
 同駅を定刻から30分遅れの7時05分に出発、しばらくして貨物とすれ違ったので両数を数えてみたら、なんと195両もあった。

@川に沿って走り続ける

 まだ起きて数時間であるが、時差ボケもあって9時を過ぎるとまた眠くなった(体内時計が夜中になったため)。「Bear on the left side」という車内アナウンスで目を覚ましたが、熊を見ることはできなかった。
 眠気覚ましに後ろの車両(スカイライン)に移動して、景色を眺め続ける。遠くには高い山並みが続いており、きれいな景色である。すれ違った貨物を数えてみると、148両であった(これ以降、あまりにも頻繁に貨物とすれ違うため、その両数を数えるのはやめた)。

@展望車量より後方を眺める

 10時56分、ブルーリバー駅を通過した。時刻表によれば10時50分出発となっているが、カナディアン号のほとんどの駅(大きな駅以外はすべて)は、40分前までに申し込まないと停まってくれないという注意書きがある。よって、今日は通過のようである。
 11時20分頃、「もう少しすると右側に滝が」というアナウンスがあったので、そちらを見続けていると大きな滝が現れてきた。

@徐行してくれます

 昼近くになったので、昼食を済ませることにした。車内で買うと高くなるため、昨日の乗車前にスーパーで買ったサンドウィッチである(1回くらいは、車内の売店も利用する予定である)。
 見どころが近づくと案内があるようで、13時25分頃には「左手にカナディアンロッキーが」とのアナウンスがあった。「今日は残念ながら」と補足があったように、頂上は雲の中である。

@見えません

 左手に谷が開けているが、下の方に鉄道の路盤が続いているのが見える。一瞬「スイッチバックか」と思ったが、そのような様子(こちらの列車が停まるような様子)はない。どうやら、別の路線のようである(カナダは意外に鉄道王国であり、多数の路線が絡まるように存在している)。
 13時40分頃には「右手にムースレークが」とのアナウンスがあり、それからしばらくした14時台には「右手にイエローストーンレークが」とのアナウンスがあった。

@確かムースレークの方

 ここでアルバータ州に入り時間が1時間進むこととなる。「ジャスパー到着予定は16時05分」との案内があったが(定刻は16時00分)、小さな町並みが近づいてきてジャスパーに到着したのは16時25分であった(いい加減なものである)。
 いずれにしても、ここで1時間以上の停車時間がある。やるべきことは色々あり、まずは駅付近に展示されているSLなどの撮影である。

@この他に旧車両などもあり

 続いては、ビールの入手である。昨晩があまり寝られなかったのは時差ボケのせいでもあるが、やはり酒がなかったのが大きい。座席でのアルコール禁止は先にも書いたが、座席ポケットにある案内をすべて読んでみた限り、そのような記載はどこにもない(売店メニュー(貼り紙)の一部に小さく「持ち込みアルコールはご遠慮ください」的なことが書いてあるくらいである)。もちろん、大々的に呑んだのでは注意されてしまうだろうが、地味に見つからないようにすれば大丈夫であろう。
 リキュールストアでビールを買い(小さいサイズは6本セットしかないため、仕方なくそれを買った)、スーパーで鶏肉やらサラミやらを買って列車へと戻った。

@停車中のカナディアン号(展望窓洗浄中)

 17時30分、定刻ぴったりにジャスパーを出発した。大観光地であるため、乗客の入れ替えもかなりあったようである(駅前にいたたくさんの大型バスも、彼らを乗せてどこかへ行ってしまった)。
 出発してまだ3分もたたないうち、左手の木陰に何か塊がいるなと思って見てみたら、なんと座ってこちらを見つめている熊であった(意表を突かれたため、撮影はできず)。一瞬目を疑ったが、その2分後には歩いている熊をさらに発見した。

@2回目は撮影できたが、動いていたのでピンボケ

 驚いているうちに、続いて現れたのは鹿の群れである。さすが大観光地であるジャスパー、次は普通の観光で訪れて滞在してみたいものである。
 19時頃から、先ほど入手したビールなどで一献を始めた(座席では目立つかもしれないので、スカイライン車両の一番後ろで呑み始めた。幸い、スカイライン車両は空いている)。
 ツマミは、さっき買った食材ももちろんあるが、一番は車窓の景色である。

@曇りでも壮大

 アルコールの力もあり、20時頃から4時間以上は熟睡することができた。

■2016.5.5
 停車の感覚に気づいて目を覚ますと、家々がありどうやらそれなりに都会のようである。意味はわからないが前進と後退を繰り返しており、しばらくして入線したホームをみてみるとエドモントンであった。本来なら前日の23時00分に到着して23時59分に出発する予定であるが、時計をみるともう1時45分であり、かなりの遅れとなっている。
 時差ボケで二度寝がなかなかできなかったが、3時頃にやっと寝付いて、5時過ぎに起床した。辺りは雄大な農地であり、しばらくすると左手に朝日が昇り始めてきた。

