長距離特急を求めて豪州まで

■はじめに
 今回は、昨年秋に行ったばかりのオーストラリアである。機内泊と車中泊の連続であった前回の反省点を改善し、往復の飛行機こそ夜行便であるが、現地のホテルに2泊する旅程にしてある。
 一番の目的は、メルボルンとアデレードの間を走行する「オーバーランド」号である。1週間に2往復しか走行しない列車であるため、運行予定日と自身の休みを勘案して、かなり前に予約をしておいた。
 私が予約したのは、メルボルンを土曜日の朝8時05分に出発し、その日の夕方17時40分にアデレードに到着する便である(時差が30分あるため乗車時間は約10時間)。青森発大阪行の特急「白鳥」を経験している身としては大きな驚きではないが、久々の長距離特急である。
 旅の次の目的は、これも定番であるが鉄道博物館である。メルボルンの施設は訪問済みであるが、アデレードの施設に訪問することにしている。

 旅の前には当然のようにネットで下調べをするのだが、なぜかオーバーランド号に関する記述がほとんど見つけられなかった(短い紹介文か、旅行会社による宣伝ばかりである)。スピリッツ・オブ・クイーンズランドのレールベッドを体験する前にも同様の経験(ネットでの個人記事ほとんどなし)をしたが、鉄道ファンにとってオーストラリアは人気がないのであろうか。個人的には、遠距離の割に時差がほとんどなく、また語学的ハードルも低いので、行きやすい場所だと思うのであるが。

【旅程】
木曜日:仕事を終えてから、夜の便で羽田からシドニーへ飛び立つ(機内泊)
金曜日:メルボルンへの便に乗り継ぎ、昼頃に到着。市内に移動後は、近郊列車に乗車(メルボルン泊)。
土曜日:オーバーランド号でアデレードへ(アデレード泊)。
日曜日:近郊列車で鉄道博物館へ。昼過ぎに空港へ移動してシドニー行の便に乗り、夜の便で羽田へ(機内泊)。

@サザンクロス駅にて

■2018.6.1
 羽田からの便は45分ほど遅れ、さらに沖止め+バス移動もあって定刻より1時間以上遅れてしまったが、元より乗り継ぎ時間に余裕があり、結局メルボルン行も40分ほど遅れたため、問題なく搭乗することができた(ただし、国際と国内ターミナル間はバスで移動してもかなり時間を要するため、乗り継ぎ時間が限られている場合は要注意である)。

@虹発見

 13時過ぎにメルボルン空港に到着し、予約決済してあるバスで市内へと向かった。ということで、時刻はまだ14時過ぎである。
 前回の旅行で買ってあるmykiカードでサザンクロス駅構内に入り、路線図を適当に見て今回はアップフィールドへ行くことにした。
 14時34分の列車に乗り、環状線をぐるっと遠回りしてアップフィールドへと向かった。徐々に乗客は減り、予想通りに何もないアップフィールドに到着した。

@とりあえず撮影

 適当に駅周辺を散策。半年前に訪問した別の路線の終着駅であるサウス・モラングでは延伸工事中であったが、こちらは駅の先は操車場であり、もうここで打ち止めのようである。
 帰りの料金が足りなくなってしまうので券売機で5ドル積み増しして、15時44分の列車で市内に戻り、ホテルに近いフィンダースストリートで下車した。ホテルに荷を置いてからは、トラムの無料区間を活用して大聖堂などを訪問し、スーパーでチキンなどを買ってホテルに戻った。

@散策

■2018.6.2
 7時頃にホテルを出て、無料トラムでサザンクロス駅まで移動した。なお出発は8時05分であるので、私のように預け入れ荷物がない人は、もっとゆっくりでも大丈夫である。
 オーバーランド号は、すでに2番線に入線していた。機関車を先頭に、[電源車+荷物][レッドプレミアム][ラウンジ(カフェ)][レッド][レッド][レッド]の6両だけである。

