バルト三鐡(エストニア編)

■はじめに
 バルト三鐡の最後は、エストニアである。この旅行記は、以下の旅程の4日目夜から6日目までを収録している。

【旅程】
1日目:成田からフランクフルトへ移動(フランクフルト泊)。
2日目:フランクフルトからヴィリニュスへ移動し、ヴィリニュスの鉄道博物館を見学後、市内を徒歩観光(ヴィリニュス泊)。
3日目:鉄道でカウナスまで往復。夕方にヴィリニュスからリガへ移動(リガ泊)。
4日目:鉄道でツェーシスまで往復。リガの市内観光(鉄道博物館を含む)後、夜にタリンへ移動(タリン泊)。
5日目:鉄道でナルヴァまで往復(タリン泊)。
6日目:鉄道でパリティスキまで往復。タリンの市内観光後、午後にタリンからフランクフルトに移動し、夜の便で成田へ(機内泊)。


@ナルヴァ駅にて

■2018.5.5
 19時半頃にタリン空港に着陸し、空港の売店でスマートカード(デポジット2ユーロ必要)を購入してから、トラム乗り場へ向かった。元々空港から市街地までは近いが、トラムが開通したことによってさらに便利になっている。

@エストニア初鐡ネタ

 20分ほどで中心部まで移動し、スーパーで酒や食材を買ってから、旧市街の中にあるホテルに投宿した。

■2018.5.6
 6時半頃にホテルを出て、旧市街の西外れにある駅へと向かった。駅舎はすぐに発見できたが、建物内にある商業施設の広告ばかりであり、どこにも駅名が見当たらないので一瞬迷ってしまう(駅名は、結局ホーム側に大きく掲示されていた)。

@駅です

 ホームの数が多く、9本くらいは同時に入線できるようである。もちろん、そこまでこの駅が賑わうことはない。近くには、SLが展示されている。
 電光掲示に従ってナルヴァ行のホームへ行くと、もう列車は入線していた。結構新しい車両である、昭和色の強かった昨日のラトビアとは違い、一昨日のリトアニアに近い感じに戻ったようである。

@流線形

 エンジン音がしていることから、ディーゼルカーであることは一目瞭然である。編成は3両であるが、途中に他の車両の1/3くらいの短い車両(座席なし)があり、これはどうやらエンジン専用の車両のようである。これを1両と数えると、編成は4両になる。昨日のラトビアで見た車両(先頭の半分が気動車)も初めてであったが、今日のこれ(運転席のない機関車?)も、私にとっては初めて見たものである。

@エンジンのみ

 往路については、自由席であるセカンドクラスをネットで購入してある。早速車内に入ってみたが、おしゃれで小奇麗なデザインである。自転車なども持ち込みやすくするため、入口付近は低床であり、台車付近は一段高い座席になっている。車内に電光掲示もあり、各駅の到着時刻が示されている。足元には電源タップもあり、設備は充実している。

@新しい

 ナルヴァまでの195キロを2時間半強で走行するわけであるから、昨日のようなのんびりではなく、かなりの快走が期待できる(その代わり、値段は10ユーロ程度するが)。
 定刻の7時07分から1分の遅れで出発。車掌がすぐに検札に来た。市街地では、あまり速度を出さずに各駅に停車して行った。

@まだ街中

 市街地を過ぎると、予想通りに快走をし始めた。辺りの景色も草原的なものが多く、なんだかJR北海道のディーゼル特急に乗っているような錯覚に陥ってしまう。時折、客車だけでなく貨物ともすれ違ったので、エストニアではまだまだ貨物が活躍しているようであった。

@景色の例

 快走はしているが、5〜10分毎に駅に停まっていく。多くはないが乗降があり、車掌がそれに対応していた。
 しばらくすると右手に大量のレールと枕木が現れ始め、また係留されている数多くの貨物列車が見え、8時05分にタパ(タルトゥ方面の分岐駅)に到着した。

@タパ駅のSL

 同駅出発後も長閑な景色は続いたが、時差ボケもあって少しウトウトとしてしまう区間もあった。目を覚ましては、時折現れる引込線の写真を撮ったりした。

@今日も天気良し

 おもむろに人家が多くなり、ぴったり定刻の9時44分に終着のナルヴァに到着した。インフラについては色々と差があるが(特にラトビア)、時刻に関しては三国とも正確であった(早着はあっても遅れはなし)。
 到着時に貨物がいたので写真を撮ったが、先頭にいたのはロシアの機関車であった。

@懐かしい

 さて、今日はこの町で4時間も過ごさねばならない(すぐに戻ったのでは味気ないが、4時間はちょっと多すぎる)。
 まずは駅付近にある教会を見て、そこから国境に行ってみた。豪華な城塞のような建物が見えるが、川の向こうはもうロシアである(大きなロシア国旗がたなびいている)。

@恐ロシア

 その後はショッピングセンターに行ったり、街角にある案内板に従って旧市街を探して、古い建物を見たりして時間を潰した。
 それから再度国境(ナルヴァ川)沿いに戻り、観光気分の家族連れの様子を眺めたりした(川沿いに遊歩道が整備されているエストニア側と、そういう施設が何もないロシア側との対比が面白い)。
 さらに川の上流にどんどん歩いていくと、鉄橋に貨物列車が通りかかっているところであった。

@30年前にこんな写真を撮ったら投獄ものであろう

 バルト三国は資源に乏しく、ロシアからの石油(と天然ガス)の輸入は必須であり、それを象徴するような光景であった。
 本来は来た道を戻る予定であったが、鉄橋がある=駅が近いと思い、適当な道を辿っていくとすぐに駅に着いてしまった(おかげで、また時間が余ってしまった)。そこで、駅の反対側に行く高架橋があったので、そこに登ってあれこれ撮影をした。ロシアの機関車や、先ほどやってきた貨物を含む山のようなタンク車の列が印象的である。

