カスケード号で行くバンクーバー日帰りの旅

はじめに
 米国への鐡旅の旅程を考えた際に、シアトルで1日の余裕ができた。どこを観光するか悩んでいたが、アムトラックでバンクーバーまで往復できることがわかったため、カナダまで足を延ばすことにした。バンクーバーでの滞在時間は6時間程度で、さらに出入国に時間もかかるため、すぐにとんぼ返りする感じである。

@キング・ステーションにて

■2013.5.5
 6時過ぎにホテルを出て、昨日降り立ったキング・ステーションへと向かう。駅付近には路面電車の跡があるが、駅はもう使われていないし、道路上のレールも工事によって掘り返されている途中であった。

@今日はここから出発

 6時45分頃に駅に着いたが、すでにバンクーバー行のチェックインは始まっていた。Eチケットとパスポートを渡したが、号車は指定されたものの席までは指定されなかった。
 歴史のある駅舎であるが最近リニューアルされており、その旨を説明する展示が構内に掲げられている。シアトルという土地柄か、日本人(日本語)率が高い感じもする。

@構内

 ちなみにカスケード号にはビジネスクラスもあり、座席が広いだけでなく入国手続が優先されるなどの特典もある。私は2か月くらい前にビジネスの席を押さえておいたのだが、しばらくしてアムトラックから「ビジネス車両がなくなったので、差額は返金します」というメールとともに新たなEチケットが送付されてきた。
 目の前のホームには、本来のカスケード号とは違う車両、つまり昨日まで私が2日間乗っていたハイデッカー車両が停まっている。車両運用の問題か何か(故障が発生したなど)があるのだろう。
 7時15分頃にドアが開いて、ホームに入ることができた。本来のカスケード号用の車両ではない「なんちゃってカスケード号」の編成は、機関車1両・座席車・ラウンジ(+売店)・座席車という短編成である。

@先頭の機関車はカスケード号用

 景色がきれいである(海が見える)のは進行方向左側であるが、やはり皆知っているようで、私が車内に入るとすでに左側の窓側の7割以上は取られてしまっていた。無事に左側の窓側を押さえ、再びホームに出てみた。
 隣りのホームにはポートランド行のカスケード号も停まっており、そちらは通常の編成である。本来の車両(機関車だけがアムトラックサイズで、客車部分は通常の高さであり、車輪は各車両の中間に1対しかないという変則的なもの)に乗ってみたかった気もするが、「なんちゃって」のハイデッカーの方が眺めが良いのは確実である。

@通常のカスケード号(2両目の途中からの屋根の高さに注目)

 定刻の7時40分、列車は出発した。15分もすると、左手には海が広がり始める。雲一つない空を反映する海と遠くにそびえる山脈が相俟って、絶妙な景色になっている。
 左側に座れなかった人のうち数人は、2両目のラウンジカーに行ってその車窓を堪能している。

@絶景(肉眼で見るとさらに感動)

 結構長い時間海に沿って走り、その後は内陸部へと入っていった。耕地の所々に人家があり、まるで北海道のようである。北海道生まれの私としては、理由もなく安心してしまう景色がしばらく続いた。

@なんとなく北海道的

 9時17分、対向のカスケード号と行き違った。向こうは二階建てではないため、客室部分は屋根しか見えない。
 車内放送があり、税関申告書が配られた。その後、職員によるパスポートと申告書の記入状況のチェックがあった。
 左手の景色は、再び海へと戻っている。なお、列車は各駅でほぼ定刻(遅れても2〜3分程度)である。

@練習中

 ほどなくすると左手の海岸線は干潟のような感じになり、そこでは多くの人がレジャーを楽しんでいた。列車のスピードが遅くなり、カナダとの国境に差し掛かった。皆がマリンレジャーを楽しんでおり、国境という緊張感はあまりない(米−加の国境だからであろう)。

@カナダへ

 地図と時刻表を見比べて、「この分だと早着するな」と思っていたら、川のほとり(スカイトレインの橋がある付近)でぴたりと止まってしまった。15分以上そのままであったが、理由は不明である。列車は、11時10分に運転を再開した。

@停車中、ちょうど目前にあった旧い車両

 そこからはゆっくりと走り続け、操車場が近づき町中へと入っていった。
 時刻は11時35分、いったん止まった列車は急にスイッチバックで逆行をし始め、そのまま5分ほど走って終点のパシフィック・セントラル駅に到着した。
 カスケード号に乗るのは当然初めてであるのでその運行形態はよく知らないが、このようにしてスイッチバックで入線したのは、今日の車両が「なんちゃってカスケード号」だからではないだろうか。普通のカスケード号は前後の区別がないが、今日は1両の機関車に引かれているため、そのまま頭から入線してしまうと向きを変えないといけなくなるのである。