@機関車

 7時20分頃に「車内に入ることができます」というアナウンスがあり、車両の入口に行列が出来た。3両あるレッドクラス(普通車両)よりも1両しかないレッドプレミアムの方が、行列が長いくらいである(数少ないネットでの紹介記事でも「値段の差からするとプレミアムの方が断然お得」というようなものがあったが、実際に人気のようである)。
 ちなみに、定価はレッドが159ドルでプレミアムが259ドルである。100ドル(約8,500円)の差があるが、予約決済が早ければ早いほど安い値段となり、私は159ドルでプレミアムを手にしている。つまり、レッドの値段でプレミアムに乗ることができるのである。
 唯一の心配が、「窓との相性が悪い席がある」ということであった。心配しながら自席に向かうと、最高の状態ではないが、最悪(ほとんど壁)ではなかったので、これなら写真撮影ができそうである。

@椅子の上にあるのは折り畳み式の足置き

 荷物を網棚に置き、隣りにあるカフェカーの見学をしたりしても、まだ7時30分である(早く乗り過ぎてしまった)。しかしすでに車内は8割ほどの乗客で埋まっており、高齢者率も8割くらいである。
 暇を持て余していると、向かいのホームに夜行のXPT(シドニーからやってきた夜行列車)が入線してきたではないか。丁度よい時間潰しということで、車掌に断って再度ホームに出た。

@懐かしい

 プレミアムの座席配置は1列+2列であるが、通路がだだっ広く、1席自体の大きさは通常のレッドとさほど変わらないと思われる。違いは、前後の幅が離れているのと、なにより朝食・ランチ・ティータイムと3食付きである点が大きい。
 ぴったり定刻の8時05分、サザンクロスを出発した。

@ウェルカムドリンク(オレンジジュース)もあり

 出発してしばらくすると、メニューが配られた。朝食は2種類、ランチは3種類から選択できる。しばらくすると係員が来て、飲み物・朝食・ランチの希望を聞いてきた(これとは別に、ランチ前の飲み物なども別途聞きに来る)。飲み物はカプチーノ、朝食は暖かい方を選び、ランチについては、Trip Advisorの投稿で評価されていたカレーにしてみた。

@メニュー

 メルボルンの市街地を抜けると、列車はそこそこのスピードで快走し続けた。ジーロング方面に向かっているのだが、路盤は立派な複々線である。しかし、すれ違う列車は皆無である(貨物はもちろん、旅客もなし)。なお複々線といっても、その半分(複線)はリージョナル鉄道の分であろう。

@複線だけでももったいない

 大きなカップに並々と注がれたカプチーノが配膳され、それをすすっているうちに、朝食がやってきた。ぱっと見は普通だが、ベーコンなどは厚めのものがぐるぐる巻きになっており、かなりボリュームがあった。

@美味しく頂く

 出発してから1時間、やっと初めてリージョナル鉄道の車両とすれ違い、その直後にノース・ショア・ジーロングに到着した。ここでプレミアムにも数人が乗ってきて、満席となった。
 ノース・ショアというだけあって少しだけ海が見えたが、列車はジーロング方面へは向かわず、ここで路盤が分かれて内陸方面へと進んでいく。
 9時30分頃、今日最初のカンガルーの群れを発見。ここからは「いかにしてカンガルーを車内から撮影するか」が課題となるが、これまでの経験上そうそう簡単には行かない。

@牛なら余裕ですが…

 9時50分頃に若干スピードが弱まり、そこから先は単線となった。
 さて、車内誌にある時刻表によれば、次の停車はアララトである(11時09分着、11時15分発)。しかし列車は、11時13分に通過してしまった。乗降がない(予約がない)場合は、このような扱いになるようである。
 車内アナウンスにあったようにブドウ畑やワイナリーも見えたりしたが、すぐに景色は草原的なものに戻っていった。

@羊でも余裕ですが…

 次の停車駅であるストーウェルについても、停まらずにゆっくりと通過していった。
 12時が近づき、カレーが配膳された。今日は「バファローカレー」である。肉は若干固めであるが、確かに味は良い。しかし、固まり肉がゴロゴロ入っており、見た目の割にかなりのボリュームであった(別の人が頼んでいたサンドイッチは超特大サイズであり、あれにしなくてよかったと安心した)。

@バファローカレー

 単線であるためすれ違いの列車はないが、待避線などで待ち構えている列車も皆無である。旅客列車は先述した通り週に2往復しかないから仕方ないとして、せめて貨物くらいは、と思いかけた頃、やっと貨物列車を発見した。

