寝台を求めて豪州まで

■はじめに
 今回は、2年連続3回目のオーストラリアである。勤労感謝の日と有休を使用した4連休であるが、東南アジアにはこれといって行きたい場所がなく、欧米は遠すぎるため、あれこれ検討した結果こうなった次第である。
 最終的な旅程は、「木曜夕刻出発、日曜朝到着」というもので、見た目上は余裕のあるものとなったが、ホテルなし(機内泊と車中泊のみ)という、実際にはなかなかの強行軍となった。シドニーからメルボルンまでの鉄道を夜行ではなく昼行にすればホテルに2泊できたが、やはり寝台列車に乗りたかったのである(日本ではもう経験できないので)。

【旅程】
初日:夕方遅く、成田からシドニー行に搭乗(機内泊)。
2日目:早朝にシドニー到着。郊外にあるNSW鉄道博物館を訪問し、その後は普通の観光をしてからXPTの寝台車両に乗車(車中泊)。
3日目:早朝にメルボルン到着。トラム博物館とニューポートにある鉄道博物館(いずれも開館日が限定されている)に訪問。夜、空港へ移動し、日付が変わってすぐの成田行に搭乗(機内泊)。
4日目:朝、成田に到着。


@メルボルン市内にて

■2017.11.24
 シドニーには、ほぼ定刻の午前7時前に到着した。シドニー空港へは以前にも2回ほど来たことがあるが、その際はパースやケアンズからの乗り継ぎであったので、空港に連絡する鉄道を使うのは今回が初めてである。
 ということで、事前に調べていた通り、改札近くの窓口でOPALカードを購入した(カード代が無料なのが嬉しい)。今日だけで30ドル弱使用するので30ドルを入れてもらおうとしたところ、20ドルの次は35ドルだというので、後者の金額をクレジットカードで決裁した。

@これで移動

 これからキャンベルタウン乗り換えでピクトンまで行く予定であり時刻はネットで調べてあるが、目安にしていた列車までまだ30分以上もある。ということで、同じ方面に行く列車がやってきたのでそれに飛び乗った。
 途中で一度乗り換え、8時13分にキャンベルタウンに到着した。掲示してあった時刻表を見ると、ここで40分も待ち時間があり、結局予定していた列車に乗り換えることになってしまった。
 することもなくボケっと待っていると、メルボルン行の列車が来るというアナウンスがあるではないか。電光掲示を見てみると、XPTの昼行便である。これは嬉しい偶然である。

@次回はこれに乗りたい

 編成は夜行便と同じで、1両しかない寝台車はコンパートメントの座席になっていた。
 それを見送り、折り返し8時53分に出発する列車が入線してきたのでそれに乗り込んだ。ローカル感たっぷりの2両編成のディーゼルカーである。

@本来の旅程に戻る

 定刻に出発し、次の駅を過ぎると電化設備もなくなった。先ほどまで乗っていた列車では自動アナウンスであったが、こちらはおじさんの地声である。
 辺りの風景も牧場や草原になり、とてつもない田舎である。「こんな遠くに鉄道博物館を造らなくてもいいのに」という思いもあり、少しく恨めしい。

@のんびり

 9時21分にピクトンに到着し、駅前にいたバスに乗り込んだ。ネットで調べた際に「OPALは使えない」と書いてあったので値段を尋ねると、初老(シニア人材?)の運転士は「OPALは持ってる?」と逆に聞いてくる。イエスと言ってカードを見せると、なんと無料になってしまった。よくわからないが、そういうことのようである。

@なぜか無料

 最初は私が降りるべきバス停の名前で運転手に尋ねたのだが、よくわからないという。地図を見せて「鉄道博物館の近く」と言うと、すぐに理解してくれた。どうやら、バス停の名前で管理しているのではなく、「この場所」という感覚で常連さんたちを乗せたり降ろしたりしているようである。
 そんな感じ(いかにも常連)な4人くらいの老人と2人くらいの若者と1人の東洋人(私)を乗せて、バスは長閑な街を走り続け、10分強で目的のバス停に着いた。運転手にお礼を言って、下車。

@このバスです

 博物館の開館は10時であるため、しばし小さな集落内を散策した。博物館は廃線となった路線とその駅の近くにあり、線路もまだ残されたままである。どうやらイベントで列車を走らせることもあるようで、線路の表面はうっすらと光る部分(走っている証拠)を見ることができた。

@たまに使われている模様

 開館時間となり、受付で19ドル(意外に高い)を支払って館内に入った。まずは屋内展示を見て、その後は外にある大量の車両展示である。SLから電気機関車、客車や電車など、様々である。

@展示の例

 意外に高いと書いたが、それだけ展示数は多い。劇場仕立ての見世物(自動上演)もあったり、手も込んでいる。
 今日は平日であるが、子連れの家族などもちらほらと増え始めてきた。とてつもない辺鄙な場所にあるが、それなりに賑わっているようである。