@もう自由主義なので撮影は自由(機関車はエストニアのもの)

 駅付近のアパート群で野良猫の写真を撮ったりしてさらに時間を潰し駅に戻ろうとすると、これから乗る列車がタリン方面からやってくるのが見えた。
 ナルヴァ駅は改装工事中である。構内には、今も使用しているのかどうか不明であるが、国境を通過するためのイミグレーション設備もあった。

@小ぢんまりした駅

 先ほど入線した列車に乗り込む。往路との違いは、客車部分が4両ある(ディーゼル部分だけの短いやつを含めれば5両)という点である。
 復路については、試しにファーストクラスを予約決済してある。座席指定がシートマップを見ながらでき、さらに進行方向や座席の向きまでわかるようになっているので、安心して手続きすることができた。シートも横4列(セカンドは5列)であり柔らかく、3時間以上歩いた腰痛持ちにとってはありがたい設備である。

@ゆったり

 始発駅というのに意外に多くの乗客になり、ナルヴァを定刻の14時12分に出発した。
 駅に停まるごとに乗客は増え、1時間後にはファーストもほとんど埋まってしまい、セカンドに至っては通路に人が立つほどであった。

@駅の一例

 その後も乗客は増え続け、タリン到着は定刻の16時50分であった。
 ふと気づいたのだが、2つ隣りのホームにはロシア行の列車が停まっているではないか(ロシアらしく、各車両のドアには車掌が立っている)。そちらに向かおうとしたところ、こちらの入線と入れ違いで発車してしまい、慌てて写真に収めた。

@懐かしいその2

 その後は、昨日と同じスーパーへ行き、「以下同文」の行動パターンで酔っ払って就寝。

■2018.5.7
 今日は昨日よりさらに早く出発し、5時50分頃には駅に到着した。まずは、昨日撮りそこなったSLの撮影である(出発時は列車内に入ってからSLの存在に気づき、到着時はSLの前に人が座っていたため、撮影できず)。

@朝なので逆光

 昨日の落穂拾いはまだあり、駅西側の引込線(廃線)巡りである。こういう場合何か鐡ネタがある場合があるため奥の方まで歩いていくと、旧い車両を再利用した食堂を見つけることができた。やはり、足を使えば何かしら得られるものがあるのである。

@日本にもよくあるパターン

 それらを撮影して駅に戻ると、これから乗るパリティスキ行が入線してきた。ぱっと見は昨日乗った車両とほぼ同じであるが、ファーストクラスがないことと、4両編成の「電車」であることが大きな違いである(よって、ディーゼルエンジンだけの小さい車両がない)。

@見た目は同じ

 内装についても、ほぼ同じであった(電光掲示があり、各駅の時刻が表示されている)。
 少ない客を乗せて、定刻の6時14分に出発。いかにも電車らしい、スムーズで静かな動き出しである。しかし、2〜3分毎に駅に停まるため、日本の近郊列車のようにせわしない。

@各駅の意匠は統一されている

 とある駅でなかなか出発しないと思っていたら、どうやら定刻まで1分ほど時間調整していたようである。これは、日本並みの正確さである。
 ずっと複線であったが大き目の車庫を過ぎると単線になり、景色も田舎っぽくなっていった。そのまま単線が続くのかと思いきや、またすぐに複線になってしまった(奥羽本線ばりの細かい構成である)。田舎っぽくなったため、駅間隔は5〜7分になった。

@また複線に

 その後はまた単線になり、ケイラで行き違いの待ち合わせで2分ほど停車した。同駅出発後は左手に路盤が分かれ、ここから先はパリティスキを目指すのみである。
 ずっと白樺の森や平原ばかりで「この先に町はあるのか」と不安になりそうであったが、やっと工場や引込線、タンク車や木材の山などが見え始めてきた。「木を売って石油を買う国」ということである。

@木材の山

 左手に海が見え始め、秒まで計ったかのような定刻の7時16分にパリティスキに到着した。降りたのは、私を含めてもたった4人だけである。
 それにしても、寂しい町である。アパートなどはあるが、店は1件もなく(地図によると、道路もう1本北側にはあるようであったが)、面白そうなものも特にない。しかし、こういう街をぶらっと歩くのも私の旅の一要素である。

@特にこれといったものはなかったので、猫写真で

 30分程度の散策を終えて、駅に戻った。7時51分発に乗り込んだが、平日の朝に首都に向かう列車だけあり、最初からそれなりに通勤客らしき人が乗車している。
 駅に停まる毎に乗客は増え続け、最終的には立つ人もかなり多くなり、定刻の8時53分にタリンに到着した。
 さて、後は「おのぼりさん」観光である(リトアニア・ラトビアと続けて鉄道博物館に行ったので、エストニアでも行きたかったのだが、ハープサルという地方都市にあったので断念)。

@ということで、展望台からの旧市街を

 旧市街をあれこれ歩いてからホテルに戻りチェックアウトし、通って3日目となるスーパーで追加のお土産を買い、トラムで空港へ向かった(このトラムの最後尾には運転台がなくて見通しが良いので、お勧めの席である)。
 ルフトハンザ便にチェックインしてからロビーに行くと、ラウンジがあった。ステータスのカードを見せたら利用できるということだったので、連日天候にも恵まれたバルト三国の鐡旅を、冷たいビールと共に締めくくることにした。

@お疲れさま

 

■ 鐡旅のメニューへ戻る

 「仮営業中」の表紙へ戻る

inserted by FC2 system