@一応存在している模様

 12時49分にディンブーラに到着。アナウンスによると、ここで運転手が交代とのこと。
 それにしても、9時の朝食と12時のランチのおかげでお腹がいっぱいであり、15時半のティータイムまでどうやって空腹にさせるかが問題である。運動(探検に行く)ほどの大編成ではないし、…と考えていた13時少し前に、「デザートです」と配膳されてしまった。まだ、昼食が終わってなかったようである。
 甘いものは別腹、ということで、なんとか頂いた。

@暖かいスイーツです

 その後も順調に、ニルやボーダータウンを通過していった。本来は停車扱いであるが、それぞれ定刻より10分弱早く通過している。オーストラリアのこの季節は夕方17時台には暗くなるので、いっそのこと30分くらい早着してほしい気分である。
 原則、草原的な風景が続いているが、時折水分多めの景色になることがある。

@こんな感じに

 この辺りになって気になり始めたのが、パイプラインのような施設である。3年半前、インディアン・パシフィック号でパースに向かっている際にはやりパイプラインが気になり、後で調べてみたら水道のためのものであったが、今回の施設はそれに比べると細めである。オーバーランドに関する個人記事がたくさんあれば誰かが調べているかもしれないが、それは期待薄である。

@こんな施設

 15時半少し前、ついにティータイムがやってきた。せめてもの救いは、14時過ぎに州境を越えたため30分の時差ができ、時計を30分戻したことくらいであるが、その程度ではお腹は空かない。
 断ろうかと思ったが、何が配膳されるのか興味もある。今日のメニューは、いかにも欧米的な超絶甘いバタークリームの塊のようなケーキであった。コーヒーを啜りながら半分くらいは頑張ったが、残りはギブアップである。

@とにかく甘い

 久しぶりに街っぽい雰囲気となり、鉄橋で川を渡るとマレー・ブリッジであった。到着時間は15時37分。なお、先ほど鉄橋を渡り終わった付近でSLと客車群が係留されているのが見えた。遠くにあったためまともな撮影はできなかったが、なんとか記録用程度には写すことができた。

@ミニSLなど

 ここまで「草原的な風景」の連続であることは書いたが、マレー・ブリッジから先は少し高低差が大きくなり、路盤も左右に畝っていくようになった。列車の速度も落ち、峠というほどではないが、急に雰囲気が変わっていく。

@少し山っぽく

 山岳っぽくなったおかげか、本日2回目のカンガルーとのご対面である。撮影はできたが、かなり拡大しないと判別できない程度であり、これは採用不可である。
 16時24分にマウント・バーガーを通過。路盤は下ったり再度上ったりを繰り返している。山っぽい景色を眺めているうちに、ついに3度目の正直で、カンガルーを撮影することができた。ピンボケであるが、この程度はご了承願いたい。

@やっと撮れた(中央部分)

 16時46分にはマウント・ラフティを通過。その名からしてあとは下りかとおもったが、まだまだ上り続けるようである(上りと下りの連続)。驚いたのは、沿線にビデオ+三脚を置いて待ち構えていた撮り鉄さん(オーストラリア人?)がいたことである。
 その人がいた辺りから完全に下りが多くなり、17時00分に停車している貨物列車と行き違って、その2分後には駅で近郊列車を追い抜いた。どうやらアデレードは近いようである。
 17時15分頃には、左手に夕日が沈んでいった。もう少し海の近くを走ってくれれば、言うことなしであるが。

@これでも充分綺麗

 下り終えてからは市街地に入り、定刻より15分早着となる17時25分にパークランズ・ターミナルに到着した。わずか半年前に訪れた駅にまた来るとは、自分でも酔狂だと思う。
 向こう側のホームには、ダーウィン方面にいく「ザ・ガン」が係留されている。次はあれかな、とも思った。

@お疲れさま(右手に見切れているのはザ・ガン)