@今日は晴れそう

 8時05分に小さな駅に停車したので外を見てみると、ビガーであった。同駅は7時45分発の予定であるから、いつの間にか遅れはほとんどなくなったようである。同駅を8時10分に出発した。
 それにしても、どこまでも続く小麦畑である。地平線まで小麦畑ではないかと思えるくらいであり、このような規模で農作をしたのでは、日本の小麦と比較して単価が10分の1くらいになるのも当然であるように思える。

@どこまでも畑

 時差ボケにやられて、30分ほどのうたた寝を2回ほど繰り返しているうちに、大きな操車場が現れてきて定刻から28分遅れの9時28分にサスカトゥーンに到着した。サスカチュワン州最大の都市ということでもっと大きな駅を想像していたのだが、貨物駅かと見紛うがごときの小さな駅であり、周囲にもまったく何もない場所である。

@しかし、駅舎のある駅は久々

 遅れてはいるが、予定通り最低でも25分は停まるということなので、ホームに下りてみた。多くの乗客も下車しており、そこら辺で一服している(列車内はすべて禁煙のため)。
 先頭に行って機関車の写真でも撮りたいところであるが、「給油など多くの車両が作業しているからダメ」と車掌に言われている(出発時に撮った表紙写真でさえ、注意されてしまったくらいである)。
 余談であるが、編成が長大すぎるため、端の方の車両に乗る際はゴルフ場のカートのような車に乗せてもらえるようである。

@遠くの駅舎からこれに乗って来る

 多少の乗客の入れ替えがあり、同駅を定刻から41分遅れの10時06分に出発した。
 時差ボケのせいでまたウトウトとしているうちに、12時が近くなってきた。スカイラインの1階にある売店をまだ使っていないので、「ネタ」のために利用することにした。買ったのは、ピザ・サブ(5ドル)とコーヒー(2.5ドル)であり、驚くような高さではない(意外に良心的価格設定?)。

@北米的な食事

 車内アナウンスがあり、「フォークソング演奏会」の案内があった。言うなれば、リゾートしらかみ号で実施されている津軽三味線演奏みたいなイベントである(昨日は今私がいるスカイラインの車両で行われていたが、今日は別の車両で行われるようである)。
 辺りは、ひたすら小麦畑である。時折駅のようなものがあるが、駅舎はなく、小麦を集積する建物があるだけである。

@中にはこのような木製の旧いものもある

 14時46分、メルヴィルに到着した。時刻表によれば13時40分に出発予定であるから、この時点で1時間以上の遅れである。車掌が数分は停まると言うので、ホームに降りてみた。
 コーチ車両は前述したとおり車両の先端側だが、私の下車した目の前には旧駅舎があった。案内板があったので読んでみると、普請は1908年ということで、保存活動がなされているようである(最近は屋根を葺き替えたとのこと)。

@こんな駅舎

 停車時間は数分どころではなく、まったく発車する気配がない。しばらくして、対向の貨物列車が入線してきた(これを待っていたようである)。15時10分、同駅を出発した(遅れは1時間30分に増加。また州も変わるため、時間も1時間進んだ)。
 しばらくはまた雄大な畑風景を眺めていたが、17時を過ぎた頃に徐行をし始めた。どうしたのかと思っていると、なんと路盤の周辺が燃えているではないか。北米では乾燥する時期にWild Fireがよくあるという話は聞いていたが、まさかの遭遇である。

@燃えています

 そういえば、先ほど併走する道路をCN(カナダ国鉄)の関係車両が伴走するように走行していたが、これへの対処だったのかもしれない。それにしても、火事自体も驚きだが、列車の運行をやめずに徐行だけで済ませているのも驚きである。

@見守る関係者

 貨物路線との平面交差(ダイアモンドクロス)があったりして、しばらくすると右手には露天掘りの鉱山が見えてきた。貨物車両も大量に係留されている。
 その鉱山の前で、列車はまた動かなくなった。これ以上遅れてほしくないなと思って待っていると、対向でやってきたのは初めて「貨物以外」の車両であった。この辺りを走る旅客列車はカナディアン号しかないので、あちらはバンクーバー行のカナディアン号である。

