【非鐡の旅I】坂東三十三箇所巡り(茨城編)

■はじめに
  坂東札所巡り、今回は茨城県内の寺院を紹介します。

@水戸駅にて(札所巡りでなければ、こういうのに乗るのだが…)

■2013.8.18(坂東第3日目)
 週末に天気予報を確認すると、やはり群馬南部方面は38度近くを示していた。とてもそちらに向かう気にはなれず、茨城や栃木も平地はそれなりに暑いことが予想されるので、坂東札所で一番遠くにあり最難関と言われる日輪寺に行くことに決めた。この寺は八溝山の山頂近くにあるため、気温もそれなりに低いだろうとの期待を込めて。
 6時過ぎに家を出て、7時03分に上野を出発する常磐線の列車に乗り込んだ。お盆の帰省ラッシュとはいえ、早朝の各駅停車(そして首都圏発)は、ほとんど関係がないので空いている。
 水戸には9時07分に到着し、そのまま水郡線に乗り換えた。思えば、この路線に乗車するのはかなり久しぶりである。

@いつ以来か覚えていない(おそらく10年以上ぶり)

 水戸駅を定刻の9時22分に出発し、長閑な景色の中を走って行った。車内はそれなりに混雑しており、座席はほぼ埋まっている。
 常陸大子には、定刻より6分遅れの10時43分に到着した。1日に2本しかないバスの出発時間が10時42分であったので若干心配していたが、きちんと接続を取っていてくれた。
 予約済みであった弁当を手に入れ、バスに乗り込む。車内は私を含めて3人しかおらず、その内訳は地元の人1名、日輪寺詣で2名であった。
 11時23分頃、バスは終着の蛇穴(じゃけち)に到着した。

@日曜日は1日2往復のみ(平日は少し増える)

 バス停からしばらく道なりに歩いて行くと、右手に参道と大きな鳥居が見えてくる。左手には湧水が溢れていたので、まずはそこで喉を潤した。
 鳥居付近には廃墟と化した土産物屋があり、きっと大昔は参拝客で賑わっていたことを予想させる。昔は神社仏閣を詣でるのが一大行事であり、そのための鉄道が敷設されたりしたくらいであるが(旧国鉄で言えば参宮線や大社線、私鉄の一畑電鉄や南海高野線など枚挙に暇はない)、娯楽が多様化した現在となっては、お寺などは単なる「観光の寄り道」程度でしかない。

@寂しい雰囲気

 厳しい日差しの中、山道を歩き始めた。気温は高いが、標高が若干高いことと、山道であるためほとんどの部分が木陰になっているため、それほど条件は厳しくはない。
 そうは言っても、上り道が続くためかなり体力は消耗する。ペットボトルで凍らせてきた水が、かなりの効力を発揮してくれた。
 大汗をかきながら歩き続け、麓から1時間20分で日輪寺に到着した(これは休憩なしで歩いた結果である。他のサイトを参照すると、健脚な人で1時間10分程度、それ以外の人は1時間30分以上かかるようである)。

@体力限界

 これまで詣でてきた坂東の寺とは違い、ここは寺以外は周囲に何もないところである。まずは参拝、となるのだが、時刻は12時45分を過ぎており、まずは昼食である。幸い、寺の敷地の片隅に比較的新しい東屋があるので、そこで弁当を頂くことが可能である。
 頂くのは、常陸大子駅の隠れた逸品(?)である「奥久慈しゃも弁当」である。事前予約すれば1つでもホームに届けてくれる(なお本日は人出が多いため、改札口近くで販売もしていた)。

@しゃも肉は歯ごたえあり

 普通に美味しいのであろうが、いかんせんこの暑さの中で長時間山歩きをした後という条件下での昼食なので、美味しくてしようがない。見た目よりもボリュームがかなりあったが、あっという間に平らげてしまった。
 その後は普通に参拝し、納経をしてもらった。住職曰く、夏の時期に徒歩で上がってくる人は、やはり少ないそうである。
 13時10分頃に寺を出発し、麓まで降りたのは14時40分頃であった。なぜか下りの方が時間がかかってしまったが、おそらく体力的にもう限界であったのだろう。