@展示の例その2

 1時間半ほど滞在し、帰ることにした。先ほどの路線バスを待ってもいいのだが、本数が極端に少ない。ということで、タフムア駅まで歩いて行くことにした。こういう場合、いつもはグーグルマップを印刷しておくが、今日は急に思い立ったため地図がない。ということで、集落内にあった地図をデジカメに撮ってそれを頼りに歩き始めた(単純な地図なので、これで充分である)。
 50分ほど歩き、タフムアに到着した。予想より少し早く着いたが、予想外だったのは店舗などがまったくなかった点である(ジュースくらい買いたかった)。
 ホームに入って驚いたのは、博物館にも展示されていた昔の行先・時刻表示板が稼働していたという点である。

@びっくり

 博物館に最も近い駅だからであろうか、それにしても、手動なので人がいないと動かせないはずである。
 よく見てみると、この駅のオフィスアワーは朝の5時45分から12時45分までであるという(現在時刻は12時30分)、駅員が現れてごみの片づけを始め、それから入口の鍵を閉め始め、さらには例の手動表示板にもカバーが掛けられてしまった。それにしても、日本でも朝や夕方(通勤時間帯)だけ窓口が開いている駅があるが、朝5時から開いているのに昼過ぎに閉まってしまうというのは、極端である(7時間労働と考えれば、駅員1人だけで対応できるのだろうが)。
 12時39分発の列車に乗り、シドニー市内に戻った。

@ローカル気動車

 欧米の鉄道は改札がなく、車内でのチェックも稀であるが、市内に戻る列車内で1回、さらにキャンベルタウンで乗り換えた電車内で2回もあった。きちんと料金を払っている身としては、どんどんやってもらいたい。
 市内に戻ってからは、普通の観光(オペラハウスの外観を見たり)である。スーパーに行き、夜のツマミと酒も買い揃えた。
 セントラル駅に行き、窓口でバウチャーを切符に変えてもらい、準備完了である(「それ(バウチャー)でも乗れる」と言われたが、せっかくなので切符を発券してもらった)。

@準備完了

 今日の出発時刻は20時32分であるため、ベンチでの一献を開始である(オーストラリアは公共の場所での飲酒は禁じられているので、開けっぴろげにビールなどはNGである。ツマミを食べながら、ペットボトルに入れ替えた白ワインをちびちび飲み続けた)。
 19時50分頃に、少し離れたホームにメルボルンからやってきた昼行便が到着した。時間がほとんどないため、あれが折り返すのではなく、別編成があるのだろう(もう少し走行時間が短ければ、効率的な運用ができるのに、と思う)。
 20時05分頃、こちらのホームに列車が入線してきた。

@いざ乗車

 編成は、前から[寝台車](1両)[ファーストクラス](2両・うち1両は半分が売店)[セカンドクラス](4両・最後の半分は荷物車)であり、その前後に機関車がある。早速、宛がわれていたA号車に入った。旅行会社には下段を希望して指定してもらっているが、すでに上段の客が先着していた。2人部屋であり、2つの部屋の中央に共通のトイレ・シャワーがある構造である。私の部屋は進行方向側であるので、都合が良い。
 係員(若くてきれいな女性)が来て、切符の確認・翌朝の朝食(無料)の内容について聞いてきた。ちょっと早口でオージー訛りであったがなんとか聞き取り、コーヒーとプレーントーストを希望した。

@こういう部屋

 定刻から2分遅れの20時34分、列車は出発した。この列車に夕食は付いていないが、しばらくしてから無料のリフレッシュメント(ポップコーン、クッキー、ジュース、飴など)が配られた。バスタオルなどのリネンや歯ブラシやシャンプーや耳栓などのアメニティもあり、なかなかの充実度合である。

@アメニティ等

 スーパーで買ったチキンと白ワインで酔っぱらい、男性の係員が通り掛かったので椅子の状態からベッドに変えてもらい、21時過ぎに寝入った。

■2017.11.25
 夜行の割にはスピードが速いため揺れによって何度か目を覚まし、5時過ぎに起床した。まだ暗いため、シャワーを浴びてしまう。今回の旅ではホテルを利用しないため、このシャワーが非常に有難い存在である。
 5時半頃から明るくなり始め、6時前には日が昇り切った。

@まだ田舎

 6時03分、セイモアに到着した。同駅出発後もぼんやりと外を眺めていたが、意外と早い6時半頃に朝食が運ばれてきた。非常にシンプルな内容であるが、温かいものがいただけるのは嬉しい。スペースの差やサービスの内容を考えると、座席よりも断然寝台をお勧めしたい。