@終着駅(午前中は逆光だったため、この写真は復路に撮影)

 駅には定刻から3分遅れの11時43分に到着したが、車両ごとに入国手続きをするのでしばらく待たねばならない。3号車の乗客の手続きが終わり、1号車に回ってきたので荷物の少ない私は我先にとイミグレーションへと向かった。
 車内で記入した税関申告書とパスポートを渡したが、米国入国時と同様に結構色々なことを聞かれた。それを済ませて市内に出て、まずはバンクーバーの鐡ネタとして「スカイトレイン」への乗車である。

@運転手なし

 コンピュータ制御の鉄道は各地で乗車したことがあるが、「ゆりかもめ」のようなまったり感はなく、結構なスピードで快走していたのが印象的であった。
 さて、あとは市内観光である。まずは、ガスタウンで定番の蒸気時計を見る。それからは、ちょうど昼時だったので、北米的なファストフードでも食べようかと思って市内を歩いていると、JAPADOGという怪しいものを発見した。「おろし」や「梅」というメニューを冒険する気にはなれなかったが、「スパイシー・チーズ・テリマヨ」を試してみた。

@註:日本食ではありません・その2(ノリが決め手か)

 その後はひたすら歩き続け、グランビルアイランドまで行ってみた。島内やその周辺はなぜか廃線跡だらけであり、中には旧い車両を使った売店まであり、意外な「鐡スポット」であった。

@いたる所にレールあり

 ウィンドウショッピングを終えた後はファルスクリーク沿いをひたすら歩き続け、駅周辺にある中華街なども散策した。
 16時30分頃に駅へ戻ると、すでにチェックインの行列ができていた。それに並んで手続きをしたが、往路と違って座席が指定されるようである。窓際を希望したが、まだ空いていたので確保することができた。
 それから入国審査となるが、私の旅行経験で最高(最多)の質問をされた。しかも超早口の英語であるため、若干受け答えに詰まるときもあった。空港なら英語ができなくてもなんとかなるだろうが、ここの入国審査はそんな妥協を許さない、ある意味「本格的」なものであった。陸路で米国に入ることの難しさを、身をもって知った気がした(米国から出るのは簡単であるが、米国に入るのは難しい。特に陸路では)。

@入国審査の写真は撮れないので、バンクーバー市内からの絶景を

 列車は2分ほど遅れた17時47分に出発、ゆっくり走ったり止まったり(時には逆戻りもしたり)していく。シアトル−バンクーバー間はバスの方が所要時間がかなり短いが、このようなところに原因があるのだろう。
 19時過ぎに、車内で国境警備によるパスポート検査があった(入国手続きはすでにバンクーバーの駅で済ませているが、その際は関税申告書はチェックされるだけで回収されていない。ここでやっと、それが回収されることになる)。手続きが明確な空路と違い、鉄路の場合は国や地域によってその手続きが変わるので要注意である(そういえば、今はなきシンガポール駅での手続きも特異であった)。

@この辺りで検査(右手にあるのは車用のチェックポイント)

 パスポートを検査する人員以外に、何やら探知機を翳しながら通路を往復している人もいる(爆発物でも探しているのであろうか)。しかし車内は呑気な感じで、おっさん二人は「あの仕事は本当の米国人じゃないとやらせてもらえないんだぜ」「そうだろうな。でもただ歩いてるだけだぜ」という会話をしている塩梅である。
 20時を過ぎると、右手に夕日が沈み始めた。海+夕日という絶好の組み合わせにはならなかったが、地平線に沈む綺麗な夕日を拝むことはできた。

@鉄路と落日

 20時50分頃には太陽は落ち切ってしまったが、地平線が遠くまで見渡せるため、21時30分過ぎまで景色を堪能することができた。
 シアトル(キング・ステーション)到着は、若干早着の22時05分であった。後はホテルに帰って夕食+就寝だけである。問題は、食材の手配がこれからという点である。
 実はバンクーバーでスーパーでもあれば何か買おうと思っていたのだが、散策中に店を発見できないでいた。シアトル到着は22時過ぎ、しかし、何かしらの店はやっていると思っていた。
 駅から歩き始めて5分くらいで、日系のコンビニを発見した。しかしそれでは味気ない、ホテルまでは30分ほど歩くから途中にファストフードくらいあるだろうと思って通過したのだが、これまたどういうわけか何もない。パブなどは営業しているが、とても1人で入れるような雰囲気ではない。これでは、今日は夕食抜きになってしまう。
 諦めかけた頃、ホテルまでもうすぐというところで、ホットドックの屋台を発見した。それを2本購入し、一段落となった。ホテル前にあった個人商店もギリギリ営業時間内であり、そこで冷えたビールを手にして、米国での最後の晩餐を超米国的なもので終えることが出来た。

@かなり大きなホットドック(ビールは大瓶です)

 

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