 市内への移動は、前回と同様に30分ほど歩いてトラムの駅(無料区間となる最後の駅)まで行き、そこからトラムで移動である。薄暗くなった公園の中を通り、待つ時間もなくやってきたトラムでアデレード駅近くにあるホテルに向かった。
 上記は計算内であったが、計算外であったのは今日が土曜日であったということである。ホテルに荷を置いてからスーパーに向かったところ、どこももう閉店後であった。「今日は朝昼もランチも食べ過ぎたし、何もなくても」と思いかけたが、やはりアルコール抜きは寂しい。
 そこで繁華街を歩いていくと、とあるバーでTAKE AWAYの文字を見つけたので、そこで無事に缶ビールを手にすることができた(しかもボトルショップと変わらない値段)。つまみは、贅沢言っていられないし探すのも面倒なので、KFCである。

■2018.6.2
 7時20分頃にチェックアウトして、道路向かいにある駅へと向かった。

@今日も晴れ

 まずは、移動のためのICカード(メトロカード)の購入である。今日は鉄道博物館(最寄駅はポート・アデレード)へ行く前に、まずは終点のアウター・ハーバーまで行くことにしているし、空港への路線バスもメトロカードを使用することになっている。
 券売機に向かい、あっさりと購入した(以前はカード代5ドルが必要であったが、今は無料)。最低限の5ドルではなく10ドル分買ったが、後述するアウター・ハーバーからの戻りは「2時間以内」であったため乗り継ぎ(無料)と判断され、空港へ行くバスも同様にポート・アデレードで乗車してから2時間以内であったため、結局2回分(3.98ドル)しか使用しなかった。

@簡単に買える

 案内に従って8番ホームに向かい、そこに停まっていた列車を撮影したが、ふと気が付くと行先が違うようである。ホームの先に進んでいくと、同じホームに2編成停まっており、アウター・ハーバー行は前の方に停車している編成であった。以前、英国でもこのような経験があるが、行先などを含めてよくよく注意しないと危険である。

@あちらが正解

 まばらの乗客だけで、定刻の7時42分に出発。これが8両編成の電車ならば「いかにも近郊列車」という感じであるが、2両編成のディーゼルカーというのが嬉しい。座席もロングシートではないため、景色も見やすいし、雰囲気も良い。
 住宅街を走り抜け、8時22分にアウター・ハーバーに到着した。降りたのは、まさかの私1人だけである。

@こんな駅

 せっかく来たので、散策である。やたらたくさんの車があるが、似たような車種が多い+ナンバーがない、ということで、これらは輸入品である。それ以外に目に入るのは、山のような野生のインコくらいである(なぜか1匹のフクロウも発見)。
 8時58分の列車で、ポート・アデレードへと向かった。最初は乗客1人であったが、途中からちらほらと乗ってきた。

@先頭の座席から前を見渡せる

 同駅到着後、鉄道博物館の開館時間(10時)まで時間があったので、海近くの施設(市場というよりは蚤の市のようなもの)を適当に見たりして時間を潰し、開館直後に博物館に向かった。料金は12ドルである。

@展示の一例

 予想していたよりも展示車両が多く、しかも中に入ることができる車両も多い。博物館だけあってそれ以外の展示(備品や歴史、模型など)もあるが、車両をすべて確認するだけで小一時間弱もかかってしまった(2つある大きな建物以外に、屋外にも車両が展示されている)。
 気になったのが、オーバーランド号の寝台である。以前は所要時間が18時間であったということであるから、寝台もアリであろう。

@こんな車両

 展示物以外の目玉としては、敷地内を一周するミニ列車がある。子ども向けの施設であり、正直「乗っても乗らなくても」という感じであるが、乗り場に行ってみると、なんと機関車が(小さいながらも)本物のSLではないか。ということで、30分に1回程度出発するということであったので、11時の列車に乗車した

@蒸気排出中

 途中での停車もあり、また2週回るのがパターンのようである。
 という感じで、展示やミニ列車を堪能し終えてから駅に向かった。
 後は市内に戻って空き時間で観光するだけであるが、アデレード駅まで戻らず、その1つ手前のボウデンで下車した。というのも、トラムの終点(無料区間)がこの駅の近くにあり、旅の最後の鐡ネタとして乗るためである。

@締めはこれで

 市内に戻ってからは徒歩観光を済ませ、路線バスで空港へ向かった。

 

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