@再び湧水で喉を潤す

 さて、1日に2本しかないバスの最終便の出発時刻は、16時15分である。それまで何もない蛇穴で待っていてもすることがないので、そのまま長閑な山道を歩いて下っていくことにした。車通りも少なく、適当な散策をするには最適な道である。
 1時間40分ほど歩き、宮本のバス停で件のバスに乗り込んだ。6キロ近く歩いたが、それで浮かせられたバス賃はたったの210円である。

@無事に常陸大子に到着(駅前のSL)

 17時48分発の列車に乗り、水戸と土浦で乗り換え、自宅に着いたのは22時前であった。坂東巡りでは1日で3か所くらい回っているが、今回に関しては1つで限界である。

■2013.9.7(坂東第5日目)
 4時台に起床し、最寄駅を5時11分に出発する京浜東北線で上野に向かい、5時46分発の宇都宮行に乗車した。その後は小山で乗り換え、岩瀬には7時43分に降り立った。ここに来るのは、なんとほぼ30年ぶりである。
 まだ中学生であった頃に、私は友人と一緒に筑波山へ初詣に行ったことがある。当時はまだ筑波鉄道筑波線が走っていた時代であり、我々(当時は宇都宮に住んでいた)はこの岩瀬駅で国鉄から筑波鉄道に乗り換えて、筑波山へと向かったのである。

@当時の写真(なぜか成田山の初詣案内がある)

 筑波線は、私が乗車した4年後の1987年に廃止されてしまっており、現在はそのほとんどがサイクリングロード「つくばりんりんロード」として残されている。
 最初に今回の旅程を考えた際には、「廃止後には代替バスが走っているはずだから、それにでも乗ろう」と思っていたのだが、調べてみると、なんと代替バスすら5年前(2008年)に廃止されているではないか。

@現在の岩瀬駅

 廃止された鉄道の代替バスが廃止になるといえば、個人的に印象に残っているのは、2010年に廃止されてしまった旧国鉄湧網線の代替バスである。この際はちょっとしたニュースになったような記憶もあるのだが、まさかこんな近場で同じようなことが起きているは知らなかった。バスだけではなく、岩瀬駅のレンタサイクルすら今年の春に廃止されてしまっているという。移動手段が何もないのであれば、これはもう歩くしかない。
 幸いなことに廃線跡はほとんど残されているので、「廃線跡巡り」と思えば片道6キロ弱の道のりも気は重くはない。まだ朝早く、曇りで多少の風もあるため、散歩には最適な環境である。

@長閑な廃線跡

 しかし、岩瀬発10時47分の列車に乗れないと帰宅時間が遅くなってしまうため、往復(+寺での滞在時間)を3時間以内にしなければならない。のんびりとは歩いていられないため、速足で歩き続けた。
 駅から50分ほど歩き、旧雨引駅の手前で左折して雨引観音へ向かう。坂道では、地元の子どもが「こんにちは」と挨拶しながら自転車で追い抜いて行った(田舎ではたまに見かける風景である)。道端のとある民家のガレージには「みんなで乗ろう筑波線」という旧い看板も残されており、これは嬉しい出会いである。

@消えてしまいましたが

 次第に道は急になり、寺の直前にあった巨大な石段のような階段を這い上がり、駅から1時間15分で雨引山楽法寺(雨引観音)に到着した。急ぎ足で来たため、汗だくである。
 境内には数匹のクジャクがおり(これに関してはネットで情報検索済)、さらに奥に行くとカモやアヒル、その他の名の知らぬ鳥までたくさん放し飼いになっており、なかなか特異な雰囲気である。

@クジャク

 以外に早く到着できたので、20分ほど境内で休んだりして納経をしてもらったりした。
 元来た道を戻り、岩瀬駅へ。さすがに3時間近くも歩くと空腹を覚えてきたが、次の寺院は笠間にある=いなりずしがあるので、それまでは我慢である。
 10時47分発の列車は、5分ほど遅れて入線してきた。笠間着も同様に遅れ、11時10分であった。観世音寺までは2キロほど離れているため、あまりゆっくりはしてはいられない。
 駅から歩き出し、少しだけ遠回りをして笠間稲荷の門前で件のいなりずしを買い、観世音寺へと向かった。まずは、参拝より腹ごしらえである。