@無料朝食

 ところでアメニティセットの内容についてであるが、1つだけ意味不明のものが入っていた(巻き尺のような形をしている)。どうせ使わないのでそのまま捨てて行こうと思ったのだが、気になったので蓋を開けてあれこれいじっているうちに、それがコップだということに気づいたのである。

@まさかの展開

 7時過ぎ、係員が来てベッドを椅子に戻していった。あと20分もすれば着くのだからそのままでもいいのに、と思うが、出来うる作業は早めにやっておくのだろう(ごみの回収にも来た)。
 蜃気楼のようにメルボルンの高層ビル群が見え始め、定刻ぴったりの7時25分にメルボルン・サザンクロスに到着した。
 さて、これからは博物館巡りである。その移動手段として、まずはメルボルン市内の交通カードであるMykiの購入である。

@券売機で無事購入

 まだ朝早いため駅構内のWiFiでネットを利用し、さらに駅近くをぶらぶら歩いたりトラムの無料ゾーンを乗車したりして、11時に開館するトラム博物館に行くため10時過ぎに近郊列車に乗り込んだ。
 約15分ほどで、ホーソーンに到着。トラム博物館は昔のトラムの車庫を再利用しているため、トラムで行った方が近くまで行けるのであるが、こちらの方が簡単なのである(トラムは、帰りに利用する予定)。

@ここから歩いて15分くらい

 暑いくらいの日差しの中を歩き続け、開館とほぼ同時にトラム博物館に入った。この施設は「第2・第4土曜日の11時から17時まで」しか開いていないという、訪問するためのハードルがかなり高いのであるが、今日は偶然にもその日に該当しているのである。原則無料であるが、ゴールドコインの寄付(金色の硬貨=1ドルか2ドル)を箱に入れる必要がある。

@外観

 コインを入れて中に入ると、ボランティアである初老の男性が一通り説明をしてくれた。車両だけでも30両くらいあり、無料にしてはかなりの充実度合である。しばらく歩き回っているうちに人も増えていったが、中国人観光客なども訪れているようであった。

@車両の一例

 1時間ほど滞在し、市内へ戻るべくトラムを待つ。10分も待たないうちにやってきたので、それに乗り込んだ(写真をよく見ると、運転手のお姉さんはVサインをしてくれている)。

@激写

 フリンダース・ストリートで下車し、駅前にある教会を見学したりスーパーで水を買ったりファストフード店で簡単な昼食を取ってから、近郊列車に乗り込んだ。次に向かうのは、ニューポートにある鉄道博物館である。
 途中のニューポートで乗り換えて、ノース・ウィリアムスタウンで下車して歩くこと数分で辿り着いた。こちらの博物館も開いているのは土曜の12時から17時までだけであり、なかなかのハードルである(今日は開館日)。
 ボランティアによる運営であるのはトラム博物館と同じであるが、こちらは8ドルの入場料が必要である。現金で支払うと、渡されたのは硬券のような入場券であった。

@雰囲気あり

 早速、敷地内に入ってみる。雨ざらしなので塗装などは色あせている車両が多いが、数多のSLや機関車や客車が展示されており、いくつかの展示車両は中にも入れるようになっている。

@たくさんあり

 それ以外にも、時間ごとに行われるイベント(模型を走らせたり)もあり、子ども連れも結構楽しんでいるようであった。
 SLをぼんやり見ていると、ボランティアの老人がやってきてあれこれ説明してくれた。私だけでなく、家族連れや団体が入って来る度に、あれこれ説明しているようである。

@車両以外の展示もあり(ボランティア説明中)

 小一時間ほど滞在し、往路と逆パターンで市内に戻った。
 さて、時刻はまだ16時前である(今日は夜中の便に乗る予定)。Mykiは一定額以上を使うと一日券として機能し、しかも週末はそれがさらに安くなってたったの6ドルである。つまり、これからあと何回乗っても追加料金はなしであるため、適当な路線に乗ることにした。
 まずは、海を目指してサンドリンガムへ行ってみることにした。フリンダース・ストリートから列車に乗り込み、30分ほどで終点に到着。適当に歩いて5分ほどで海に辿り着いた。

@海

 市内へ戻り、続いては内陸方面である。アップフィールド方面に行こうとしたが本数が少なかったため、20分に1本あるサウス・モラング方面に行くことにした。
 45分ほど揺られて終着駅に着くと、延伸工事中であった。数年すれば、ここは途中駅になるようである。

@工事中

 みたび市内に戻り、続いてはトラムに乗ってベイサイドへ向かった(Mykiはトラムでも使用できるし、そもそも市内の特定区間はいつでも無料である)。
 レトロな車両に乗ったりして市内を適当に観光し、日が暮れてからは事前決済してある空港バスで空港に向かい、成田へと飛び立った。

@レトロなトラム

 

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