@山に向かう

 車内アナウンスがあり、「ウィニペグ到着は23時頃になります」とのことであった(しかし、ここまでもすべて案内より遅れていたため、厭な予感がする)。ウィニペグ到着は20時45分の予定であり大幅な遅れであるが、明日はウィニペグで一日ゆっくりするだけなので、今日はどれだけ遅れても大丈夫である(旅程の詰め込みすぎは良くないことに、最近になってやっと気が付いたのである)。
 20時半頃から、スカイラインの1階でフォークソングの演奏が始まった(到着が遅れることによる即興であろうか)。私はそれを聞きながら、2階の座席から沈み行く夕日を眺め続けた。

@列車が遅れたおかげで夕日を見ることが出来た、とも言えるが

 21時にはすっかり日が沈み、22時少し前には真っ暗になってしまった。
 23時頃になると、久々に大量の灯火が見え始め、明らかにウィニペグが近づいて来た。そのうち街中に入り、「この分だと23時半くらいには着くかな」と思い始めた。
 しかし、23時25分、列車はぴったりと停まって動かなくなってしまった。グーグルマップからすると、駅まではあと少し(普通に走れば5分程度)のはずである。
 10分後、貨物列車とすれ違った。「こいつのせいだったのか」と思った矢先、20メートルほど動いただけでまた停まり、10分後にまた貨物とすれ違う。「貨物優先はわかるが、それにしてもひどい運用だ」と思っていると、今度は動き出す気配もない。遅れに慣れているはずのカナダ人たちも、スカイライン車両にいる車掌のところに行って「どういうことだ」と尋ねる人が数人出始めた。

@停車中の展望車

 結局、動き出したのは最初に停まってから1時間15分を過ぎた0時40分頃であった。最初の2本の貨物列車以降は特に列車とすれ違うわけでもなく、ただ停まっていただけである。最後の最後になって、うんざりという気分である。
 遅れること自体はまったく問題ないのだが(海外ではよくあること)、今回はそういうものではない。新幹線ほどの列車数があるならまだしも、行き交う列車は多い時でもせいぜい10本に1本程度、旅客列車に至っては2日に1本しかないのであるから、手際が悪いにも程がある。
 ゆっくりと徐行で走り続け、ウィニペグには定刻から4時間12分遅れの0時57分に到着した。

@遅れるにも限度が…

 多少は遅れることを予想していたため、今日は駅から徒歩3分程度のホテルを予約してある(1泊1万1,000円程度)。幸いバスタブがあったので、3日分の汚れを洗い流した。
 さて夕食であるが、これから店を探すのは難儀である(どこかに24時間営業の店舗はあるだろうが、そこに行く時間がもったいない)。バッグの中にあるのは、食べ残しのパンと呑みきれなかったビール(当然常温)だけである。ホテルのフロントに行くと、インスタント麺があったので、それを1つ買ってみた。いつも貧乏食であるため贅沢は求めないが、今回は最貧の品揃えかもしれない。

@海外旅行中とは思えないラインナップ

■2016.5.6
 6時頃に起床し、ホテルの無料朝食を頂いてから、ネットでウィニペグ観光の最後の下調べをし、8時半頃にホテルを出た。まずは、州議事堂の見学である(入口で「見学したい」と言うと、バッチみたいなものをくれ、あとは建物内を自由に見放題である)。
 続いては、駅東側にある「フォークス」という場所である。ここは操車場の跡地であり、あちこちに鉄道ネタがある。まずは、旧い車両がお出迎えである。

@キャンディ屋さんとして使用されている

 これらの隣りにも、他の車両が2両ほど展示されていた。敷地内の他の鐡ネタとしては、レストラン付近にある市電や、子供博物館から「はみ出た」格好で置かれている車両などがある(子供博物館内には機関車も展示されているようだが、それだけを見るために高い入場料を払うことはしなかった。そもそも、私はこの施設の対象年齢ではない)。
 それらの写真を撮ってから、昼時だったのでフォークス内で食事をすることにした。一番客が並んでいたのはフィッシュ&チップスの店であったので、迷わずそこにした。一番小さいサイズにしたが、新聞紙の中は山のようなポテトである。

@さすが北米サイズ

 さて、ウィニペグでのメインの鐡ネタは、駅構内にある鉄道博物館である。そちらに向かい、入場料(5ドル)を払って見学を始めた。博物館というよりは、物好きな人たちが集まって運営している、という感じがするようなアットホームか雰囲気である。
 普通の機関車からSL、鉄道模型、関連備品、風変わりな車両(自動車のボディを使用したもの)など、展示品も様々であった。

@無難にSLの写真で

 鉄道博物館を見終わっても、時刻はまだ14時前である。コピーしてきた地図を片手に市内を適当に観光し続け、それからスーパーで食材をあれこれ買い(安惣菜などが中心だが、昨日よりははるかに充実した内容)、明日に備えて早めに夕食を始めた。

 

■ 鐡旅のメニューへ戻る

 「仮営業中」の表紙へ戻る

inserted by FC2 system