@甘い(クルミ入り)

 さて次は納経であるが、なんだか数人が本堂内に座っており、住職も読経をしていて終わる気配がない。結局、その場で20分くらい待つこととなった。スーパーのレジならイライラしてしまうが、こういう場所でそういう気になってはいけない。ありがたく読経を聞き続けることにした。
 ほどなくして終わったが、時刻は12時を過ぎている。この寺は12時から1時までは昼休憩があり納経もできないが、上記のような事情があるので納経はしてもらえた。

@小さなお寺

 さて問題は、12時31分発の列車に間に合うかどうかである(お昼の時間帯は1時間に1本程度しかない)。12時05分に寺を出発し、急ぎ足で駅へ戻り、着いたのは12時28分であった。
 予定の列車に乗り友部で乗り換え、水戸で下車。少し時間があったので駅前のファストフード店でコーヒーを飲み、13時41分発の水郡線に乗り込んだ。
 土曜というのに車内は高校生で満員だったので、私は前を見渡すために先頭車両の後ろに行ってみた。ところが、なんと運転室内にはJRの職員が4人もいて、あまり見通しは良くない。その理由は、どうやら若い運転手の技能試験をやるためのようであり、出発後に運転手は、自衛隊員のような大きな掛け声を続けながら列車の運転をしていった。

@チェック事項はかなり細かい模様(速度や距離などを目測で判断させるものもあった(詳細略))

 上菅谷で乗り換え、常陸太田に着いたのは1416分であった。いい加減に歩き飽きてきたが、ここからも片道35分以上は歩かなければならない。
 日差しが出てきた中、ひたすら歩き続ける。特に面白いものも見つけられないまま、佐竹寺に到着した。
 大小の差はあれ比較的寺院の規模が同等である四国お遍路と違って、坂東の場合、寺院の規模や造りなどが全く違うものが多く、その差は大きい。大観光地にある超大規模寺院もあれば、まるで個人商店のような小さな寺院もある。
 佐竹寺は、崩れそう、と書いては失礼だが、かなり年季の入った寺院である。納経をしたもらった母屋も、押したら傾きそう(失礼ですみません)である。個人的には、大賑わいの寺よりはこういう寺の方が好きであるが。

@味わいあり

 元来た道を戻り、16時06分発の列車に乗り込んだ。順調に水戸と上野で乗り換えても、家に着くのは20時頃である。

■2013.12.15(坂東第9日目)
 すでに12月である。つまみ食いで進めてきた坂東札所めぐりも、今日でやっと茨城県を終えることとなる。
 6時発の京浜東北線に乗り、上野で乗り換えて常磐線で土浦に到着した。筑波山を目指すのであればつくばエクスプレスの方が便利であるが、その後の移動を考慮するとJRの「休日おでかけパス」の方が安くなるため、このような旅程にした次第である。
 さて、バスに乗るまで25分ほど待ち時間がある。バス停から駅ビルに戻ってみると、朝食が280円からあり、しかもカレーには土浦(霞ヶ浦)名産のレンコンも入っているではないか。
 実は土浦はカレーが有名らしく、名産のレンコンを使用したカレーを推しているらしい。事前にネットで提供店をあれこれ調べてみたのだが、まさか駅のチェーン店にもあるとは思っていなかった。腹はすいていないが寒いので、せっかくなのでそのセットを注文してみた。

@280円なら納得

 バスに乗り込み、今後の旅程も勘案して回数券(2,200円分で2,000円)を購入しておく。最近ではカードを導入しているバス会社も多いため、回数券は懐かしさを感じさせる。
 50分ほど乗車してから、沼田バス停で乗り換え、9時06分頃に筑波山神社入口バス停に到着した。5日目の冒頭に記した通り、ここに来るのは中学の時分以来、約30年ぶりである(ほとんど覚えていないが)。
 早速筑波山大御堂に参拝し、納経をしてもらった。

@寒波到来だが、天気は良い

 戻りのバスまで時間があるので、しばらく歩いて筑波山神社まで行く。知名度及び規模では、やはりこちらの方が有名であり、休日ということもあって「ガマの油売り」の口上を行う準備もされていた(まだ10時前のため、実演はされていなかったが)。

@遠くには富士山まで(写真では見づらいですが)

 1010分のバスで沼田まで戻り、そこから歩いて5分くらいのところにある筑波山口バス停へと歩いた(往路と復路でルートが若干違うため)。なおここはバスターミナルとなっており、昔は鉄道駅であったところである(私も30年前に降りたはずであるが、先に記した通り全く覚えていない)。
 5日目に述べた「つくばりんりんロード」は、この駅を通って土浦駅まで繋がっている。季節のより春か秋に、全線通しで走ってみたい気もする。

@廃線跡

 1030分発の土浦行バスに乗り込み、さん・あぴおで下車。ここで6分の乗り継ぎ時間で、新治バスに乗り込んだ。
 今日の旅程では、このバスが一番のボトルネックであった。1日に6本しかなく、しかも運転日が「月・水・金・日のみ」という変則具合である。
 ミニバスには、私以外にも4人組のおじさんが乗り込んだ。同じ乗り換えをしているので、目的は同じ(坂東巡り)のようである。
 出発後、バスは役所などを迂回しながら進んでいった。運転本数は少ないが、この手のコミュニティバスにありがちな定額制であるため、20分弱乗車したが運賃は200円均一であった。
 清滝観音入口バス停で降り、5分ほど歩いて寺へ辿り着いた。

@本日2つ目

 無事に納経は終えたが、次のバスまでは1時間半くらい待たなければならない。周りは田畑と果樹園(柿)くらいしかなく何もないところであるため、先ほど乗っていた土浦行のバス停があるところまで歩いていくことにした。距離にして5キロ弱、現在1128分であり、目指すべきバスは1229分発である。普通に歩いては間に合わないので、かなりの速足で歩き続けた。

@ゴルフ場は太陽光発電施設に変貌を遂げていた

 必死に歩き、藤沢十字路バス停には1225分に到着した。
 定刻にやってきたバスに先客はなく、私だけである。何より驚きだったのが、運転手が先ほど(筑波山口からさん・あぴおまで)と同じではないか。運転手は「え? 清滝観音からですか。速いですね?」と感心しきりであった。これがきっかけで、その後は坂東やお遍路の札所巡りの話となり、さらには鉄道やバスの廃止に関する話を運転手としたりして車中を過ごした。
 さて、予定通りのバスに乗ることができたおかげで、時間に若干の余裕がある(とこの時は思っていた)。朝食べたレンコン入りカレーは「おまけ」のようなものであったので、せっかくなのでカレー専門店へ行って食べてみることにした。
 駅から歩いて5分くらいのところに、カレーの専門店がある。最初は土浦カレーを頼もうと思っていたが、ランチの方が種類が豊富であり、しかも2つのカレーを食べることができる。結局、誘惑に負けてレンコンとは関係のないカレーにしてしまった。

@おかわり無料であるためこの後ナンも頼み、かなり満腹に

 さて、後は「休日おでかけパス」を利用して、千葉市にある寺を詣でるだけである。
 14時12分発の列車で土浦を出発し、柏、新松戸、西船橋、千葉で乗り換え、本千葉には15時41分に到着した。ここから海上山千葉寺までは、歩いて20分程度である。
 夕日が傾く中歩き続け、件の寺に到着した。山門や外壁からしてかなり古く、掲示してあった説明によると千葉市内で最古であるとの由。
 参拝を済ませ納経所へ行ってみると、なんだか人けがない。入口の横を見ると、なんと冬季の納経時間は夕方4時までとのことであった(時計は16時05分を指していた)。
 カレー屋でゆっくりしていなければ回復できる時間であったが、そう深刻になることもない。千葉市ならすぐ近くであるし、まだ残っている札所はすべて千葉県内であるため、それらに詣でる際に寄ればいいだけのことである。

@また来ます

 

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